教育を考える 2019.7.2

子どものやる気スイッチがOFFなのは親の責任? 言ってはいけないNGワードとは

編集部
子どものやる気スイッチがOFFなのは親の責任? 言ってはいけないNGワードとは

学校や園から帰ってきた子どもがリビングで寝そべっていたり、ゲームに夢中になっていたりする姿を見て、「宿題やったの!?」「いつまで遊んでいるの!」と怒ってしまうことはありませんか? 子どもにも一息入れて疲れをとる時間が必要だとはわかっていても、つい「余計な一言」を言って急かしてしまう人も多いことでしょう。

毎日のように口酸っぱく言い続けても、肝心の子どものやる気が起こらなければ、「余計な一言」は効果がないどころか、親子の信頼関係に影響を及ぼすことも……。何も言わなくても子どもが自らすすんで取り組み、親子ともに心穏やかに過ごせるようになるには、子どもの「やる気スイッチ」を上手に押すことが必要です。

小言では子どもの「やる気スイッチ」は押せない

子どもに「〇〇やったの?」と言ってしまうとき、私たちは「やっていない」ことを知っているか、薄々わかったうえで聞いていることがあります。教育評論家の親野智可等さんはこのように述べています。

日頃から子どもに罠をかけてわざわざ嘘をつかせるような意地悪な質問をしていると、子どもは親に対する信頼感が持てなくなり素直な気持ちもなくなります。
そして、親の攻撃から自分を守るために、たくみな嘘をつくようにもなります。

(引用元:学研キッズネット|「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」など。「質問形」の裏に隠れているもの/子どもが伸びる親力【第26回】

子どもの口から正直に言わせようと誘導する親の一言は、子どもにとっては攻撃に感じられるもの。親子の信頼関係にとって好ましくないようです。あなたは、お子さんに対してこのような小言を言っていませんか?

「いつまで寝ているつもり?」
「宿題はちゃんとやったの?」
「遊んだおもちゃは、片付けたんでしょうね!」
「食べ終わった食器は、どうするんだった?」

そんなとき、「今やろうと思っていたのに!」と怒るお子さんは多いことでしょう。その胸の内は、パパやママの小言にガッカリして、素直に向き合いたくない状態にあるのかもしれませんね。

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「やる気スイッチ」を押された子どもの特徴

一方、「○○やったの?」と聞かなくても、こうしたことを自分からすすんでやれる子もいます。

  • 朝は決まった時間にひとりで起きる
  • 学校から帰ってきたらまず宿題に取りかかる
  • おもちゃで遊んだあとは元通りに片付ける
  • 食事が済んだら食器を下げる

 
彼らは、何事にも前向きで、失敗してもくじけず目標に向かって頑張れる「やる気スイッチ」が入った状態にあります。

「やる気スイッチ」を自分で入れることができる子どももいますが、初めの頃は親御さんが絶妙のタイミングで押してあげているケースが少なくありません。「やる気」が習慣化してくるにつれ、子どもたちは自らスイッチを入れられるようになっていきます。

「やる気」は、もって生まれた性格ではなく、親御さんが上手に引き出して身につけることのできるスキルと言ってもいいでしょう。

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「やる気スイッチ」が入った子は、この先どうなる?

ベネッセ教育総合研究所の「小中学生の学びに関する調査報告書(2015)『研究レポート2 自律的な理由で勉強することが適応的である』」によると、「内発的動機づけ」が高い子どもは学校での成績が良いという研究結果が出ています。「内発的動機づけ」とは、自分自身でやる気を引き出して、物事に取り組めるということ。すなわち、「やる気スイッチを自分で入れられる子」のことですね。

やる気スイッチを自分で入れられるようになると、勉強習い事家でのお手伝いなどに対して、主体的に目標を見出して楽しんでこなせるようになっていきます。これは、お子さんがこれから成長していくプロセスにおいて「不本意でもやらなければならないこと」に直面したときに克服する力になるものです。

