教育を考える 2019.11.17

ヒット商品を考えたのは小学生!? 子どもたちはどのように「売れる商品」を生み出したのか

編集部
ヒット商品を考えたのは小学生!? 子どもたちはどのように「売れる商品」を生み出したのか

皆さんは、お子さんに「マネー教育」をしていますか? 日本ではタブーとされがちな「お金」の話。学校でも家庭でも、マネー教育を受ける機会は少ないものですよね。大人になってからお金のことで失敗したり、「子どもの頃に勉強しておくべきだった……」と悔やんだりした経験のある方も少なくないのではないでしょうか。

茨城県つくば市の英語学童保育Kids Creation Afterschoolでは、小学生の子どもたちが「パンのヒット商品を開発する」という一大プロジェクトに挑んでいました。小学生たちは、いったいどのようにしてヒット商品を生み出し、どのような学びを得たのでしょう。

先の見えないこれからの時代、お子さんにとって本当に必要な教育について考えてみませんか?

小学生が「ヒット商品開発」?

茨城県つくば市の英語学童保育「Kids Creation Afterschool」では、「自分で人生を切り拓く実践力のある子どもを育てる」ことをモットーに、真の国際人をはぐくむための教育を行なっています。

金融経済教育も行なっている本校で、今回子どもたちが取り組むことになったのは「パンのヒット商品を開発する」というビッグプロジェクト。つくば市のパン屋さん「ぷーぱん」、お金と教育の専門家がゲームやパズルを使って子ども向けに楽しくマネー教育を行なっている「こどものお金の学校」とタッグを組み、商品開発に臨みました。

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どんなパンを売る?

プロジェクト第一回では、「こんなパンがあったらいいな♪」をテーマに、誰に・どんなパンを食べてもらいたいかを絵と文字で表現して大盛り上がり!

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初めはこのように、「アニメのキャラクターの形のパン」「『からすのパンやさん』に出てくるはさみパン」「うんこパン(3名いたそう……)」などなど、「こんなパンがあったらおもしろそう」という発想のパンばかり。

しかし、実際にパン屋さんにお話を聞き、じっくり考える時間を持つにつれて、「僕たちが考えるヒット商品は、(こんなパンあったらいいな♪)という ”理想のパン” ではなく、一度来てくれたお客さんが何度も買いに来てくれるパンだ!という大切なことに気がつきます。

子どもたちは、「自分のためではなく、誰かのために作るなら……」と真剣に試行錯誤するように。そこで、一度ではなく、何度も食べてもらえるパンといえば……と、「食パン」を作ることになりました。しかし、食パン以外のパンを作りたかった子は強く反発。「食パン嫌いだから絶対に嫌だ!」「耳固いし!」「パサパサだし!」そんな言葉の連発に、空気がどんどん悪くなります。ここで、大人の出番です。

「これはチャンスなんだよ! 普通の食パンが嫌いな人にもおいしく食べてもらえる、オリジナルの食パンをつくれば、たくさんの人に買ってもらえるかもしれない。

ビジネスって、人が嫌だな、不便だなって感じているところにチャンスがあるんだよ。さっき〇〇くんはすごく良いヒントを出してくれたね。耳が固くて、パサパサするのが嫌なら、その嫌な部分を改良する方法を考えてみたらどうだろう」

先生の一言で会議の雰囲気が変わり、子どもたちはより強く団結。話し合いの結果、「家でよく食パンを余らせてしまう」という子の意見や、「パンの耳が嫌い」という子の意見を反映させ、生地に豆腐を練りこみ、耳までふわふわの、手のひらサイズの食パンを作ることに決めました。商品名は「こども食パン」に決定!

なんども試食をしてアイデアを出し合い、ついに、しっとりモチモチの、子どもから大人まで食べられるパンが完成です!

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また、こどものお金の学校から、経営の仕組みマーケティング戦略も教わり、販売価格も決定。マーケティングの基礎を学ぶうちに、ただ良いパンを作るだけでなく、伝えなければいけないということにも気がついていきました。

自分たちのパンの良さを知ってもらうためには、自分たちが作ったパンの良さを言語化し、発信していかなければいけない。言語だけでなく、写真や絵を通して感覚で伝えることも大切……。

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お金を稼ぐためには、相手のニーズをとらえ、ニーズに合わせたもの、価値を認めてもらえるものをつくることに加え、必要としている人に情報を届けることが必要なのだ、ということを学びました。

そこで、試行錯誤の結果、昨年クラウドファンディングでツリーハウスを作った経験から「プレスリリース」を自分たちで作成。3回も取材を受け、ラジオにも出演しました。

宣伝はバッチリ。満を辞して、販売です!

