あたまを使う/教育を考える 2020.6.22

「勉強しない子」が「勉強する子」に変わる、家庭での仕組みづくり

編集部
「勉強しない子」が「勉強する子」に変わる、家庭での仕組みづくり

コロナウィルス感染拡大防止のための休校措置にともない、お子さまの学習習慣をあらためて見直したご家庭も多いのではないでしょうか。

学習面でのさまざまな問題点が浮き彫りになったり、生活習慣ががらりと変わったことで子どもの学習への意欲が低下したりと、これまで気づかなかったことに気づかされるきっかけにもなったはず。

今回は、「勉強しない子」が「勉強する子」に変わる家庭での仕組みづくりについてご紹介します。

長い? 短い? 小学生の勉強時間

そもそも、一般的に子どもたちはどれくらい勉強しているものなのでしょうか。何を基準にして、わが子のベストな勉強時間の長さを決めればいいのでしょうか。

小学生の家庭学習の目安として、よく耳にするのが「学年×10分ですね。2年生なら「20分」、4年生なら「40分」。しかしこれでは、宿題をするだけで終わってしまいそうです。

ベネッセ教育総合研究所が調査した「小学生の勉強時間」の平均は次のとおり。

1年生 56分
2年生 56分
3年生 66分
4年生 71分
5年生 76分
6年生 76分

全学年としての平均は、宿題に費やす時間(30~40分程度)を含めて67分という結果に。ただし、習い事の有無など各家庭の事情にも大きく左右されるため、一概に「○年生なら○分勉強するべき」とは言いきれません。

しかしながら、学年が上がれば上がるほど、勉強を習慣づけさせるのは困難になっていきます。そうであるならば、できるだけ早い時期から家庭学習を習慣づけさせる必要があるでしょう。

勉強しない子どもに勉強をさせるには02

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勉強する子と勉強しない子、その差はどこから?

これまでに多くの親子と関わってきた松尾英明先生(千葉大学教育学部附属小学校)は、親はひとことも『勉強しなさい』なんて言っていないのに、きちんと勉強する子どもは一定数いると断言します。ここでは、「いくら言っても勉強しない子」と「何も言わなくても勉強する子」の違いについて考えていきましょう。

■子ども自身が勉強の必要性を感じているか?

「なんのために勉強するのか」を理解せずに、ただ「先生やお母さんに怒られるから」と、しぶしぶ机に向かっている子は意外とたくさんいます。ベネッセ教育総合研究所が2014年に実施した「小・中学生の学びに関する実態調査」では、小学生の10.1%が「なんのために勉強しているのかわからない」と答えたそう。

みなさんも、「これって意味あるのかな?」「なんでこんなことやらないといけないの?」と思っていることを実行するのは、かなりの苦痛をともなうはずです。それは子どもだって同じ。

一方で、「自分から勉強する子」は、勉強する意味を明確に理解しているケースが多いといいます。ベネッセによる2011年の調査の結果、親と将来や進路について話をする」と答えた子どもは、比較的勉強時間が長いという傾向が見られたそうです。特に小学4年生以降になるとその差は歴然で、「親と将来や進路の話をすることがない」子に比べると、20分~30分もの差が生まれています。

■子どもに「勉強しなさい!」と言っている?

子どもが親に「勉強しなさい!」と言われるとつい反発したくなるのは、ある心理的な要因が考えられます。社会心理学を専門とする深田博己教授によると、「個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される、自由回復を志向した動機的状態」、いわゆる心理的リアクタンスが機能しているとのこと。

人は、「〇〇しろ」「××するな」と言われると、「自由を侵害された」「行動を制限された」という気持ちになるため、つい反対の行動をとりたくなるのだそう。パートナーから「早く△△しておいて!」などと言われて、「いま△△しようと思っていたのに急にやりたくなくなった」という経験はありませんか? 同じように、「勉強しなさい!」という親の声かけは、逆に子どもから勉強への意欲を奪ってしまうのです。

また、ベネッセの調査では、「勉強しなさい」と声かけをしてもしなくても、実際の勉強時間の長さはほとんど変わらないという結果が出ています。さらに驚くべきことに、中学3年生にもなると、「勉強しなさい」と声かけされない子のほうが、約25分も長く勉強していることがわかっているのです。

