教育を考える 2019.9.14

「8割ほめて2割叱るのがいい」のは男の子女の子どっち!? 男女で違う、効果的な“ほめ方”&“叱り方”

編集部
「8割ほめて2割叱るのがいい」のは男の子女の子どっち!? 男女で違う、効果的な“ほめ方”&“叱り方”

みなさんはお子さんを叱るとき、工夫していることや心がけていることはありますか? 「できるだけガミガミ言わないように」「優しい口調で」「理由をきちんと説明する」など、ご家庭によってさまざまあるでしょう。

じつは、子どもを叱るとき、男の子と女の子では効果的な方法が違いますそして、そのテクニックを活用すると、驚くほどすんなり子どもの耳に届くらしいのです。はたしてそれはどのような方法なのでしょうか。

男の子と女の子、叱り方は変えるべき?

「一度『宿題やりなさい』と注意したら、娘はすぐにとりかかるのに、息子は何度言ってもやろうとしない」
「息子は叱った直後は落ち込むけどすぐにケロっとしている。逆に娘は、何日も引きずっているようだ」
男女両方のお子さんをお持ちの親御さんは、これを 子どもの個性としてとらえていませんか?

たしかに、すべての子どもに対して、確実に効果を発揮する叱り方はありません。しかし、“個々の性格だから” と諦める前に、男女の性差に着目した効果的な声かけを試してみると、これまでの叱り方はなぜ効き目がなかったのか実感できるはずです。

でもその前に、まずは男女共通の『叱るときの注意点』を頭に入れておきましょう。それをふまえたで、“男の子向け”“女の子向け” の叱り方を試してみましょうね。

NPO法人子育て学協会会長の山本直美さんは、まず、男女どちらであっても絶対にNGなのは、『長時間、感情的に怒ることだといいます。親がカッとなって感情をあらわにして長時間怒ると、子どもはなぜ怒られているのかを理解する前に恐怖心が出てしまいます。すると、怒られた内容よりも、「怖かった」「不安だった」という気持ちだけが残ってしまうのです。

『長時間、感情的に怒らないこと』を前提として、男女それぞれの特徴をうまく利用した声かけを実践していきましょう。

男女で違う、効果的な“ほめ方”&“叱り方”2

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男の子の叱り方のポイント

山本さんのもとには、「男の子にどうやって叱ったらいいかわからない」という母親からの相談が多く届くそうです。母親と息子は異性なので理解し合うのが難しいという側面もありますが、根本的に女の子とはものの見方や考え方がまるで異なります。

男の子の叱り方1:遠回しはNG。端的かつ具体的に!

まず第一に、男の子には回りくどい言い方は逆効果であると肝に銘じましょう。たとえば片付けをしてほしいときに、「お片付けできるかなー?」と遠回しに伝えても意味がないといいます。そして、何かに夢中になっているときに言葉を投げかけても、ほとんどの場合スルーされてしまいます。

私立鴎友学園名誉校長の吉野明先生は、「男子校と女子校の朝礼で、先生の注意の仕方を比べるとわかりやすい」といいます。男子校では、「山田、列に戻れ!」「佐々木、座れ!」など、名前と行動がワンセットになっているのに対し、女子校では、「ちゃんとして!」「はい、みんな集中!」といった声かけで事足りるというのです。

男の子に注意するときは、何をすればいいか、何がいけないのかを具体的に伝える必要があります。また山本さんも、「女の子が共感や協調を『言葉』で理解するのに対し、男の子は『行動』で理解します。男の子には、叱るときも褒めるときも、声のトーンや表情などを少しオーバーに表現したほうがわかりやすくて良いでしょう」と述べています。

男の子の叱り方2:親はブレずに一貫した態度を

子育て心理の専門家・佐藤めぐみさんによると、男の子には「しつこく粘る」「頑なに拒絶する」といったコミュニケーション上の押しの強さが見られることが多く、その押しの強さに対して、親は毅然とした姿勢で接する必要があるそう。

押しが強い子は、親の指示が一貫していないと「昨日はOKで今日はダメなんてずるい!」と、そのスキをつく傾向があります。一貫性を失わないように気をつけましょう。

男女で違う、効果的な“ほめ方”&“叱り方”3

男の子の叱り方3:子どものプライドを尊重しよう

また、男の子ならではのプライドを理解し、叱るときには傷つけない言葉で、ほめるときにはうまく持ち上げることを意識すると効果的です。これについては山本さんも、「男の子は3歳くらいから、相手にどう見られているのかをとても気にし始めます。人前で恥をかかせないようにしましょうとアドバイスしています。

たとえば、スーパーで走り回る男の子を注意するとき、まずは人目につかない場所に連れていくようにしましょう。そして、最初の一言目で「ここって走っていいのな?」など、子ども自身が自分の行動について考えられる言葉がけを。

同じ歳の女の子ほど客観的に物事を見られない男の子は、「ここは走ってもいいところ?」と聞くことで、「あ、ここは鬼ごっこする場所じゃなかったんだ」と改めて考えます。ポイントは、真剣な表情で目線を合わせ、声のトーンも落として、こちらの感情が言葉以外でも伝わるようにすることです。