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ついに販売! 結果はいかに?

5月から、4ヶ月間にわたって取り組んできた商品開発。ついに、パンの販売が始まりました!

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ぷーぱんが焼いてくれたパンをラッピングし、店頭へ並べます。手作りのポップも子どもたちがデザインしました。

「いらっしゃいませ~!」

初めは少し緊張気味でしたが、徐々に笑顔で「こちらの味がおすすめです!」「お支払いはこちらでどうぞ!」と、事前にシミュレーションしたことを活かして元気に接客ができました。

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子どもたちによる店頭販売の後も、「こども食パン」はぷーぱんの定番商品に。そして、販売から1ヶ月、ぷーぱんの全43種類のパンの販売実績が集計されました。

結果は……「こども食パン」、堂々の2位! じつは、手のひらサイズにこだわったこども食パンを作るには、専用の型が必要なのだとか。型の数が限られているため、1日に焼き上げられるパンの数も限られているそう。それにもかかわらず、2位を獲得した「こども食パン」。「ヒット商品を開発する」というプロジェクトは大成功と言えるでしょう。

みんな、お疲れ様でした!

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子どもにマネー教育は必須

2022年4月から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。すなわち、18歳になれば、たとえ高校生であっても、クレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることができるようになるということです。この民法改正を受けて、2020年から新しい学習指導要領で、本格的にマネー教育が組み込まれることになりました。しかし、マネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生は、それでは遅すぎると警鐘を鳴らします。

それこそ、小学校でマネー教育がはじまる前から家庭ではじめておくべきでしょう。ものの価値もわからない、自分で買い物をした経験もないのに、小学校で売買契約の基礎を教えるといっても難しいというものです。

しかも、幼い子どもにマネー教育をするにも現金を使うべきですね。実際に小銭を持って、10円玉10個が100円玉と交換できるものだということを感じたり、あるいは自分で買い物をして支払う金額を間違ったりする経験によって、お金がどういうものかを実感できるようになるからです。

実体験としてお金を使ってみないとわからないこともあるはずです。学校でマネー教育をはじめるといっても、教室でシミュレーションするのではピンとこないこともあるでしょう。「魚が切り身のかたちで泳いでいると思っている子どもがいる」という笑い話がありますが、マネー教育も内容次第ではそれに近いことも起こり得るはずです。

(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ)※太字は筆者が施した。

同氏いわく、公教育でマネー教育が始まる前に、家庭でその教育に挑む姿勢を作ってあげることが大切なのだとか。

国語や算数の勉強と違って、マネー教育は机上の学習だけでは不十分。「まだ子どもだから」「子どもにお金の話はちょっと……」と避けていては、将来困るのは子どもたちです。今回のプロジェクトのように、実体験を通してお金を知ることは非常に意義のあることだと言えるでしょう。

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生きていくために欠かせない存在でありながら、「見えない」存在に陥りがちなお金。今回のプロジェクトは、子どもたちにとって、お金と密に関わり、「お金を稼ぐ」ことを体験する最高の機会だったのではないでしょうか。

次回の記事では、日本の子どもに足りない「マネー教育」の大切さや、これから先の見えない社会を生きていく子どもたちに本当に必要な力について、本プロジェクトを企画したKids Creation代表の宮嶋さやかさんにお話を伺います。

■ 次回記事はこちら。
「小学生がヒット商品開発。「お金の稼ぎ方」を知っている子どもが強いワケ」

【Kids Creation Afterschool】
〒305-0003
茨城県つくば市桜1-18-1
029-869-5830
日本の子ども達を対象にした英語で学ぶアフタースクール・学童保育。英語を第二言語として学ぶ子ども達のためにデザインされた指導カリキュラムに、日本語で学ぶ「探究プログラム」を組み合わせることでグローバル時代に必要とされる真の国際人へと育てる教育を行っている。

(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|遅れが著しい日本の「マネー教育」。日本の子どもは“社会のなかで自立”できるのか?