教育を考える/知育 2020.1.11

【小学生向け】日本地図の覚え方5選! 歌、語呂合わせ、アプリ、そして……

編集部
【小学生向け】日本地図の覚え方5選! 歌、語呂合わせ、アプリ、そして……

小学校低学年~中学年のお子さんにぴったりな、日本地図の覚え方をご紹介します。

47都道府県の名前と位置を完全に暗記している人は、大人でも多くないかもしれませんね。47個ともなると、意識して練習しなければ、なかなかすべての都道府県名を暗記できるものではありません。

子どもの場合、地図の学習は小学校中学年から始まります。もちろん、都道府県の名前・位置はテストに出されるため、暗記の練習をしなければなりません。

日本地図はどうすれば覚えられるのでしょうか? 語呂合わせや、白地図への書き込みなど、日本地図の効果的な覚え方を5つご紹介します。

日本地図の覚え方1:歌を聴く&歌う

日本地図の効果的な覚え方としては、まず、「歌」を聴いたり歌ったりすることが挙げられます。

日本地図をただ眺めているだけでは、なかなか覚えられるものではありません。脳科学者の茂木健一郎氏によると、「さまざまなモダリティから働きかけるほうが、記憶は定着しやすい」のだそう。モダリティとは、視覚や聴覚といった感覚のこと。つまり、見るだけではなく、情報を音として聴いたり、声に出して読んだりするほうが、暗記しやすいのです。脳科学者の中野信子氏も、複数のモダリティを使うことの効果を以下のように述べています。

人間は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という五感を介して脳に情報を送り、記憶や学習、判断などの処理をしています。長期間しっかり覚えるには、五感をしっかり働かせるのもひとつの手段。働かせる感覚器官が多ければ多いほど、記憶は強化されやすく、長期間にわたって残りやすいとされています。

(引用元:StudyHacker|記憶には3つのプロセスがある――。脳科学的に理にかなった「最強の記憶法」【中野信子『カリスマの言葉』第1回】 太字による強調は編集部が施した)

複数のモダリティを使うほうが、記憶が定着しやすいため、ただ日本地図を眺めるよりも、都道府県の名前と位置を歌にしたものを聴くほうが効果的なのです。そして、単なる情報の「読み上げ」ではなく「歌」が効果的なことは、認知心理学を専門とする清河幸子教授(名古屋大学)らの実験で明らかになりました。2014年の研究発表によると、被験者は以下のグループに分けられ、単語の暗記をテストされたそう。

  • 単語を見せられるだけのグループ
  • 単語を見せられつつ、単語の読み上げ音声を聞かされるグループ
  • 単語を見せられつつ、童謡「ふるさと」をもとに単語で作った「替え歌」を聞かされるグループ

 
テストの結果、「見るだけ」「読み上げだけ」のグループに比べ、「替え歌」グループの正答数が有意に多かったそうです。音声情報は、メロディつきのほうが、より記憶に残りやすいのですね。

そして、聴くのに加え、自分で口に出してみると、さらに効果が高まります。奈良県で毎年開催されている「記憶力日本選手権大会」で複数回優勝した池田義博氏も、「口に出すとリズムや韻で覚えられる」と話しているほどです。

つまり、日本地図を覚えるには、都道府県の名前&位置がわかるような歌を聴き、自分でも歌ってみるのが効果的というわけですね。では、具体的にどのような歌がよいのでしょうか。

おすすめなのが「日本列島どっこいしょ ~47都道府県うたい込み~」。「温泉ほかほか北海道、おじさんのぼせて青森県……」という具合に、コミカルな歌詞を通じて、47都道府県を北から南へたどっていきます。何度も聞いて、歌っているうちに、全ての都道府県名と大体の位置が把握できるようになるはずです。

