子どもが「勉強のやる気」を出してくれなくて困っている……。こんな悩みを抱えている親御さんも多いのではないでしょうか?
こちらが「勉強しなさい!」と言わないと机に向かってくれない、すぐに集中力が切れて勉強から離れてしまう、など。できることならば、親が何も言わずとも積極的に勉強してくれる子どもになってほしいですよね。
そこで今回は、子どもの勉強のやる気を上手に引き出す方法を、ステップごとに詳しく紹介していきます。
【子供の勉強のやる気を引き出す方法1】子供の興味関心に寄り添う
皆さんのなかには、「次のテストで90点以上とったら○○を買ってあげる」「毎日1時間以上勉強したら○○に連れていってあげる」など、子どもの勉強のやる気を “ご褒美” で引き出そうとしたことのある方もいるはず。たしかに、ご褒美は作戦のひとつと言えるかもしれませんね。しかし実際には、勉強のやる気はそう長続きしなかったのではないでしょうか。
じつは、やる気を生み出す要因にはふたつの動機づけがあります。ひとつは「外発的動機づけ」。先述のご褒美に代表されるように、外部からの刺激によってやる気が誘因されます。短期的な効果は期待できますが、下手をすると “ご褒美のために取り組む” という状態に陥りやすいのが特徴。つまり、ご褒美が物足りなくなった途端にやる気が減退してしまうもろさがあります。
もうひとつは「内発的動機づけ」。自分の中にある興味関心や意欲がそのままやる気を生み出しているパターンです。ひらたく言えば、「楽しいからやる」「好きだからやる」といった状態ですね。そして皆さんの想像のとおり、やる気を長期的に持続させるには、この「内発的動機づけ」が重要になってきます。つまり、「勉強っておもしろい!」と子ども自身が感じてくれるようにしないといけません。
開成中学校・高等学校の校長である柳沢幸雄先生は、「子どもの興味関心に目を向け、その延長線上で勉強につながりそうな経験をさせてあげる」ことをすすめています。
幼い男の子なら、電車好きの子どもも多いでしょう。だとしたら、ただ散歩中に電車を眺めるだけではなく、路線図を持って一緒に電車に乗ってあげるのです。すると、一つひとつの駅に到着するたび、子どもは駅名標に書かれている漢字とひらがなを目にすることになり、自然にそれらを覚えていくでしょう。当の子どもにとっては勉強している意識はまったくないでしょうけれど、内容としては勉強といってもいいものです。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの話をしっかり聞くと「あとが楽」。勉強に必要な集中力の育て方)
柳沢先生がこう述べているように、ここで言う「子どもの興味関心」とは、なにも勉強に直接関わるものでなくてもかまいません。大切なのは、親が勉強の方向へとつなげてあげられるかどうかです。
たとえば、子どもがドラえもんが大好きであれば、ドラえもんのキャラクターと一緒にマンガで学べる『ドラえもん社会ワールド』や『ドラえもん科学ワールド』を買ってあげるなど。読むこと自体が勉強になりますし、このマンガをきっかけに社会や理科に興味を持ち始めるかもしれません。あるいは、日頃からよく本を読む子どもであれば、さらっと国語辞典を用意してあげるなど。知らない単語に出会うたびに辞書を引く習慣がつけば、言葉や漢字に対する興味関心も自然と大きくなっていくことでしょう。
まずは「内発的なやる気」を引き出してあげるのがポイントですよ。
【子供の勉強のやる気を引き出す方法2】環境を整えて “最初の一歩” を簡単にする
「いつも勉強机の上が散らかっている……」
じつはこれ、かなり重大な問題です。勉強する前に「机の上を整理整頓する」という余計なアクションが加わってしまうことで、せっかくのやる気が削がれてしまうからです。
お子さんの机の上はきれいでしょうか? もし、あまりにも散らかっていて “明らかに勉強しづらそう” な状態であれば、まずは机を整理整頓するところから始めましょう。勉強に取りかかるうえで心理的な枷になりそうなものは、あらかじめ徹底的に排除しておくことをおすすめします。
もっと言えば、「ランドセルから教科書やノートを取り出す」という動作さえ面倒に感じている子も、もしかしたらいるかもしれません。その対策として、教育評論家の親野智可等先生は、「ランドセルの中身はすべて出させ、あらかじめ必要な道具一式を机の上に置かせる」ことをすすめています。さらに、勉強前に遊びたいという場合でも「最初の1問だけ解いてもらう」といいのだそう。
「ランドセルの中身を出すと、イヤでも宿題が子どもの目に付くうえに手に取りやすくなるんです。さらに、宿題と筆箱をテーブルに置き、その日やるページを開いておく、さらに一問だけ解くことで、全体の見通しがきくんです。そうすると、遊んで帰ってきて宿題に取り掛かるハードルは一気に下がります。これは実に効果ありますので、ぜひやってみてください」
(引用元:ママテナ|効果絶大! 子どもが“できる子になる”スモールステップとは?)