勉強しない子どもに勉強をさせるには03

いますぐ実践! 勉強しない子が変わる仕組みづくり

最後に、お子さんが「勉強する子」へと変わるために親がサポートできることをいくつかご紹介します。

■机に向かっていればOKとする

○机に向かっていれば勉強していなくてもOK

小学校教諭、塾講師として長年教育現場に携わってきた須貝誠先生は、たった30分の家庭学習でさえ継続できない場合、勉強でなくても、一定時間机で好きなことをさせておけばいいと述べています。これで「机に向かう習慣」が身につくそうです。

○わが子のペースで少しずつ時間を伸ばす

机に向かうことに慣れ、しだいに数分からでも勉強するようになれば、今日は10分、明日は15分……と少しずつ時間を伸ばしていくといいでしょう。同様に、今日は1ページ、明日は2ページ、とページ数などで区切ってみるのもいいですね。

○時間にはこだわらない

その際に大事なのは、親は子どもの様子をよく見て、臨機応変に対応すること。「3年生だから30分は勉強しなきゃ」「同じ学年の子は30分以上勉強してるんだから」などと、数字にばかりとらわれていると、わが子に適した学習時間を見極められなくなります。

取り組んでいるドリルが難しくて手が止まっているようなら、少し簡単なものに変える、量を減らす、基本問題だけをやらせて応用問題は後回しにさせる、などうまく調整してあげることで、勉強に対するモチベーションを保つことができるでしょう。

■子どもが集中できる環境を用意する

○机に向かったときに目に入るものをチェック

集中力がなく、すぐに気が散ってしまう場合は、机まわりの環境を見直しましょう。収納カウンセラーの飯田久恵先生によると、「子どもは気が散りやすく、目に入ったものに気をとられると、なかなかひとつのことに集中できない」とのこと。子どもが目の前の勉強だけに集中できる環境を用意してあげる必要があるのです。

○「好きなもの」をあえて視界に入れない

ゲームや漫画などは目に入る場所に置かない、デスクマットに勉強とは関係ないものを挟まない、などを意識するのはもちろん、勉強に必要なものがすぐに取り出せるように整理整頓を心がけましょう。片づけができていないと、物を探す時間の無駄が生まれて、勉強への集中力が途切れる原因にも。机まわりの環境を整えることは、勉強の習慣化につながります。

■子どもの「学び」を後押しする

○幼少期の熱中体験を大切に

親との関わり方も子どもの学習意欲に大きな影響を及ぼします。東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授いわく、東大生の多くは、子ども時代に「何かに熱中する体験」をしているそう。しかし、子どもが何かに熱中しているそばで親がテレビやスマートフォンを眺めていては、せっかくの熱中体験が活かされません。

○バーチャルとリアルをつなぐ

大切なのは、子どもが興味をもったことを親も一緒に楽しんだり、もっと興味を追求できるように環境を整えてあげたりすること。実際に電車を見に行く、サッカーの試合を観戦する、博物館や科学館に連れていくなど、「バーチャルとリアルをつなぐ作業を一生懸命やった家庭の子は、ぐんぐん伸びていきます」と瀧教授も述べています。

「勉強しなさい!」といくら言っても効果がないと諦めてしまった保護者の方もいるかもしれません。しかし、本来子どもは好奇心が旺盛なものです。わが子の興味の対象はなんなのか、それを見つけてうまく引き出し、学習意欲を刺激してあげることで、その他の勉強へのモチベーションにもつながっていくでしょう。

***
本文で述べたように、将来のイメージを具体的に思い描ける子ほど、自発的に勉強する傾向がみられることがわかっています。ぜひお子さんの将来や進路について、親子で話してみませんか? 夢や目標があれば、勉強への意欲がぐんと上がっていくはずです。

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|小学生みんなの勉強時間はどのくらい?
STUDYHACKERこどもまなび☆ラボ|子供が勉強しないときの対策。イライラはNG、親子で勉強計画を立てよう!
ベネッセ教育総合研究所|小中学生の学びに関する実態調査 報告書[2014]
STUDYHACKERこどもまなび☆ラボ|「勉強しなさい」といい続けたら将来どうなる!? 子どもの才能を摘まないためにーー
ベネッセ教育情報サイト|「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方
広島大学学術情報リポジトリ|心理的リアクタンス理論(1)
STUDYHACKERこどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果! 統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと
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