幼児期からヴァイオリンの習い事を検討している親御さんは多いのではないでしょうか。男の子でも女の子でも、美しい姿勢で優雅にヴァイオリンを弾く姿は、とてもステキですよね。
東京大学や医学部へ入学した人の多くは、幼少期から音楽教室に通っています。ヴァイオリンは、子供の発達に効果的な習い事のひとつだと言えるでしょう。物理学者のアルベルト・アインシュタインも5歳でヴァイオリンの練習を始めましたし、4人のお子さんを東京大学理科三類に合格させた佐藤亮子氏も、幼児の頃からヴァイオリンを習わせていたそうです。
そこで今回は、お子様にヴァイオリンを習わせたいママさんやパパさんに、ヴァイオリンを習うメリットやレッスン内容、楽器本体の値段やサイズ、バイオリン教室まで、押さえておきたい情報をご紹介します。なお、情報は2020年11月時点のものです。
幼児期からヴァイオリンを習うメリット
まず、幼児のうちからヴァイオリンなど楽器を習うメリットを解説しましょう。
言語能力が高まる
幼児期から楽器を習うことで、外国語を習得しやすくなります。脳内で音を認識する領域と、言語をつかさどる領域が重複しているからです。
ヘルシンキ大学のリサーチディレクター、マリ・テルヴァニエミ氏らの研究によると、音楽能力の高い人は微妙な音の違いを識別できるそう。つまり、音楽を習うことで英語などのリスニングが得意になるのです。
東北大学脳科学センター教授で脳画像解析学を専門とする瀧靖之氏によると、楽器演奏は3~5歳くらいで始めるとよいそう。幼児期に楽器を始めれば、耳が鍛えられるでしょう。
注意力が高まる
楽器の演奏を学ぶことで、注意力が高まります。
チリのポンティフィシア・カトリカ大学の神経科学者レオニー・カウセル氏らは、幼少期から楽器を習っている子とそうでない子を対象に、楽器のレッスンが脳活動に与える影響などを調べました。それによると、楽器のレッスンは注意力や記憶力を高めるそうです。カウセル氏は、認知機能を向上させるため、子どもに楽器のレッスンを受けさせることを推奨しています。
音楽を習うことで小さいうちから注意力を磨いておくと、就学後も授業に集中しやすく、学校生活をスムーズに送れるのではないでしょうか。特にヴァイオリンはピアノと異なり、自分で正しい音程を探らなければならないため、音に集中する能力が磨かれます。
練習場所を選ばない
楽器といえば、ヴァイオリン以外にピアノもありますよね。しかし、ピアノは動かすのが困難なため練習場所が限られる一方、ヴァイオリンなら自宅だけでなく、音楽スタジオやカラオケボックス、河原や公園など、どこでも練習が可能です。
また、集合住宅で音が気になる場合、消音器(ミュート)を使えば音を最小限に抑えられます。とはいえ、幼児の場合は練習時間が短く音が小さいため、あまり必要ないかもしれません。
自宅で練習するなら、畳や繊維カーペットの部屋にするか、床にコルクマットを敷くと、音が響きにくくなります。もしヴァイオリンを落としてしまっても、ダメージが抑えられ、一石二鳥ですよ。
大人になっても楽しめる
子ども時代に楽器を習っておくと、途中でやめてしまっても、大人になってから趣味として再開しやすくなります。音楽の趣味を通して、職業や立場の違う人ともコミュニケーションする機会が生まれるでしょう。
前出の瀧氏も、幼少期から楽器を習い、仕事でさまざまな分野の第一人者や企業のトップと会ったときに音楽の話で盛り上がるそう。対人関係が得意ではないアインシュタインも、世界各地での公演活動の際、コミュニケーションの道具としてヴァイオリンを持ち歩いていたそうですよ。
幼児期からヴァイオリンを習うことで、高校や大学、地域のオーケストラに参加する機会が生まれ、人生が豊かになるのではないでしょうか。
幼児向けヴァイオリンレッスンは何歳から?
