時間になっても宿題をやらない。しゃべってばかりで宿題に手がつかない。宿題を始めてもすぐに集中が途切れる。ドリルをやらせてみても間違えてばかり……。
いくら計画を立てても、子どもが順調に勉強してくれることばかりではないでしょう。そんなとき親御さんは、思わずイライラして小言を言ってはいませんか? 良くないと分かってはいながらも、つい叱ってしまうものですよね。
では、子どもの学習意欲を引き出すために、親はどのような声かけをすればよいのでしょうか。
我が子への声かけ、皆はどうしてる?
母親が子どもの勉強にどのようにかかわっているかを調べたアンケート調査があります(2011年9月、ベネッセ教育研究開発センターが実施)。
それによると、「勉強しなさい」と声をかけると回答した親は、小学校1年生~5年生で約85%。それより学年が上になるとその割合は減ってきますが、中学3年生でも75%の親が勉強するよう声をかけています。
勉強を促す声かけは、この先長く続くもの――。お子さんが今はまだ小学校低学年のご家庭でも、そう覚悟しておいたほうがよさそうです。
子どもへの声かけはなぜ大切なのか?
ただ、子どもに「勉強しなさい」と声をかけたところで、素直に宿題に向かってくれるとは限りません。そうなるとつい言ってしまいたくなるのが、「宿題やる時間でしょう!」「早く勉強しなさい!」といったセリフ。こんな時、本来ならどのように声をかければ良いのでしょうか。
その疑問を解消する前に、なぜ子どもへの声かけが大切なのかを確認しておきましょう。子どもは自分の意志だけで勉強するのが難しいからだ、という理由はすぐに思い浮かびますね。実はもっと大事な理由があります。それは、親からの声かけが、子どもの学習意欲を引き出すから。
子育て心理学協会代表理事の東ちひろ氏は、親が子どもに声をかけると、子どもは親に認めてもらえていることを感じて自信ややる気を持ちやすくなるのだと言います。そして、特に小学校1~3年生の場合は、以下のような姿勢で子どもに向き合うことが大切なのだそう。
素直なところが多く、おうちのかたに甘えたい年代。子供が自分からできたことはしっかりと認めたり思い切りほめたりしてください。そして、子供が求めるときにはゆっくり話を聞き、頭をなでる、ハグするなどのスキンシップをとって。おうちのかたの『あなたのことが大好きだよ』という気持ちが伝わると、気持ちが落ち着き前向きに勉強に取り組めます。
(引用元:進研ゼミ保護者通信|6月のやる気ダウンへの対処法 やる気アップの声かけバージョンアップ)
明るい雰囲気でポジティブな声かけをすれば、子どもの勉強意欲を引き出すことにつながります。逆に、否定的な声かけばかりをしていては、子どもは自信を失い、勉強のやる気もなくしてしまうもの。そう聞くと、お子さんへの声かけの仕方を改める必要性を感じる親御さんは多いかもしれませんね。
効果的な声のかけ方・具体例
では、具体的にどのような言葉で子どもに声をかければよいのでしょう。パターン別におすすめの声かけの言葉を紹介します。
子どもがなかなか宿題に取り掛からないとき
× 「いつまで遊んでるの! 早くやりなさい!」
○ 「いま何時かな。何時から宿題する? そろそろやろうか!」
東氏によれば、特に低学年の子どもの場合、時間感覚に欠けていて勉強時間であることを認識していない場合があるのだそう。子どもがなかなか宿題に取り組まないときは、「何時からやるのか」ということと、「今何時なのか」を確認したうえで、「宿題をやろう」と誘う声かけをすると良いでしょう。
宿題をちゃんとやったか確認したいとき
× 「ドリル終わったの?」「ちゃんとやったの?」
○ 「ドリル終わってないんだね。さあ、やっちゃおう!」
教育評論家の親野智可等氏は、「宿題をちゃんとやったか?」という質問は意地悪な質問だ、と言います。それは、親が子どもにそう尋ねるとき、やってないことに薄々気付いていながらあえて質問していることがほとんどだから。宿題をやっていないことが親に知られれば叱られてしまう、ということを子どもはわかっています。ですから「宿題やったよ」と嘘をついてしまう子どももいるでしょう。
子どもが宿題をやっていないな、ということに気づいたら、子どもがやるべきことは何なのかをシンプルに伝えましょう。質問形を使う必要はありません。
勉強中、ダラダラしていて集中できていない様子のとき
× 「ボーッとしていないで真面目にやりなさい!」
○ 「まずは3問だけやっちゃおうか」「今宿題やっておけば、あとでいっぱい遊べるよ」
大人でも、難しい問題や苦手な問題が続けば、やる気は低下し集中力も途切れてきますよね。子どもも同じです。そんなときは、量を小分けにして進めることを提案してみましょう。子どもが3問だけ解いたら、親がチェックしてあげます。たった3問でも済ませられればちょっとした達成感が得られます。子どもはその先の3問にも手を出しやすくなるでしょう。
また、「宿題が終わればいいことがある!」という期待を子どもに抱かせて、モチベーションをアップさせるのも効果的です。遊びでもおやつでもいいので、子どもの喜びそうなことを用意して、やる気と集中力を引き出しましょう。
勉強のミスを指摘するとき/
× 「この問題、間違っているから直して!」「もっと字を丁寧に!」
○ 「この問題はちゃんとできているね。じゃあ、こっちの問題はやり直してみようか」
「どうしてこんなことも分からないの」「なんできれいに書かないの」などと否定的な言葉ばかり言わないようにしましょう。子どもは不愉快な気持ちになって、勉強を嫌いになってしまうかもしれません。逆に、勉強で褒められれば勉強が楽しいと思えるようになり、どんどん勉強に前向きになります。ですから、ミスを指摘する前に、まずは良いところを探して褒めましょう。これについて、親野氏は次のように述べています。
ただ漠然と見ているだけではよいところは見つかりません。漢字の書き取りなら、まずは上手に書けている字を探して、「これとこれはうまく書けているね」とほめます。たくさんほめてから、「じゃあ、こっちをちょっと直してみようか」と汚い字を直させる。そういう順番が大事なのです。算数のドリルなら、まず正解を見つけてハナマルをつけ、「式もきちんと書けたね」などと言ってほめる。そのうえで「じゃあこれとこれを直そうか」と言うと子どもは進んでやり直すでしょう。
(引用元:ベネッセ教育情報サイト|小学生の宿題、親の関わり方【前編】子どもの意欲を引き出す言葉と方法)
宿題が少ししか進んでいないとき
× 「まだこれしか進んでないの?」
○ 「量が多くて大変だけど、進んでいるね」「さすが、頑張っているね」
計画通りにスムーズに宿題が進まないこともあるでしょう。そんなときでも、「子どもが宿題に取り組もうとしている努力」は認め、褒めてあげましょう。
例えば、親にしてみれば「ノートを出しただけで全然進んでない!」というような場面も、「宿題をやろうと思ってノートを出したんだね」と評価してあげることはできるはず。そういうささいな場面でもいいので見つけて褒めてあげると、「あなたのことをちゃんと見ているよ」というメッセージになります。子どもはやる気がでて、自分から宿題をやるようになるでしょう。
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親が子どもに勉強を促すとき、強制や命令、否定のニュアンスが込められた言葉をつい言ってしまいがちですが、それでは子どもはやる気にはなりません。まずは親が子どもの様子をよく見てあげましょう。そして、子どもにやるべきことに気づかせ、自分からやる気になるような声かけをすることが大切です。
共働きで、親子で一緒に過ごす時間をそう長くは取れないご家庭では、子どもの様子をじっくり見てあげられない悩みをお持ちかもしれません。そういうご家庭でも大丈夫です。一緒に居られる時間が短いからこそ、子どもにかける言葉の選び方がより大切。前向きな言葉をかけることで愛情を伝えれば、子どもの自信ややる気につながっていくでしょう。
■ 小学生 夏休みの宿題バッチリ大作戦! コラム一覧
第1回:夏休みの宿題を早めに終わらせる方法とは?
第2回:夏休みの生活リズムの整え方
第3回:夏休みの宿題がサクサク進む計画表の作り方
第4回:子どものやる気、どう維持する?
第5回:宿題をする子どもに、親はどんな言葉をかけるべき?
第6回:宿題が終わらない! 遅れた宿題の挽回法とは
第7回:崩れた生活リズムのリセット法
(参考)
ベネッセ教育情報サイト|「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方
進研ゼミ保護者通信|6月のやる気ダウンへの対処法 やる気アップの声かけバージョンアップ
ベネッセ教育情報サイト|小学生の宿題、親の関わり方【前編】子どもの意欲を引き出す言葉と方法
ベネッセ教育情報サイト|小学生の宿題、親の関わり方【後編】宿題に関するお悩みに答えます!
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