あたまを使う/国語 2019.5.8

言葉を次々調べたくなるマル秘アイテム。どんどん辞書を引いて、国語辞典を使いこなそう

松嶋 有香
言葉を次々調べたくなるマル秘アイテム。どんどん辞書を引いて、国語辞典を使いこなそう

私は小学生用の辞書が大好きです。そこには、大人の辞書には少ない、挿絵があるからです。何か言葉を引いたとき、そのページにある挿絵をじっと見てしまいます。例えば「このあいだ」のページには、「こはぜ」と「こぶし」と「コブラ」の挿絵が載っています。私はこれを見て、「こはぜ」という物を初めて知りました。未だに知らない言葉に出会えるのがうれしいですね。

こんにちは。ゆか先生です。前回は、国語辞典をさっと使えるようにする仕掛けについてお伝えしました。外箱を外し、名前を書いて、リビングに置く。これで準備はOKです。さあ、当たり前ですが、このままでは辞書を引けるようにはなりません。今回は文字の引き方、付箋紙やノートを使った辞書引き学習の方法など、実践方法をお伝えします。

国語辞典の基本

出版社によっては、ガイドブックが付属しているところもありますが、基本的に、文字の引き方については辞書のはじめに載っています。そこを読めばだいたいのことは分かりますが、今回、注意点も含めまとめてみますね。

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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1. まずは五十音を体感

日本の国語辞典は、五十音順に載っています。未就学児、小学校低学年の場合、細かいルールはそれほど気にしなくても構いません。ただし、五十音の順番は分かっていた方が引きやすいです。

まずは「あ段」の言葉の順番を覚えましょう。本の開く側を「小口」といいますが、そこに「あ・か・さ・た・な……」と書いてあります。その順番をまずは覚えると良いでしょう。しかし、そこだけ暗唱させて覚えるなんて方法はナンセンス。辞書を引くことで自然と分かるようになりますので、辞書を引く機会を利用し、「あ・か・さ・た・な……」と口で言うようにすると良いですね。

次に例えば「ぬ」が「な行」にあるという感覚も必要になります。それは、五十音表などを活用して覚えるようにしましょう。壁に五十音表を貼るのも手です。手始めに、自分の名前が何行の何段にあるのか指でさせるようになるといいですね。これは全ての調べ学習の基礎になります。そして、これは一朝一夕に身につく力ではありませんので、毎日の生活の中で取り入れていくと良いでしょう。「『ぬ』はどこ?」と問いかけ、探させるゲームのような方法も、子どもが楽しみながら学べるので、とても良いと思います。

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2. 活用に注意

「先生『買った』がのっていません」
そんな気づきにはっとさせられます。大人の辞書には言い切りの形で載っています。大人の場合は「買った」を「買う」で引きますよね。「買った」は「買う」の変化であることを知っているからです。

ところが子どもには言い切りの言葉が想像できません。子ども向けの国語辞典は、このあたりを実に細やかに工夫してあり、言い切りでない形で引いたときも、言い切りの形に誘導するようになっています。「買った」「買わない」「買おう」などの変化した形からでも「買う」に誘導されるようになっているのです。ここが大人の国語辞典と大きく違うところですね。もし家に子ども用の辞典がある場合は、試しに「買った」を引いてみてくださいね。なお、全ての語について変化形が載っているわけではありません。

この件についても、辞書を引くうちに、言葉がどういう形で辞書に載っているのか分かるようになります。文法も自然と分かるようになります。辞書引きにはこのような良い面もあるのですね。

もしも、変化した言葉が辞書に載っていなくて、子どもが言い切りの言葉を思いつけない様子であれば、保護者の方が手伝ってあげてください。「その言葉は○○という形で載っているよ。一緒に探そうか」などと、アドバイスしてあげるとよいでしょう。

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3. 引いても意味が分からない

最初のうちは、引いても意味が分からない場合が多いです。何しろ言葉を習い始めた時期なわけです。大人でいえば、まるで英英辞典を引いているような気分だと思います。その場合にはやはり保護者の方のフォローは必須。意味をかみ砕いて説明してあげましょう。これ、言葉の再発見にもなり、大人にもとても良い勉強になります。

例えば「右」という言葉、みなさんならどう説明しますか? 私が持っている小学生用の辞書では「日の出に向かって南側に当たる方」と書いてあります。子どもにはちょっと難しいかもしれません。その際は実際に、一緒に日の出の方向を向いてみると良いでしょう。また、具体例を織り交ぜると、ぐっと理解しやすくなりますので、そのような工夫も大切かと思います。

例:記念
意味 思い出として残しておくこと。また、そのもの。
具体例「○○ちゃんは、幼稚園の卒園式で△△をもらったよね。あれは、○○ちゃんが幼稚園楽しかったなーっていう気持ちをずっと残しておいて、いつでも思い出せるようにしてあるんだよ。そういうものを記念のものっていうの」