ヴァイオリンは何歳から習えるのでしょう? ヴァイオリニストの五嶋みどり氏は3歳、葉加瀬太郎氏は4歳から始めたそうです。子ども用ヴァイオリンで最も小さいサイズだと、2歳くらいから構えられるものがあります。
とはいえ、やはり子どもによると言えるでしょう。ニューヨークでヴァイオリン教室を主宰している福田千尋氏によると、体がしっかり発達する前に始めたほうが、ヴァイオリンの姿勢に慣れやすいそう。しかし、幼すぎるのに無理に始めると、なかなか上達せず嫌になり、やめてしまうことになりかねないとか。そのため、福田氏は、習い始める時期について先生に相談することをすすめています。
鍵盤を押せば正しい音が出るピアノと異なり、ヴァイオリンの場合、すぐには音を出せません。地道な練習が求められますが、小さい子に落ち着いて練習を続けさせるのは難しいことです。しかし、身近な人がヴァイオリンを華やかに弾きこなす姿を見て、「自分もやってみたい!」と憧れて頑張れる子もいるでしょう。
ちなみに、筆者の甥は体格のよい男児で、2歳半からヴァイオリンを習っていましたが、「肩痛い、重い、なんでヴァイオリン弾くの?」と先生を質問攻めにしていました。けれど、3歳半で参加した初めての発表会で、多くの人から拍手をもらったのをきっかけに、「また発表会に出たい!」と練習への向き合い方がガラリと変わったそうです。
幼児期にヴァイオリンを習わせたいと思ったら、ヴァイオリン教室の先生に直接お子さんの様子を見てもらい、スタートの時期を相談してはいかがでしょう?
幼児向けヴァイオリンレッスンの内容
幼児向けヴァイオリンレッスンでは、どのようなことを学ぶのでしょうか? 教室によって異なるのはもちろんですが、大まかな内容を年齢別に解説します。
2~3歳頃
2~3歳の子どもは、とにかく集中力が続きません。けれど、自分で「おもしろい!」と感じたことには夢中になる年頃です。個人レッスンだと、先生がヴァイオリン本体を持ちつつ子どもが弓を動かして音を出してみるなど、遊び感覚で親しむことから始める教室もあります。
グループレッスンの場合、年齢の近い子どうし、リズム遊びや歌で体を動かしながら音楽を楽しみつつ、ヴァイオリンへの興味も引き出す教室も。子どもたちが飽きずに音楽を楽しめるよう、リトミックと組み合わせるなどしてレッスン内容を工夫している教室が多いようです。
3~5歳頃
3~5歳になると、ヴァイオリンを構える正しい姿勢を学べるように。ヴァイオリンを肩と顎で挟みじっと立ったり、弓を正しいフォームで持ち続けたりといった練習をします。
ヴァイオリンと弓を正しく持てるようになったら、右腕で弓を動かす「ボーイング」練習。左指で弦を押さえずそのまま音を出す「開放弦」もスタートです。音符カードや手遊びを通して音楽の仕組みを学ぶ「ソルフェージュ」も始まります。
やがて、左指で弦を押さえる方法を学び、さまざまな音が出せるようになります。簡単な曲を弾けるようになるので、初めての発表会を迎える子も多いでしょう。
音楽教室や先生の考え方、個人とグループ、子どもの発達状況によって異なりますが、幼児ヴァイオリン教室でのレッスン内容は、おおむね上記のようなイメージです。
幼児向けヴァイオリンの値段
幼児期からヴァイオリンを始めるなら、体の成長に合わせて楽器を買い換えなくてはなりません。金銭的な負担が気になりますよね。幼児向けヴァイオリン(分数ヴァイオリン)の相場や、レンタルサービスをご紹介します。
購入する場合
基本的には、通っている教室の先生が、おすすめのヴァイオリンを紹介してくれるでしょう。参考までに、分数ヴァイオリンのざっくりとした価格目安をご提示します。
4万円以下
初心者のレッスン用なら、2万円台から弓などとセットで購入できます。老舗メーカーのヴァイオリンでも、中古品なら入手可能。楽器を壊してしまわないか心配だったり、本格的に習わせ続けるか迷っていたりする人におすすめです。
5~6万円台
定評ある老舗メーカーの新品が買えます。初心者向けのレッスン用分数ヴァイオリンとして、最も選ばれやすい価格帯。レンタルのヴァイオリンも、このレベルが多いようです。
10万円以内
定評ある老舗メーカーの中級クラスが手に入る価格帯です。
10万円以上
国内だけでなく、ヨーロッパの老舗メーカーの上級品も入手可能。ヴァイオリニストを目指す人向きです。
ヴァイオリンを買うのなら、趣味としてやるかプロを目指すか決めたうえで、先生に相談することをおすすめします。教室と提携している楽器店があれば、買い替えの際に下取りしてくれることも。
以下の動画は、島村楽器が売れ筋の分数ヴァイオリンを弾き比べたものです。それぞれ本当に音色が違うので、聴き比べて決めてはいかがでしょう?