男の子の叱り方4:勉強は『8割叱り、2割ほめる』

勉強面でも、男の子と女の子で声かけの内容を変えると、やる気や結果に結びつきます。

進学塾VAMOS代表で『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』の著者である富永雄輔氏は、「男子は放っておくと好きな科目しか勉強しない。どこでつまづいているのか、何を注意すべきかなど、コツコツ言って聞かせて取り組ませる必要がある」と指摘します。

そして、男子はできなかった問題も怒られたことも忘れてしまう「スルー名人」。苦手科目の克服は、粘り強く言い聞かせる必要があるのです。基本は8割叱り、2割ほめる。「何度言っても聞かない」と諦めないで、「何度でも繰り返してこそ結果に結びつく」と根気強く付き合ってあげましょう。

男女で違う、効果的な“ほめ方”&“叱り方”4

女の子の叱り方のポイント

一方、女の子ではどうでしょう。男の子に比べて言語理解や社会性の発達が早く、コミュニケーションを大切にする女の子には、「あなたのことが大切だから心配してしまう」という気持ちが伝わるように叱るのがコツです。

女の子の叱り方1:コミュニケーションの一環として叱る

明治大学教授で教育カウンセラーの諸富祥彦先生によると、女の子は叱りつけるのではなく、コミュニケーションの一環として叱るようにするといいそう。たとえば片付けをしなかったとき、ただ「片付けなさい!」と叱るのはNGです。

前出の山本さんによると、物事を客観的に見られる女の子は、できていないことをちゃんと自分でわかっているのだといいます。ですから、できれば優しい口調で○○ちゃんがやってくれたら嬉しいなと伝えたり、今日はちょっと疲れているのかな?といった言葉で気持ちを楽にしてあげたりすると効果的です。

女の子の叱り方2:人と比べない

また女の子の場合、本能的に人と比較してしまうのも特徴のひとつ。女の子はあらゆる場面で「正しいか、正しくないか」「できているか、できていないか」をすごく意識する傾向があるそう。だからこそ、叱るときも人と比較しないことが重要なポイントです。

自分の状況を自分でもよくわかっているからこそ、「あの子はちゃんとできるのに」といった比較をされたら、「そんなことわかってる!」と反発したくなるのも当然です。女の子には わかっている前提で言葉がけをするように心がけましょう。

男女で違う、効果的な“ほめ方”&“叱り方”5

女の子の叱り方3:親の態度・言葉に細心の注意を

相手の表情をよく見ている女の子は、親の何気ない言葉や態度で自信が揺らいでしまったり、言葉の吸収率の高さゆえに、親が使う強い言葉を真似したりするので、細かいところまで気を配る必要があります。

注意されているときはじっと黙って聞いていても、友だちの前で「いいかげんにして!」などの強い言葉をまねして使うなど、思わぬところでトラブルを引き起こす可能性があるので気をつけましょう。

また吉野先生によると、親の期待に応えたい女の子に「あなたはどうしてそうなの」「あのときも同じことをしたじゃない」と、過去にまでさかのぼって徹底的に追いつめるような叱り方をすると、その行為だけでなく、人格そのものを否定されていると感じてしまうそう。その結果、反省するよりも「自分は期待に応えられていないのだ」と、自己肯定感を下げてしまいかねないのです。

女の子の場合、他者から認められることで個性を発揮して自己肯定感を高めることができます。すると、叱られていることも素直に受け止められるようになるのです。まずは、お子さん自身への愛情や信頼感をきちんと伝えることが大切ですよ。

女の子の叱り方4:勉強は『8割ほめて、2割叱る』

前出の富永氏は、「女子は苦手意識を持つと自己評価が下がり、小さくまとまってしまう。だからまず、得意な部分を褒めて自信をつけさせる。できなかった部分は『今回は6割正解だったね』など、一言だけ客観的な事実を示すと受け入れやすい」と述べています。

また女の子は言語能力が高い反面、数学的な因果関係などを把握する空間認識能力がやや弱い子が多く、理数系を苦手としがちだといいます。ただし同学年の男子に比べて早熟なぶん、意外とプライドが高く、注意すると心を閉ざしてしまうことも。

ですので、学習面における女の子の叱り方のポイントは8割ほめて、2割叱るが正解です。苦手克服にこだわりすぎず、まずはできるところを褒めて自信をつけさせてあげましょう。

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男の子でも女の子でも、親からの愛情を感じられる言葉はきちんと伝わっています。大事なのは、感情に任せず冷静に、そして手短に叱ること。その上で、男の子・女の子それぞれに適した方法を試してみましょう。叱り方を少し工夫することで、親のストレスも軽減できるはずです。

(参考)
ウーマンエキサイト|男の子と女の子でこんなに違う!効果的な叱り方
日経DUAL|男の子と女の子で叱り方が違うって本当!?
プレジデントオンライン|なぜ女子は人前で叱ると根に持つのか
SHINGA FARM|男の子と女の子はこうも違う!違いを知ればママのイライラが減る!?
BUSINESS INSIDER JAPAN|女子は8割褒めて男子は8割叱る「性差」に着目した勉強法
プレジデントオンライン|男の子の叱り方、女の子の叱り方
日経DUAL|親と互角に口ゲンカも 「女の子」の褒め方・叱り方