あたまを使う/教育を考える/サイエンス/国語 2018.10.25

「国語」「社会」「理科」の理解度にも影響する!? 子どもが季節感を知ることの大切さ。

編集部
「国語」「社会」「理科」の理解度にも影響する!? 子どもが季節感を知ることの大切さ。

「この中で1つだけ違う季節の絵に○をつけましょう」
「左の花と右の絵で同じ季節のものを線で結びましょう」
こんな、季節についての問題は、受験対策の塾や幼児向けドリルなどでもよく取り上げられ、小学校受験を考えている人にはおなじみのテーマです。

この季節に関する知識は、もちろん受験対策のために身につけるものではなく、私たちの生活に豊かさや彩りをもたらしてくれます。さらに、子どもたちにとっては学校教育での学習の理解度にも影響を与えるものといえます。

子どもが「季節」をよく知っていることで、学習面ではどのようなアドバンテージがあるのか。家庭でできる季節感の教え方について紹介します。

小学校受験で「季節感」を問われる理由

衣食住が快適で便利になった一方、時間に追われて生活しがちな現代社会では、季節感を楽しむことをついつい二の次にしてしまいますね。野菜や果物、魚、草花には「旬」があることを知っていても、何がいつ旬を迎えるのかハッキリ分からないという人もいるのではないでしょうか。

特に都市部においては、核家族化によって昔ながらの知恵が受け継がれることもなくなり、スーパーでは一年中、季節や旬に関係なく野菜や果物が手に入るのが現状です。こうした環境で育った子どもたちは、おじいちゃんやおばあちゃんに昔から伝わる行事を教えてもらいながら季節を感じることも、田畑や野山の風景から四季の移り変わりに気づくこともほとんどありません

こうした現在の生活スタイルから離れつつある「季節感」について、小学校受験で問われるのはなぜでしょうか? それは「季節感」を子どもが身につけているかどうかを問うことによって、その子の社会性や生まれ育った家庭の教育観を見ていると考えられます。

草花や野山に見る季節の移ろい、鳥や虫の鳴き声、旬の食べ物の鮮度や味、年中行事やそれにまつわる行事食など、四季を味わい楽しむとき、私たちの五感はフル活動します。こうした経験は、子どもが美しいものや良いものに接したときに感動する心、つまり「情操」を養います。心豊かに成長するよう育てられているかどうかを判断するひとつの指標として「季節感」を問われているのでしょう。

この情操教育は、「感情や情緒を育み、創造的で、個性的な心の働きを豊かにするための教育」「道徳的な意識や価値観を養うことを目的とした教育」です。情操教育は、今後ますます注目されていく「人間力」や「生きる力」を育みます。子どもたちには、季節を敏感に感じ取ってもらいたいものです。

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「季節感」を知っている子どもは、学校でこれだけ有利になる

また、季節感についての問題は、入学後の教科学習にも有利にはたらきます。その範囲は広く、国語、生活、社会、理科、音楽、家庭科に及びます。小学校の学習指導要領に記されている季節に関連する内容を一部紹介します。

<国語>

  • 四季の自然風土行事習わしなどに関連する言葉や詩歌を味わう。
  • 俳句に読まれている季語から、季節を理解してその情景を想像する。

<生活>

  • 「秋みつけ」「秋さがし」と題して、校外へ出かけて紅葉を見たり落ち葉や木の実を拾ったりする活動。(1~2年)

 

身近な自然を観察したり,季節や地域の行事にかかわる活動を行ったりなどして,四季の変化や季節によって生活の様子が変わることに気付き,自分たちの生活を工夫したり楽しくしたりできるようにする

(引用元:文部科学省|学習指導要領「生きる力」第2章 各教科 第5節 生活

<理科の例>

  • カマキリ、テントウムシ、バッタなどを飼育して観察したり、サクラ、タンポポ、ヘチマなどの生態を観察したりする。季節によって、動物の活動や植物の成長には違いがあることを理解する。(3~6年生)

 

身近な動物や植物を探したり育てたりして,季節ごとの動物の活動や植物の成長を調べ,それらの活動や成長と環境とのかかわりについての考えをもつことができるようにする。
ア 動物の活動は,暖かい季節,寒い季節などによって違いがあること。
イ 植物の成長は,暖かい季節,寒い季節などによって違いがあること。