レンタルする場合
買い替えにともなう経済的な負担が気になるなら、大人用ヴァイオリンを使えるようになるまでレンタルサービスを利用する手もあります。ふたつのサービスをご紹介しましょう。
フリック
フリックでは、日本の老舗メーカー・鈴木バイオリンのものをレンタルできます。
1/16~4/4
【セット内容】
- ヴァイオリン本体
- 弓
- ケース
- ブランケット(収納の際、本体にかける布)
- 松ヤニ
- クリーニングクロス
【最低料金】
- 初回6ヶ月:24,600円(税抜)
- 継続1ヶ月:3,500円(税抜)
【その他】
- 買い取り可
- 保険つき
篠崎バイオリン工房
篠崎バイオリン工房では、米イーストマンストリング社製を中心に分数ヴァイオリンをレンタルできます。
1/16~4/4
【セット内容】
- ヴァイオリン本体
- 弓
- ケース
【最低料金】
- 1ヶ月:2,800円(税込)
- 3ヶ月:7,650円(税込)
- 6ヶ月:14,900円(税込)
- 12ヶ月:28,300円(税込)
【その他】
- 松ヤニレンタル可(別料金)
- 保険オプション(別料金)
分数ヴァイオリンはレンタルして、大人サイズは購入したほうがお得な場合もあります。一方、下の子も習うのであれば、分数ヴァイオリンを買ったほうが安上がりなことも。幼児用ヴァイオリンを購入するかレンタルするか、先生と相談して決めるとよいでしょう。
幼児向けヴァイオリン教室
最後に、幼児も通えるヴァイオリン教室として、都内に展開する「小林音楽教室」をご紹介します。小林音楽教室では、幼稚園年中から楽器レッスンをおすすめしているそう。先生からの指示を理解し、自分で受け答えできるためです。
ヴァイオリンのクラスでは、個人レッスンが提供されています。体験レッスンでお子さんの様子を見てもらい、習い始める時期を相談してみてはいかがでしょう? 体験レッスンは、オンラインで申し込み可能です。
いきなりの体験レッスンはハードルが高いとお感じなら、気になる点を電話で確認することもできます。Webサイトに記載の番号にかけると、担当の方から詳しい内容を個別に説明してもらえますよ。
小林音楽教室には、0歳から始められる「幼児リトミック=ソルフェージュ」のクラスもあります。ヴァイオリンを習わせる予定だと先生に伝えておくと、子どもの様子を見て、適切な時期にヴァイオリンクラスへの移行を案内してもらえるそうです。
小林音楽教室の公式YouTubeチャンネルでは、以下のような「おうちでリトミック」シリーズが公開されています。ヴァイオリンを習うにはまだ早いお子さんなら、このような幼児リトミックから始めるのもよさそうですね。
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ヴァイオリンは、幼児から始めるメリットの大きい習い事です。プロの音楽家を目指せるだけでなく、音楽の楽しさを知り、優雅で美しい姿勢を手に入れ、言語能力が発達するなど、お子さんの可能性を広げるきっかけになります。
本記事でご紹介したように、レンタルサービスなど経済的な負担を軽くする方法もあるので、ヴァイオリンの習い事を検討してはいかがでしょう?
文/上川万葉
(参考)
瀧靖之(2016),『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』, 文響社.
奥田佳道・山田治生(2017),『おもしろバイオリン事典』, ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス出版部.
ハイケ・プランゲ 著, 宍戸里佳 訳(2004),『楽器の絵本 ヴァイオリン』, カワイ出版.
筑摩書房編集部(2014),『アルベルト・アインシュタイン 相対性理論を生み出した科学者』, 筑摩書房.
佐藤亮子(2018),『志望校は絶対に下げない! 受験で合格する方法100』,ポプラ社.
一般社団法人 全国楽器協会|瀧先生の脳活講座
Hudziak, James J., Matthew D. Albaugh, Simon Ducharme et al. (2014), “Cortical Thickness Maturation and Duration of Music Training: Health-Promoting Activities Shape Brain Development,” Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, Vol. 53, No. 11, pp.1153-1161.
Milovanov, Riia and Mari Tervaniemi (2011), “The Interplay between Musical and Linguistic Aptitudes: A Review,” Frontiers in Psychology, Vol.2, Article 321.
Kausel, Leonie, Francisco Zamorano, Pablo Billeke, et al. (2020), “Neural Dynamics of Improved Bimodal Attention and Working Memory in Musically Trained Children,” Frontiers in Neuroscience.
Frontiers|Musical training can improve attention and working memory in children – study
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