教育を考える 2019.8.17

理数教育だけじゃない! スーパーサイエンスハイスクール(SSH)がスゴい理由

編集部
理数教育だけじゃない! スーパーサイエンスハイスクール(SSH)がスゴい理由

中高一貫校や高等学校の情報を調べていると、いくつかの学校に「スーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)」という肩書きがあることに気づくはずです。このSSHを、単に「理数教育に特化した学校」と解釈してはいませんか?

実際には、SSH指定校は理数教育を充実させるのはもちろんのこと、それらを通して、新しい時代に必ず必要となる重要な能力を高めてくれる学校であると言えます。そればかりか、「難関大学への進学者が多い」という説も。

今回は、そんなSSHについて、詳しくご紹介します。

スーパーサイエンスハイスクールは「理科大好き」な子どもを増やすために誕生!

かつて、日本では、子どもたちの「理科離れ」が大きな問題となっていました。しかし、理科で学ぶ内容は、豊かな生活や社会経済の発展、産業競争力の強化には欠かせないものです。そこで、文科省は、「理科好き」を増やすための施策として、「科学技術・理科大好きプラン」を開始しました。そのプランの一環として2002年度に誕生したのが、SSHです。

SSHとは、先進的な理数教育を実施する高等学校等を文科省が指定する制度、および指定された学校のことを言います。SSHに指定された学校は、文科省からの支援を受け、理数教育に重点を置いた新しいカリキュラムの研究開発を実施。将来、国際的に活躍する科学技術関係人材の育成に役立てます。

文科省は、2019年度現在、新規性のあるカリキュラム等の研究開発を行なう「開発型」と、過去にも指定を受けている学校がより実践的な研究開発を行なう「実践型」の2型に分けて学校を指定しています。これらを「基礎枠」(指定期間5年)とし、ほかに社会との共創に取り組む「科学技術人材育成重点枠」(期間最長5年)、幹事校・参画校・接続大学でコンソーシアムを組む「高大接続枠」(期間最長5年)を設置。計3枠2型の指定校を選定しています。

2019年3月に発表された新規の指定校は、「基礎枠」の「開発型」が14校(国立1校、公立13校)、「実践型」が18校(国立1校、公立13校、私立4校)、「科学技術人材育成重点枠」が4校(公立3校、私立1校)、「高大接続枠」が1コンソーシアム(幹事校県立1校、参画校県立4校、接続大学1大学)。既存の指定校と合わせると、2019年度の指定校は全212校となります。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)がスゴい理由2

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理数教育に特化しているだけじゃない。「創造性」「独創性」が高められる

国立研究開発法人 科学技術振興機構によれば、SSH指定校の役割は以下の通り。

高等学校等において、先進的な理数教育を実施するとともに、高大接続の在り方について大学との共同研究や、国際性を育むための取組を推進します。また創造性、独創性を高める指導方法、教材の開発等の取組を実施します。

(引用元:国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業|スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは

単に生徒たちに理科や数学を勉強させるだけではなく、先進的な理数教育を通して生徒たちの創造性・独創性までをも高めていくということがわかります。「創造性」「独創性」という言葉に馴染みのない方も、「創造性=クリエイティビティ」「独創性=オリジナリティ」と変換すると、イメージしやすいのではないでしょうか。どちらも、「AIやロボットによって代替されない、人間の労働として価値のあるもの」として、今注目されている能力です。

また、ご存知の通り、2020年度には大学入試改革が行なわれ、これまであった知識偏重型の入試に替わり、「思考力・判断力・表現力」を問う新しいスタイルの大学入試が始まります。創造性・独創性を高めていくことは、こうした新しい入試問題に対応する能力を高めることにもつながるのです。

安田教育研究所の安田理さんは、SSH指定校出身者が優秀であることを示す発言をしています。

SSHとは、文部科学省が科学・理数教育が充実した高校を指定する制度。安田氏は「SSH認定校は、難関大学への進学者が多い」と言う。

(引用元:プレジデントオンライン|“センター廃止”がプラスに働く中高30校

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)がスゴい理由3

スーパーサイエンスハイスクール指定校による、212通りのユニークな取り組み

では、具体的に、SSH指定校はどのようにして生徒たちの創造性・独創性を高めているのでしょうか。各校は、学習指導要領の範囲を超えたカリキュラムを開発・実践することができるため、大学や研究機関等と連携した授業や、コンテストや研究会への参加など、それぞれの特色を活かしながら、多種多様なかたちで取り組んでいます。また、対象となる生徒もさまざまです。

たとえば、東京都立日比谷高等学校のSSH対象者は全校生徒で、希望すれば誰でも参加できるスタイルです。東京大学をはじめとする近隣の大学や研究機関と連携を図り、最先端の現場に触れたり、第一線で活躍する研究者の指導や助言を受けたりできることが特徴のひとつだそう。

また、中高一貫校のなかには、中学生を対象とする学校もあります。茗溪学園中学校高等学校では、中学1年生から段階的に「探究スキル」を身につけていき、高校2年次の必修科目「個人課題研究」を探究活動の集大成としての位置づけに。国内だけでなく、海外の学校と共同で行なうプログラムや、科学研究の世界コンテストに参加するなど、グローバルに活動しています。

一方、同じ中高一貫校でも、高校1年生から本格的に探究学習に取り組むのが聖光学院中学校高等学校です。その前段階として、中学3年次に「探究基礎」を実施。同科目では、レゴ(R)ブロックを使った「レゴ®シリアスプレイ®」メソッドを取り入れ、想像力や創造力、表現力のトレーニングを行なうことで、探究学習の基礎を身につけさせます。

このように、各校が工夫して取り組んでおり、現在は212校が212通りのプログラムを進めているのです。

***
最先端の理数教育を受けながら、時代に合った能力を高めることのできるSSH指定校。北は北海道、南は沖縄まで全国各地に存在しています。興味のあるご家庭は、受験校を選ぶ際にSSH指定校を確認してみてはいかがでしょうか。

(参考)
ウィキペディア|スーパーサイエンスハイスクール
次世代人材育成事業|スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは
東京都立日比谷高等学校|SSH活動について
茗溪学園中学校高等学校|スーパーサイエンスハイスクール
ベネッセ教育総合研究所|マナブコラム「レゴ®シリアスプレイ®」
コエテコby GMO|次世代の科学技術系人材をはぐくむ「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」
文部科学省|科学技術・理科大好きプランの主な施策
リセマム|2019年度SSH指定校が公表、新設「高大接続枠」に船橋高校ら内定
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