(引用元:文部科学省|学習指導要領「生きる力」第2章 各教科 第4節 理科

実技教科においても、音楽では季節を楽しむ歌を取り上げたり家庭科では季節に合わせた衣食住を考えたりする単元のなかで「季節感」の知識は役立ちます。

子どもが季節感を知ることの大切さ2

家庭でできる「季節感」の教え方

子どもが「季節感」を学ぶための最も確実な方法は、1年をかけて四季の違いや植物や食べ物の「旬」、あるいは年中行事をひとつずつ親子で一緒に体験していくことです。

今回は、気負わずにできる、“普段の生活の中” で「季節感」を子どもに意識させる方法を紹介しましょう。

【今まで経験した行事をふり返る】

市販されている小学校受験の対策テキストで、子どもが「季節」に興味をもちやすくきれいにイラストでまとめた教材や1枚の大きなポスターになっているものを活用します。まずは、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を一緒に確認してみましょう。

春:入園式の写真にサクラの花が写っていたね」「こいのぼりを上げたときは柏餅を食べたよね」
夏:七夕まつり楽しかったね」「プールに入ると気持ちよかったよね!」「セミがたくさん鳴いていたね」
秋:葉っぱの色が変わるね」「少しずつ涼しくなってくるね」「さつまいもがたくさん売ってたね」
冬:が降ったから雪だるまを作ったよね」「お正月にみんなで初詣に行って、このお守りを買ったね」

暑かった、寒かったなどの感想でもいいですし、スイカやさつまいもなど季節の野菜や果物について話してもいいでしょう。また、行事をふり返ることで、「入園式や入学式は春なんだ」「子どもの日は桜餅を食べる決まりなんだな」など、改めて理解することも多いはずですよ。

「短冊に書いた願い事が叶ったよ!」なんて、話が脱線したってOKです。季節にまつわる話をたくさんすることで、子どもたちは季節に興味を持ち、記憶に残すことができるでしょう

子どもが季節感を知ることの大切さ3

【生活の中で季節を感じる】

毎日の生活の中で、親子一緒に楽しみながら季節を感じていくことが一番ですよね。家庭ごとに無理のない「季節感」を取り入れていきましょう。

〇買い物で覚える

スーパーは季節感を知るのにうってつけの場所です。「タケノコが売ってるよ! 春だね~」「スイカの季節も終わりだ。もうそろそろ秋だものね」など、果物や野菜、魚などを見ながら季節感たっぷりのお喋りを楽しんでみてはいかがでしょう。その際、無理に覚えさせなくては! と気合をいれるのは厳禁です。あくまでも楽しく、親子のコミュニケーションを取ってくださいね。

そして親だって完璧な知識は必要ありません。「さわら……? 春の魚だったような気がするんだけど」「キャベツの季節はいつだろう?」など、わからないことがあれば、家に帰ってから一緒に調べてみるのもおすすめです。

子どもが季節感を知ることの大切さ4

〇行事やおでかけを楽しむ

「今日は十五夜だから、お団子を供えてお月見をしよう!」と、親子でお団子を作ってみるのはいかが? きっと「なんでお月さまにお団子をあげるの?」なんてかわいくて純粋な質問があるのではないでしょうか。月の満ち欠けについても興味を持つきっかけになるかもしれませんよ。

また、夏と冬には、ぜひ「暑中見舞い」「年賀状」を出してみてくださいね。年賀状を書くことで、その年の「干支」を覚えられますし、覚えのはやい子であれば、十二支をスラスラ言えるようになってしまうかも

近所の公園に “紅葉狩り” に行くのもいいですね。どうして葉っぱの色が変わるのか、どうして見るだけなのに“紅葉狩り”と呼ぶのかなど、親子一緒に考えてみてください。この機会に、我々大人も季節感をしみじみ感じてみてはいかがでしょう?

***
季節感を教えるには、子どもと一緒に体験したことを振り返りながら知識を身につけさせるのがポイントです。「知っている」「やったことがある」という経験や自信は、学力向上に欠かせない「自己肯定感」も育みます

また、視点を変えてみると子どもだけでなく忙しい大人にこそ四季を感じて旬を楽しむゆとりは必要かもしれません。親子で楽しく学んでみてはいかがでしょうか。

(参考)
NHK for School|おはなしのくにクラシック 指導上の参考
文部科学省|学習指導要領「生きる力」第2章 各教科 第5節 生活
文部科学省|学習指導要領「生きる力」第2章 各教科 第4節 理科
EDUPEDIA|季節と生物(理科実験 指導案)
AllAbout|小学校入試で必出!季節感を養うポイント