「日本列島どっこいしょ」は、ダウンロードで購入できます。気軽に購入できる価格なので、日本地図の効果的な覚え方を探している人は、試してみてはいかがでしょうか。

【小学生向け】日本地図の覚え方5選2

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日本地図の覚え方2:語呂合わせを考える

日本地図の覚え方としては、「語呂合わせ」も挙げられます。暗記の定番ですね。

脳科学者の樺沢紫苑氏によると、記憶を「強化」する方法としては、以下の2つが挙げられるそう。

  • 維持リハーサル:何度も繰り返して覚える。
  • 精緻化リハーサル:情報と情報を組み合わせ、覚えやすくする。

 
そして、池田義博氏によると、効率的な「精緻化リハーサル」のほうを採用するべきなのだそうです。

「精緻化リハーサル」の代表が、語呂合わせ。有名な例が「鳴くよウグイス平安京」ですね。「794年、平安京遷都」という単純な情報だけだと覚えにくいですが、794という数字を「鳴くよ」という語呂合わせにし、さらに関連して「ウグイス」という言葉をつけ加えることで、覚えやすいように情報を加工しているのです。

日本地図を語呂合わせで覚えようとするとき、大事なのが、語呂合わせは自分で考えること。「精緻化」は、他人にやってもらうのではなく、自分でやったほうが、効果が高いためです。認知心理学を専門とする豊田弘司教授(奈良教育大学)の論文「記憶に及ぼす自己生成精緻化の効果に関する研究の展望」によると、「実験者提示精緻化」よりも「自己生成精緻化」のほうが、記憶テストの成績が高くなる傾向があるのだそう。

なので、語呂合わせはできるだけ自分で作ってみましょう。たとえば、九州を構成する7つの県の名前を覚えるなら、語呂合わせはこのような感じでしょうか。

九州には、長さが足りないなあ。でも、宮殿で熊がカゴに入れた大福を食べてる。いいところだね。

長さが→長崎県・佐賀県
宮殿→宮崎県
→熊本県
カゴ→鹿児島県
大福→大分県・福岡県

語呂合わせを作るときに意識したいのが、単語をブツ切りにするのではなく、できるだけ関連性のある文にすること。認知心理学を専門とする高橋雅延教授(聖心女子大学)が1987年に発表した論文によると、被験者を「提示される語を用いて文を生成する」グループと「自由連想語を産出する」グループに分けたところ、前者のほうが多くの単語を思い出せたのだそう。つまり、暗記したい情報から連想して「カゴ」「大福」という言葉を考えて終わるのではなく、複数の言葉を組み合わせて文を作り出すほうが、より記憶しやすくなるわけです。

語呂合わせを自分で考えるのは頭を使いますし、やや時間がかかりますが、そのぶん効果を発揮します。日本地図の覚え方として効果的なので、遊び感覚でお子さんといっしょにやってみてください。

【小学生向け】日本地図の覚え方5選3

日本地図の覚え方3:アプリで遊ぶ

日本地図の手軽な覚え方としては、ゲームアプリで遊ぶというものもあります。3つのアプリケーションをご紹介しましょう。

おとなも知りたい社会科 ぐりぐり都道府県

「おとなも知りたい社会科 ぐりぐり都道府県」(iOSAndroid)は、大人も子どもも楽しめる、かわいらしいゲームアプリです。

「ぐりぐり都道府県」では、ある都道府県の形&名前が「お題」として提示されるので、その都道府県を日本地図の正しい位置に移動させます。正解するともらえる「コイン」は、ゲーム内のショップで家具を購入するのに使用でき、買った家具は「しろいくまるーむ」に配置できます。部屋のインテリアを充実させたい、部屋に住む「しろいくま」の反応が見たい……という気持ちになり、何度も遊びたくなりますね。