お伝えした内容は、勉強のやる気を引き出す方法というよりは、勉強のやる気を下げさせないための方法と言えるかもしれません。しかし、どんな子どもでも「勉強しなくちゃ!」と思う瞬間は来るはず。せっかくのそのタイミングで不必要にやる気を減退させてしまわぬよう、「勉強に取りかかりやすい環境づくり」をサポートしてあげるのがよさそうですね。
【子供の勉強のやる気を引き出す方法3】リビングで勉強させる
あるいは、自分の学習机で勉強させるのがまだ難しそうな場合は、勉強場所を工夫するのもひとつの手です。心理学者の植木理恵先生は、ひとりで何かをする習慣がついていない子どもの場合、「親とおしゃべりしながらでもいいから座って勉強させる時間をつくるといい」とすすめています。
『わが子を天才に育てる家』著者である一級建築士の八納啓創氏も、子どもに無理にひとりきりで勉強させることの危険性を指摘しています。八納氏いわく、そうすると子どもが勉強を「ひとりきりでやらないといけないもの」「つまらなくてつらいもの」と認識してしまい、勉強に対する興味や熱意を失ってしまうのだそう。
そこでおすすめしたいのが、親がいるリビングで勉強させることです。八納氏は、リビングで勉強することの良さを次のように述べています。
子どもは、親のそばでお絵描きや宿題をやりたがるものですよね。なぜなら、親のそばにいることで得られる安心感と、自分がやっていることを親に見てもらいたいという気持ちによってモチベーションが保たれているからです。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?)
ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介氏も、「人間は、リラックスできる空間にいて、かつ適度な緊張感と安心があるときに集中しやすい」とし、それがまさにリビングという場所であると太鼓判を押しています。「東大生には幼少期にリビングで勉強していた人が多い」という事実も話題になったとおり、リビング学習には勉強のやる気を引き出す以上のメリットがありそうですね。
しかし注意しなければならないのは、リビングは勉強するために設計された空間ではないということ。学習机であれば、デスクライトが手元を明るく照らしてくれますし、成長に合わせて天板や椅子の高さを変えることで勉強しやすい姿勢をつくることができます。しかしリビングの場合は、そのままではそうも行かないため、工夫を施す必要があります。
たとえば、「イージー ライティング ボード」は、10度の傾斜を持った天板が特徴です。傾斜があることで姿勢が前のめりになるのを防げます。持ち運び可能なため、リビングで勉強したくなったらさっと取り出して使えるのも魅力ですね。
デスクライトには、おしゃれなトースターやケトルでおなじみのバルミューダが販売している「BALMUDA The Light」がおすすめ。「医療用の手術灯をヒントに開発した」とのことで、自然界の波長に近い太陽光LEDを搭載しているそうです。
親が近くにいるリビングという空間で、安心感と適度な緊張感のもと勉強に取り組ませてみてはいかがでしょうか。
【子供の勉強のやる気を引き出す方法4】親も一緒に勉強する
リビング学習を紹介しましたが、ここでひとつ注意点があります。それは、子どもが勉強している横で、親が子どもそっちのけでテレビを観たりスマートフォンでゲームをしたりするのは避けるべきだということです。
子どもの目線に立ってみれば、自分が勉強している横で親が自由気ままに遊びほうけているのは、たしかに納得しがたいですよね。「なんで僕(私)ばっかり……」という気持ちが生まれてしまっては、子どもの勉強のやる気も下がってしまいます。
そこで、“教育の鉄人” とも呼ばれるカリスマ教師の杉渕鐵良先生は、親も一緒に勉強してあげることをすすめています。「ちゃんと勉強しなさい」と言わなければいけない場面でも、親が一緒に勉強することで、その言葉の重みがだいぶ変わってくるのだとか。
まず重要なのは、なにごとも「子どもと一緒に」という考え方を持つこと。子どもが宿題をやりたがらないのなら、「ちゃんとやりなさい」なんていって子どもにやらせるのではなく、一緒にやってあげればいいのです。同じ「ちゃんとやりなさい」でも、実際にやった人がいえば、言葉の重みがちがってくるのは明白です。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?)
