前回の連載では、おうち時間の気分転換になるような算数の発展問題をご紹介しました。お子さまと一緒に、楽しみながら取り組んでいただけたでしょうか?
普段、「勉強しなさい!」と急かしてもなかなか机に向かってくれないお子さまも多いと思います。でも、「この問題、難しいんだけど一緒に考えてみない?」と、ゲーム感覚で誘ってみると、意外と食いついてくれたのではないでしょうか。きっと、急かされてしぶしぶ勉強するよりも、おうちの方と楽しみながら勉強したほうが、お子さまの記憶にも残りやすいはずです。
今回も引き続き、思考力が身につく算数の発展問題をご紹介したいと思います。今回は、お子さまが苦手意識をもちやすい「いろいろな単位」を扱う問題です。
1. 多くの子どもたちが苦手とする「水のかさ」の問題
<第1問>いまの時刻を推理しよう
次の文章を読んで、いまの時刻を答えましょう。
夜の7時から1秒に10mLずつのお湯を湯ぶねにため続けました。
ちょうどいま、湯ぶねに30Lのお湯がたまっています。
いまの時刻は夜の何時何分でしょうか。
1秒で10mLのお湯がたまるということは、60秒(=1分)で600mL、600秒(=10分)で6,000mLのお湯をためられることになります。
ここで、6,000mLをLに換算すると、6Lですね。
10分で6Lのお湯がたまるということは、30Lのお湯をためるのには何分かかるでしょうか。
それを導くために必要なのが、この式です。
30÷6=5
すると、30Lのお湯をためるには、6Lを5回繰り返せばよいことがわかります。
ここで、お湯を6Lためるのにかかる時間は10分ですから、お湯をため始めた7時から、10分を5回繰り返せば、30Lのお湯をためることができますね。
よって、答えは7時+(10×5)分で、7時50分です。
「水のかさ」と「時間」という2つの単位を同時に扱う、少し難しい問題でしたが、正解できたでしょうか?
多くの子どもたちが苦手とする単位の単元でも、特につまずきやすいのが、このような「水のかさ」についての問題です。「水のかさ」の単元では、3つの単位が出てきます。
L(リットル)
dL(デシリットル)
mL(ミリリットル)
特に、dLは普段の生活ではあまり使いませんから、お子さまが混乱してしまうのはもちろん、おうちの方でも少し迷ってしまうかもしれません。しかし、「水のかさ」の問題を解くためには、これらの単位を正しく変換することが求められます。
じつは、液体の量を表すこれらの単位は、基本となる単位「リットル」に、「デシ」と「ミリ」がついてバリエーションを増やしたもの。
「d(デシ)」は、そもそもが「10個に分ける」を意味する言葉です。つまり、「1L=10dL」が意味するのは、「1Lを10個に分けると1dLになる」ということ。同じように、「m(ミリ)」は「1000個に分ける」という意味なので、「1L=1000mL」は「1Lを1000個に分けると1mLになる」ということなのです。
単位の苦手を克服するには、ただ暗記するのではなく、このように「そもそもの意味」に返ってしっかり理解することが大切。言葉の意味と結びつけることで、記憶にも残りやすくなるはずです。
2. 日常生活との関わりが深い「お金の計算」に関する問題
<第2問>代金を計算しよう
次の文章を読んで、アメ1コとクッキー1コを組み合わせた代金を答えましょう。
アイスとアメとクッキーが1コずつあります。
これらを組み合わせた代金は、下のようになっています。
【1】アイス、アメ、クッキー:230円
【2】アイス、クッキー:190円
【3】アイス、アメ:160円
2問目は、日常生活との関わりが深い「お金の計算」に関する問題です。この問題を解くにはまず、それぞれの文章を式にして並べてみましょう。
【1】アイス+アメ+クッキー=230円
【2】アイス+ クッキー=190円
【3】アイス+アメ =160円
【1】と【2】を比べるとアメの値段が、【1】と【3】を比べるとクッキーの値段がわかりそうですね。
【1】の230円と【2】の190円の差がアメの値段ですから、
アメの値段は、230円−190円=40円
同じように、【1】の230円と【3】の160円の差が、クッキーの値段ですから、
クッキーの値段は、230円−160円=70円
よって、アメ1コとクッキー1コを組み合わせた代金は、
40円+70円=110円 になります。
3. 状況を整理しながら解く「時間」に関する問題
<第3問>起きた時間が早い人から順にならべよう
次の文章を読んで、起きた時間が早い人から順にならべましょう。
朝起きた時間について、はなさん、こうきさん、たおさん、めぐみさんは下のように話しています。
はなさん:たおさんが起きる15分前に起きました。
こうきさん:めぐみさんが起きた15分後に起きました。
たおさん:こうきさんが起きる10分前に起きました。
めぐみさん:はなさんが起きた10分後に起きました。
この問題を解くには、自分で具体的な時刻をあてはめて、ひとりずつ状況を整理していくのがよいでしょう。
たとえば、はなさんが起きた時間を仮に7時とすると、はなさんの話から、たおさんは7時15分に起きたことがわかります。また、めぐみさんの話から、めぐみさんは7時10分に起きたことがわかります。こうきさんが起きたのは、めぐみさんが起きた15分後ですから、7時25分ですね。
4人の起きた時間を整理すると、以下になります。
はなさん:7時
こうきさん:7時25分
たおさん:7時15分
めぐみさん:7時10分
よって答えは、はなさん→めぐみさん→たおさん→こうきさん です。
「文章題」に苦手意識をもたないために
今回は、お子様がつまずきやすい「水のかさ」「お金の計算」「時間」を扱う文章題をご紹介しました。
単純な計算問題とは異なり、問題文を読んで自分で状況を整理し、イチから式を立てなければならない文章題は、「速く解くためには邪魔」「ひっかけ問題ばかりでイヤ」と、多くの子どもたちから敬遠されているのが現実です。しかし、前回の連載でもお伝えしたように、受験の場面では、算数に限らず、問題文の長いものが多く出題されています。文章題に苦手意識をもつことは、ほかの科目の成績にも悪い影響を与えかねないのです。
子どもの文章題への苦手意識を取り除くために、おうちの方にぜひ覚えておいていただきたいことがひとつあります。それは、「速く解くことに価値を置きすぎない」ということ。文章題を解く上で大切なのは、「速く答えを出すこと」ではありません。
むしろ、答えを出すまでの、「文章を読み、必要な要素を抜き出し、考えて式を立てる」というプロセスのほうが大切なのです。このプロセスはあらゆる問題解決の基本で、文章題に取り組むことで得られる問題解決能力は、将来にわたってお子様の役に立つ財産となるはずです。
今回ご紹介した問題が、「自分の頭でじっくり考えること」の大切さや楽しさに気づき、文章題への意識を変えるきっかけになれば幸いです。
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■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧
第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方
第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない
第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題
第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法