あそんでまなべる 日本地図パズル

「あそんでまなべる 日本地図パズル」(iOSAndroid)は、グリーン&グレーの色調で統一されたデザインが目を引く、クールなゲームアプリです。

「日本地図パズル」では、ジグソーパズルのように、47個の都道府県ピースを日本列島の正しい場所に配置していきます。「トレーニング」「ベーシック」「エキスパート」という3つの難易度があるため、「都道府県の名前も位置もほとんど覚えていない……」という人でも、徐々に実力をつけていくことができます。47個のピースをはめ終わるのに要したタイムが記録されるので、自己新記録を更新したり、ランキングでほかのユーザーと競ったりといった楽しみ方も可能です。

地図エイリアン~都道府県を記憶せよ~

「地図エイリアン~都道府県を記憶せよ~」(iOS)は、カラフルなキャラクターとポップな音楽が特徴的な、大人気ゲームアプリです。

「地図エイリアン」では、軽快なBGMに合わせ、提示された順番どおりに都道府県をタップしていきます。47種類のキャラクターたちが躍動しながら都道府県名を言ってくれるので、視覚と聴覚の両方から情報を得られます。「地図エイリアン」は2015年、世界中から寄せられる子ども向けデジタル作品を審査する「デジタルえほんアワード」に入賞しました。

アプリケーションで楽しく遊ぶのも、子どもにおすすめな日本地図の覚え方ですよ。

【小学生向け】日本地図の覚え方5選4

日本地図の覚え方4:パズルで遊ぶ

日本地図型のパズルで遊ぶのも、覚え方としては定番ですね。

上で紹介したゲームアプリケーションと異なるのは、手と指で直接、立体物に触れられる点。都道府県の形に成形されたピースを手にとってみれば、「端がギザギザしてる」「細長くて折れそう」など、多くの気づきがあることでしょう。また、ゲームアプリと違って液晶画面を凝視する必要がないため、目を痛めにくいのもメリットです。

それに、日本地図パズルで遊ぶと、地理の知識を身につけられるだけでなく、空間認識能力も鍛えられるかもしれません。子どもの空間認識能力を研究するジェイミー・ジロー助教授(米ヴァージニア大学)らが2015年に発表した論文によると、パズル・ブロック・ボードゲームで週に6回以上遊ぶ子どもは、空間認識能力を測るテストにおいて、ほかの子どもよりも成績がよかったのだそう。

なお、空間認識能力とは、三次元空間においてモノの位置や方向を正確に認識できる能力。空間認識能力が高いと、地図を正しく読み取って現在地と向かうべき方向を理解できたり、球技で活躍できたりといったメリットがあります。空間認識能力が低くて困ることはあっても、高くて困ることはないといってよいでしょう。

さて、日本地図パズルとしては、1997年に誕生した定番アイテム「くもんの日本地図パズル」をおすすめしたく思います。落ち着いた色味で、ピースおよび土台に記載されている情報が最低限なので、「ゴチャゴチャしたデザインは嫌」というお子さんは気に入ってくれるはずです。

「くもんの日本地図パズル」の特徴は、1つの土台に対し、2種類の都道府県ピースがついてくること。8種類に色分けされた易しめの「基本ピース」と、全てベージュに統一された「発展ピース」です。まずは「基本ピース」で地域別に都道府県の位置を覚えたら、「発展ピース」に挑戦しましょう。

子どもでも大人でも夢中になってしまうパズルは、日本地図の覚え方として最適です。

【小学生向け】日本地図の覚え方5選5

日本地図の覚え方5:白地図を埋める

ここまでご紹介した覚え方で日本地図に親しみ、都道府県の名称と位置をだいたいインプットしたら、今度はアウトプットをしてみましょう。樺沢紫苑氏によると、インプットとアウトプットの「黄金比」は、3対7なのだそう。「最も記憶に残りやすく、最も自己成長につながりやすい」割合とのことです。つまり、インプットに20分使ったら、アウトプットを40分以上やるべきなのですね。