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付箋紙大作戦

私の講座では、入会時に、保護者の方向けに3冊の本を推薦図書としています。

どの子も伸びる国語力』岸本裕史 小学館
小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』深谷圭助 明治図書出版
学力は家庭で伸びる―今すぐ親ができること41』陰山英男 小学館

の3冊です。おすすめの理由、本の詳細については、こちらをご覧ください。

その中の『小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』で取り上げられている付箋紙による辞書引き方法は、とても効果が高いと実感しています。辞書を引いたら、調べた言葉を付箋紙に書き、番号を振り、そのページに貼っていくという方法です。保護者の方々の報告では、付箋紙を貼ることは、本当に励みになるようです。

私の受講生の中で、実際にこの方法で取り組んで、効果を上げた生徒を紹介します。

まずはIくん。小1で入会して、今は6年生です。1年生から辞書引き学習を始めました。これは最近の写真です。付箋紙がはみ出していて、もはや辞書には見えませんが(笑)。 付箋紙は、彼にとっては勲章なのでしょう。これを見るたびに、自分が積み重ねてきたものを誇りに思うに違いありません。

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最初は1枚、2枚と寂しい感じだったでしょう。ところが、10枚、20枚となってくると、俄然何かのスイッチが入ります。4月に始めたのですが、5月には620枚になり、12月には1,500枚になっていました。これは、1年生の9ヶ月で1,500の文字を辞書で引いたということです。学校ではしないことですので、どれだけ彼の語彙が増えたのか、想像できると思います。

彼は、語彙がどんどん増え、文章も上手になり、読書感想文などで賞も取るようになりました。また、中学年の夏には、真っ白な自由帳に自分で線を引いて、「読書帳」を作りました。自分なりにハートに火が付く学習法を見つけたようです。

もう一人、これは去年入会した2年生のMちゃんです。

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調べた言葉と番号だけでなく、例文も書いたらいいのではないかということを自分で思いつき、書いているそうです。

保護者の方のお話では「目的の単語を調べるのに、まだ時間がかかるので、私と一緒に辞書を引いています。ゆか先生のおすすめの本を参考にして受講時から付箋を使用しています。先生のおかげで親子で学習するきっかけができています。ありがとうございます。」とのこと。

大学生になる私の息子も、小学1年生から辞書を引かせ、付箋紙学習をしていました。彼は引いた語の一覧がほしかったようで、ノートに作っていました。

他にも付箋紙を貼っていく方法で頑張っている生徒がいますが、共通することが、自分で新しいアイディアを試したり、工夫を重ねたりしていることです。そして、親に言われたやり方ではなく、自分独自の方法を作り出していく力があると思います。さらに、どの子も語彙を増やすだけでなく、文章全体が上手になっていく傾向があるようです。知っている言葉が増えると、表現が豊かになる結果なのでしょう。

現在、この辞書引き学習法は、さらに発展していて、著者の深谷先生のサイトでも詳しく紹介されていますので、興味のある方はぜひ試してみてください。

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ゲーム感覚で競争!

ある程度、文字が引けるようになってからは、目的の言葉にたどり着くまでの時間を親子で競争するのも面白いでしょう。子ども用のかるたを使う方法が便利です。かるたには、子どもが知っている言葉がのっていますので、それに出てくる言葉を辞書で引いてみるのです。

かるたがない場合は、絵本でも、テレビでもなんでも良いので、目に付いた言葉を引いてみます。教科書に出てくる言葉でも良いのですが、ちょっと「宿題」を思い起こさせてしまい、やる気がなくなってしまうかもしれません。なるべく「生活」に近い言葉の方が良いでしょう。

また、調べる言葉をお子さん自身が探すというのも良いと思います。兄弟でする場合は、様子を見てハンデをつけましょう。保護者の方は、同じ言葉を和英辞典で探し、出てきた英単語を英和辞典で探す、なんていうのも面白いかもしれません。

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親が辞書を引く姿を子どもに見せる

「分からない言葉は調べなさい」なんて口で言うのは簡単ですが、実際親はスマホで済ませようとしてしまいます。昔は、言葉が分からない場合は、ケイタイではなく辞書を使って調べていました。お子さんの辞書引きを習慣化させるためにも、ぜひ、そのお手本になってください。日常の場面で、知らない言葉に出会った時、「○○ってどういう意味かしら。調べてみようっと」と言って辞書を引くのです。これは、スマホで言葉を検索することになれてしまった保護者の方にも良い機会となるはずです。

その姿を見て、子どもは自然と「分からない言葉があれば辞書を引けば分かるようになる」と知るでしょう。そして何より、連載第1回でもお伝えしましたが「分からないことをそのままにしない」という姿勢を親からも学べます。

まずは、今日、知らない言葉に出会ったら、スマホを手に取る前に、辞書で調べてみてください。新しい気づきがありますよ!

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■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容
第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく
第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう!  電子辞書ってどうなの?
第3回:初めての国語辞典。カバーは? 置き場所は? どんなふうに引くの?
第4回:ゲーム感覚でやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など
第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ
第6回:まとめ 国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後