小学校教諭の松尾秀明氏も、子どもが勉強するうえで大切な鍵は親だと説きます。みなさんの子どもがまだ赤ちゃんだった頃、親の行動を頑張ってまねしようとしていたはずです。親がハイハイしたらその後をハイハイでついてきたり、親が手を叩けば子どもも手を叩いたり――それと一緒で、親が勉強する姿を見せることで、子どももまねしたがるようになるのだとか。
わが子が自ら机に向かう習慣づくりのために、親が真っ先に行うべきは、親の側が自ら机(リビングテーブルなど)に向かう習慣、すなわち学んでいる姿勢を見せることです。学ぶことがたまらなく楽しい状態、学習を「楽習」と捉えることです。親が、その姿勢を背中で示しましょう。
(引用元:プレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣)
最も身近な存在である親が良き手本となれば、子どもも「家ではこうやって勉強するのが当たり前なんだ」「勉強って、苦痛じゃなくて楽しいものなんだ」と思ってくれるはずです。
【子供の勉強のやる気を引き出す方法5】ほめ方を工夫する
「子どもが自分から勉強し始めた!」
「もう1時間も集中して勉強している!」
「この前のテストが思いのほか良い点数だった!」
こんなとき、子どもをほめて今後の勉強のやる気につなげようとする親御さんも多いことでしょう。
たしかに、ほめるのは有効な手段です。脳科学者の篠原菊紀先生によれば、やる気を司る脳の線条体には「予測的な活動をする」という特徴があるのだそう。つまり、たとえば子どもが「勉強したらほめられた」という経験を何度か積んでいくうちに、子どもの線条体は「勉強するとほめられるのではないか?」と予測するようになります。そして、ほめられるという快感を得るために勉強する――つまり、勉強に対するやる気がアップするのです。
でも、だからといって、ただやみくもになんでもかんでもほめればいいというわけでもないのだそう。菊原先生によれば、「○○をしたらほめられる」という状態が当たり前になると、ほめることの効果が薄れていってしまうのだとか。つまり、「自分から勉強するたび」「良い点数をとるたび」に親が毎回ほめていると、子どもにとってはほめられることが当たり前になり、最初の頃に抱いた喜びをそこまで感じられなくなってしまうのです。
そこで菊原先生がすすめるのが「ギャンブル条件」。毎回必ずほめるのではなく、ほめたりほめなかったりといったランダム性を取り入れます。動物を使った実験でも、報酬を得る確率が不確定だった場合のほうが、脳から快楽物質が出やすかったそうです。
菊原先生は「『気が向いたときにほめる』くらいの適当さが、ほめることの効果を高め、結果的には子どものやる気を維持させることにもつながる」と述べています。子どもの勉強のやる気を引き出そうと、毎回「○○をしたらほめなければ!」と躍起になる必要はありません。ほめる回数を適度に間引いてあげたほうが、やる気はかえって続くのですね。
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子どもの勉強のやる気を引き出す5つの方法をご紹介しました。親が「勉強しなさい!」と言わずとも、やる気を持って勉強に取り組んでくれる子に育てていきましょう!
(参考)
プレジデントオンライン|アドラー心理学で解明「やる気」の出し方
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの話をしっかり聞くと「あとが楽」。勉強に必要な集中力の育て方
ママテナ|効果絶大! 子どもが“できる子になる”スモールステップとは?
ダイヤモンド・オンライン|「勉強ができる子」になるたった1つの方法とは?
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“リビング学習でかしこくなる” は勘違い。東大生がリビングで勉強する本当の理由
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?
プレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「間違った褒め方」していませんか? 子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド