夏休みといえば、海、山、プール、花火、お祭り、などなど……。子どもにとって楽しみな出来事が盛りだくさんです。でも小学生の夏休みは、ただ遊んで過ごすだけではありませんよね。各学校の方針にもよりますが、山ほど宿題を出されて頭を抱える親子も多いでしょう。
私たちの楽しい夏休みに影を落とす「夏休みの宿題」。その中でも、ドリルや課題の絵やアサガオの観察などは、やることがはっきりしているので比較的取り組みやすいですよね。問題は「自由研究」です。
テーマが「自由」であることは、一見やりやすそうですよね。決まりがなく、自分の好きなようにしていいのですから。しかし、人間は「自由」を与えられることで自分の可能性を広げすぎてしまい、目的を見失うものです。
ここでは、そもそもどうして夏休みの宿題に自由研究が欠かせないのか? 自由研究の意義とは? 自由研究は子どもたちにどんなメリットをもたらすのか? など、根本的な問題に向き合ってみましょう。
自由研究。昔も今もなぜあるの?
思えば、私たち大人が小学生のころから夏休みの宿題の定番だった「自由研究」。今もなお続いているということは、きっと子どもたちにとってメリットがあるはずです。
自由研究の歴史をたどってみると、1947年、戦後の教育改革の中で “ひとつの教科として” 定められたと記録されています。子どもたちの自発的な活動を促すことを目的としたものの、1951年には教科としての自由研究は発展的に解消されます。短命には終わりましたが、その後クラブ活動や学級会など、教科以外での活動において個々の興味や能力を伸ばし、育てるという方向へとシフトしたのです。
そして現代。2000年度から段階的に始まった「総合的な学習の時間」はすっかり定着してきました。地域社会や環境問題など、身近なテーマをもとに、子どもたちが主体的に学ぶことがねらいであり、これからの社会を生き抜くために必要なスキルや能力が育つことが期待できます。
夏休みの宿題のひとつである「自由研究」も同様に、子どもの自主性や問題解決能力を育てることを目的としています。ただし、教師の指導のもとで行われる「総合的な学習の時間」はグループ活動がメインであることに対し、夏休みの自由研究はたったひとりで進めなければなりません。
そこで期待できるのは、「個」の力を高められるということ。子どもが自分ひとりの力で最初から最後まで何かを完成させるという経験と、それにより得られる達成感は何ものにも変えがたいと思いませんか?
自由研究は、真剣に取り組めば取り組むほど確実に個人の能力が高まります。テーマを決める、計画を立てる、調べる、まとめる、これら一連の作業の過程で、何度か挫折や失敗、諦めることも学ぶかもしれません。しかし最後までやり遂げたとき、子どもの能力は飛躍的に伸びているはずです。
親になってわかる……“面倒な”自由研究
では、私たち親は、子どもの自由研究にどのように向き合えばいいのでしょうか。毎年毎年、夏休みが始まると「自由研究、なにをさせよう……」と悩む親御さんも多いはず。でも、ちょっと待ってください。その時点でもう “子どものための自由研究” ではなくなってしまっています。
私たち親が考えがちなのは
- すぐに手に入る素材や材料
- あまりお金がかからない
- 遠出しなくても良い
- 家を汚さない
など、大人の都合を優先させた条件ばかり。これでは子どもの自主性や独創性の芽を摘んでしまいます。
中学受験専門塾の代表である矢野耕平氏は、自由研究における親の認識についてこう指摘しています。
親が考えなければいけないのは、子が「期限に間に合うよう、自由研究を終わらせる」ことではなく、子が「自由研究を通じて、自らが探究心を醸成していく」ように導くことだ。
(引用元:PRESIDENT Online|夏休みの自由研究で“親のレベル”がわかる)
昨今、世の中に溢れている自由研究のためのキットやネタ本、ネットのまとめ情報を否定するわけではありません。しかし矢野氏は、それらのものの多くは “結論ありき” で作られているため、その結論に子どもたちを誘導するような内容であると指摘します。
自由研究を楽しめる子どもは、本来どの子どもにも備わっている探究心や好奇心を思う存分発揮し、結果としてオリジナリティーにあふれた自由研究を完成させることができるのです。その環境を用意してあげるのは親の役目。ほんのちょっとの準備と、必要な手助けだけをすれば、子どもは親が思う以上に完成までの過程を楽しみながら進めていけるはずです。
結論! 自由研究は子にも親にもいいことだらけ!
自由研究はちょっと面倒。しかも、本気で取り組むほどかなりの時間と労力を費やさなければなりません。それがわかっているからこそ、大人は子どもに「楽なテーマ」や「簡単に仕上がるもの」や「明確な答えが用意されているもの」を与えたくなってしまいます。でも少し立ち止まって考えてみると、まだ小学校低学年の子どもが、大人が望むような完璧な結果を出すことは難しいとわかるはずです。
それならばいっそ、たっぷりと時間がある夏休みを絶好の機会だと考えて、親子で一緒に楽しみながら自由研究に取り組んでみませんか?
「百ます計算」「陰山メソッド」でおなじみの陰山英男先生は「重要なところは子どもに委ねながらも、保護者が上手に応援し、一緒に楽しむという観点が必要」と述べます。
子どもたちが独自で考え、子どもだけの力でやっていくという考えは一度横に置き、親子で研究の楽しむのです。そうした経験が土台となり、中学校や高校に行ったとき、今度は子どもたちが自分の好奇心によって、大人ではもう提起できないような新しい化学の挑戦をはじめていくことが増えてくるでしょう。
(引用元:学研キッズネット Kidsnet for Parents|夏休み特別編 その1 自主的に自由研究に取り組んでほしい)
実際に、陰山先生の教え子の中にも、夏休みの自由研究がきっかけとなって将来の進路につながった子たちも多いそう。このように、自由研究は子どもの自主性や問題解決能力を高めることはもちろん、自分の中に眠る好奇心の対象を発見したり、将来の夢につながったりと、「夏休みの宿題」という枠を超えた可能性に満ちているのです。
***
親の立場になると「自由研究ってちょっと面倒……」とため息が出てしまいますが、子どもは密かに「前から気になっていたあれについて調べてみよう!」「ずっと作りたかった超大作に挑戦しよう!」とワクワクしているかもしれません。その好奇心を否定せず、うまく引き出して一緒に楽しむことこそが、親になった私たちにとっての「自由研究の醍醐味」なのです。
■子どもの“やりたい”を引き出す! 夏休みの自由研究 コラム一覧
第1回:自由研究ってどうしてあるの?
第2回:自由研究のテーマ選びがグンと楽になるポイント
第3回:自由研究のまとめ方のコツ
第4回:自由研究を1日で仕上げる秘訣
(参考)
ベネッセ 教育情報サイト|夏休みの課題の定番! 自由研究を通して得られる力とは?
PRESIDENT Online|夏休みの自由研究で“親のレベル”がわかる
学研キッズネット Kidsnet for Parents|夏休み特別編 その1 自主的に自由研究に取り組んでほしい