「黄金比」を提唱するにあたって樺沢氏が参照したのが、コロンビア大学で教育心理学を担当していたアーサー・ゲイツ教授(1890~1972)の研究です。1917年に出版されたゲイツ教授の博士論文 “Recitation as a Factor in Memorizing(暗記における一要素としての暗唱)” によると、カリフォルニア州のある学校における6~17歳の生徒を対象に、実験が行なわれました。実験では、生徒たちに特定の文字列を暗記させるため、2つのパートを設定。

「読み」パート:指定の文字列を、上から下まで順番に目で追う。文字列から目をそらしたり目を閉じたりして、暗唱できるかどうか試すのは禁止。
「暗唱」パート:指定の文字列を暗記できているか、上から順番に試す。思い出せなかったら答えを見てOK。

2つのパートを計9分間行なったあと、文字列をどれだけ暗記できているかテストしました。

ゲイツ教授の実験のポイントは、「読み」パートと「暗唱」パートの時間配分を変えたこと。これによって、インプットに相当する「読み」と、アウトプットに相当する「暗唱」が、記憶テストの結果に及ぼす影響を計ろうとしたわけです。

テストの結果はどうだったのでしょう? まず、意味を成さない音節を暗記させられた「無意味な情報」グループの場合、最低学年を除き、成績が高い順にインプットとアウトプットの割合を並べると、以下のとおりでした。

  1. 2対8
  2. 4対6
  3. 6対4
  4. 8対2
  5. 10対0

 
単純に、アウトプットの時間が長ければ長いほど、成績がよかったのです。

一方、人物の紹介文を暗記させられた「意味のある情報」グループの場合、学年によってばらつきがあったものの、平均すると以下のとおりでした。

  1. 4対6
  2. 2対8
  3. 1対9
  4. 6対4
  5. 8対2
  6. 10対0

 
最も成績がよかった「読み」と「暗唱」の比率は、4対6。次点が2対8でした。「無意味な情報」グループの結果と合わせて考えると、インプットとアウトプットの割合は、おおむね3対7程度がよさそうですね。いずれにせよ、アウトプットを意識して多く行なうことが重要なのは、間違いありません。

アウトプットの重要性がわかったところで、日本地図の話に戻ります。パズルやゲームアプリにはアウトプットの要素が含まれていますが、ここは白地図を使い、アウトプットのみに専念してみましょう。ノーヒントで47都道府県の位置・名前をどれだけ正答できるか試せば、実力がはっきりとわかります。

白地図の定番は、みくに出版の「新版 白地図・自由帳 日本地方別」および「新版 白地図・自由帳 日本全図」。1枚あたりのサイズがB4(257mm×364mm)と大きめで、書き込みやすいのが特徴です。

ゲームアプリで遊んだり、テレビを見たりして得た地域の情報を書き込むのもよいですね。みくに出版は、「白地図・自由帳」の使用例として、以下のようなものを挙げています。

  • 山や川などを書き込む。
  • 街の名前を書き込む。
  • 都道府県を色分けして塗る。
  • 行ったことのある都道府県を塗りつぶす。

 
日本地図の覚え方をいろいろ試したあとは、白地図でアウトプットをし、実力を確かめてみましょう!

***
日本地図の覚え方を5種類紹介しました。地理の暗記というと退屈そうですが、楽しく学べる方法がたくさんあると、おわかりいただけたはず。親御さんのほうが夢中になってしまうかもしれませんね。

(参考)
Gates, Arthur (1917), Recitation as a Factor in Memorizing, New York, The Science press.
茂木健一郎(2019),『学び効率が最大化するインプット大全』, サンクチュアリ出版.
茂木健一郎(2019),『脳HACK大全』, PHP研究所.
J-STAGE|記憶に及ぼす自己生成精緻化の効果に関する研究の展望
J-STAGE|記憶における精緻化様式の相違と精緻化対象についての検討
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コトバンク|モダリティ
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青山学院大学社会情報学部|替え歌による記憶の促進
ミライノ制作所|ぐりぐり都道府県
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みくに出版 Web Shop|白地図自由帳の使い方