「創造力」——これからの時代を生きるために必要だといわれている能力のひとつです。特に今後、先の見えない社会に出て働くこととなる子どもたちにとっては、必要不可欠な能力と言えるでしょう。しかし、それがどんな力で、なぜ必要なのか理解している親御さんは、あまり多くないのではないでしょうか。
そこで、今回は「創造力」がなぜ必要なのか、また、家庭で育む方法についてご紹介します。
創造力は誰もが身につけられるもの
創造力とは、簡単にいえば「新しいものをつくりだす能力」です。英語では “creativity”(クリエイティビティ)といい、創造する人のことを「クリエイター」と呼ぶこともあります。たとえば、ゲームをつくる職業を「ゲームクリエイター」といいますね。
しかし、創造力はクリエイターにしかない能力ではありません。子どもから高齢者まで、誰もが創造力を働かせ、新しいものをつくりだすことができます。たとえば、子どもが粘土を使って自由に形をつくるのも、主婦が新しい料理のレシピを編み出すのも、創造力を駆使して行なわれていることです。
アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズや、経営学者のピーター・ドラッカーは、創造力や、創造力から生まれるイノベーションについて次のように語っています。
スティーブ・ジョブズ
「創造力とは、いろいろなものをつなぐ力だ。一見すると関係のないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力だ」
(引用元:カーマイン・ガロ(2011),『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』, 日経BP社.)
ピーター・ドラッカー
「イノベーションは天才のひらめきや天賦の才能でなく、誰もが学び実行することができるものである」
(引用元:ナビパラドットコム|スティーブ・ジョブズがiPhoneを作り上げた原動力はプロダクトイノベーションにあり)
創造力は特別な能力ではありません。つまり、「新しいものなんて思いつかないし、創造力に自信がない」と思っている人でも、自分次第で今から身につけたり、高めたりすることができるのです。
創造力が未来の仕事の幅を広げてくれる
世界経済フォーラムが2016年1月に発表した「2020年に必要なビジネススキルトップ10」では、「創造力」は「複雑な問題解決力」「クリティカルシンキング」に続いて3番目に必要なビジネススキルとされています。なぜ、こんなにも創造力が求められているのでしょうか。
同フォーラムは、2025年までには、機械が人間より多くの作業をこなすことになると予測しています。しかし、それは決して「仕事がなくなる」ということではありません。多くの作業が人間から機械に引き継がれるぶん、新たな仕事がたくさん生み出されることを意味しています。
(前略)人間、機械、アルゴリズムの労働分担の転換により7,500万の人間の仕事が機械などに取って代わり、そうした労働分担に適合しやすい1億3300万の新しい仕事が生まれると推測されます。
(引用元:世界経済フォーラム|ニュースリリース)
つまり、これからの時代に必要となるビジネススキルは、機械にはない、人間特有のスキルということです。それらを身につけておけば、今後新しく生み出される仕事にも役立てられ、これまで以上に仕事の幅が広がることも考えられます。とりわけ、創造力は、新しい仕事を生み出すことも可能にするかもしれません。
今、子どもたちが創造力を身につけることは、将来自らの仕事の選択肢を増やすだけでなく、未来に新しい仕事を生み出す可能性にもつながるのです。
家庭でできる! 創造力を育成する3つの習慣
では、どうすれば子どもの創造力を育成できるのでしょうか。家庭で取り入れられる習慣を3つご紹介します。
●過干渉せず、自由な時間を与える
家で子どもと二人きりになると、「私がこの子の相手をしなくては」と、必要以上に子どもにかまってしまう親御さんは少なくないのではないでしょうか。もちろん、一緒に遊ぶ時間も大切ですが、子どもの創造力を高めたいのであれば、子どもがひとりで自由に遊ぶ時間も確保しましょう。いきなりひとりで遊ばせても、子どもは何をしていいかわからず、退屈そうな態度を示すかもしれませんが、それも創造力を高める貴重な時間です。
教育の専門家であるマイク・ランザ氏は次のように述べています。
Children have an amazing innate ability to be creative when they play freely on their own, and unfortunately, the act of overparenting dampens or even wipes out that innate ability,(子ども達は、自分たちで自由に遊ぶとき、先天的な創造力を発揮します。そして、残念なことに、親が過保護であると、創造力を削いでしまうのです)
(引用元:Psych Central|9 Ways to Support Your Child’s Creativity)※カッコ内の和訳は編集部が補った
思いきってひとりにさせておくと、子どもは自分なりに好きな遊びを始めます。そのなかで、これまでと異なる遊び方を試したり、楽しみ方を覚えたりして、新しい何かを生み出していくのです。
●シンプルな遊びをさせる
児童教育心理学者のシャーロット・レズニック氏は、シンプルなゲームや遊びを推奨しています。最近では、親世代が子どもの頃にはなかったようなおもしろいオモチャや、凝ったオモチャがたくさんありますよね。もちろんそれらもたまには良いですが、創造力を高めるにはシンプルなオモチャが適しているようなのです。
レズニック氏は、レゴで遊ばせる際には、何を作るのか指示することなく、子どもたちの作りたいものを自由に作らせていると言います。レゴ以外にも、積み木やおはじき、砂場遊びや工作など、子ども自身で遊び方を考えたり、新しく何かを作ったりできるような遊びをさせるのがおすすめです。
このとき、子どもの考えた遊び方が成り立っていなかったり、失敗することがわかったりしても、先回りしてストップさせてしまうのはNG。子どもは、失敗を恐れずに最後までやり遂げることで、また新たなアイデアを生み出すようになります。最初のアイデアが不発に終わっても、「どこを工夫すればいいかな?」「次はどうしたらいいと思う?」といった声がけをし、うまくできたときにはたくさん褒めてあげましょう。
●親自身が手本となる
子どもの創造力を高めるためには、親自身が創造する姿を見せることも大切です。子どもの前で問題に対する解決策を考えたり、オリジナルの料理や歌、絵本などをつくったりしてみましょう。子どもは親を手本とし、創造するということを学びます。そして、その学びを活かし、自分で創造するようになるのです。
子どもと一緒に楽しみながら、自分自身の創造力も、子どもの創造力とともに高めてみてはいかがでしょうか。
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このように、時代の流れを読み、それに合う能力を子どものうちから身につけておくことは、未来を明るく生きていくために欠かせないことです。せっかくなので、日常生活のなかで親子一緒に楽しみながら身につけていきましょう。
(参考)
ナビパラドットコム|スティーブ・ジョブズがiPhoneを作り上げた原動力はプロダクトイノベーションにあり
世界経済フォーラム|ニュースリリース
All About暮らし|子供の創造力を育む7つの工夫とは?
BRAVE ANSWER|世界経済フォーラムとは?|2020年に必要なビジネススキルトップ10
Psych Central|9 Ways to Support Your Child’s Creativity
カーマイン・ガロ(2011),『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』, 日経BP社.