中高生であれば定期テストや受験に向けての勉強、大学生ならば単位取得のために必要な課題や試験勉強など、「やりたくないなぁ」と思いながらもやらなければならないことは、たくさんあります。社会人になってからも、仕事のプレッシャーや毎日の通勤、会社での人間関係など、いつも楽しくおもしろいことばかりとは限りませんよね。

これらの克服すべき壁に対し、子どものうちに「やる気スイッチ」が押せるようになっていると、これまでも上手に乗り越えてきた経験が自信となり、自ら意味を見出して意欲的に取り組むことができるのです。

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子どもの「やる気スイッチ」を上手に押す方法

子どもの「やる気スイッチ」の上手な押し方には、次のような方法があります。

【学習面】

◆なかなか勉強を始められないとき

OK「宿題、何時からやろうか?」「今日の宿題は何をやるの?」
NG「まだやってないの?」「早くやりなさい!」

はっぱをかけたり急かしたりしても、子どもにはわかりにくく、かえって逆効果です。「何をやるのか」「どんなタイミングで始めるのか」を聞いて、子ども自身が考えるきっかけを与え、自分で決めた経験を重ねられるように声かけをしましょう。

◆机には向かっているものの、集中できていないとき

OK「まずは3問やってみよう」「もうここまで進んだの?」「ひとりで頑張っているね、手伝えることがあったら言ってね」
NG「ダラダラしないの!」「さっさと終わらせなさい!」

まずは、どうして集中できないのか原因を探ってみます。問題の量が多いようであれば、短く区切って集中を促し、難しそうな問題や苦手な分野であれば、ここまでやってきた頑張りを認める声かけをしてあげましょう。また、ひとりで黙々と続けることが得意ではない子なら、大人の存在が近くに感じられて頑張れるようにリビング学習をすすめるなど、環境づくりを提案してもいいかもしれません。

【生活面】

◆身のまわりのことができていないとき

OK「靴がそろっていると玄関がスッキリするね」
NG「ほら! また脱ぎっぱなし」「自分でやりなさい!」

たとえば、子どもが靴を脱ぎっぱなしにしているときには、「脱ぎっぱなしはダメじゃない!」と叱るのではなく、「そろえてくれると玄関がスッキリする」に置き換えることが大切です。具体的で前向きなフィードバックは、ほめ言葉に匹敵し、やる気を引き出すことが研究でわかっています。

◆決まった家の手伝いをやらないとき

OK「今日は一緒にお皿洗いしようか?」「あなたのお風呂掃除は丁寧だから、ピカピカになってうれしいよ」
NG「決めたこともできないの?」「それくらいはやりなさい!」

家の手伝いを何か決めて任せている家庭も多いと思いますが、一度決めたからといって必ずしもその人がやり遂げなければならないわけではありません。やる気がなさそうだなと感じる日は、「一緒にやろう」と声をかけると、案外すんなり動けるお子さんも。また、手伝ったことで人の役に立っているということを伝えるのも効果的です。

どのような場面でも、「何がどこまで自分はできているか」がわかり、「何をいつ取り組むのか」を自分で決めるように促すと、「やる気スイッチ」は入りやすくなります。

***
大人と同様に、やる気スイッチは、すぐに押せる子もいれば時間がかかる子もいます。また、新学期や学校行事など慣れないことが続いていると、心身が疲れていることも。ときには「1回休み」を取り入れるのも「やる気スイッチ」を上手に押すコツですよ。

(参考)
学研キッズネット|「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」など。「質問形」の裏に隠れているもの/子どもが伸びる親力【第26回】
schola|生活の節目を活用すれば、子どものやる気を高めることができる
進研ゼミ保護者通信|やる気アップの声かけバージョンアップ
Z-SQUARE|子どものやる気を引き出すコツ(1)
こどもまなび☆ラボ|子どもが「本当に褒めてほしいこと」。やる気スイッチをONにする言葉とは
ドロシー=ノー=ノルト・レイチャル=ハリス著、石井千春訳(2003),『子どもが育つ魔法の言葉』,PHP文庫
ベネッセ教育総合研究所|研究レポート2 自律的な理由で勉強することが適応的である