私たち親世代が小学生のころ、勉強のできる子は体育の時間も活躍していませんでしたか? もしくは、成績優秀な生徒会長が〇〇部の主将だったという記憶があるのではないでしょうか。
「学習能力」と「運動能力」のふたつの力には、実は関係性があるのです。このことは、最近のさまざまな研究で証明されています。
今回は、「学習能力」と「運動能力」の関係についてみていきましょう。
科学的に証明されている「運動が学習成績に与えるプラスの影響」
文部科学省の「全国学力・学習状況調査」の結果と、「体力・運動能力調査」の結果を重ねてみると、運動能力が高い子どもは、学習能力も高いという結果が出ています。また、学習成績が高いほど、運動に取り組んでいる子どもの割合が高いそうです。
この、運動が学習成績に与えるプラスの影響について、『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者、ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士は、以下のように話しています。
「ニューロンの数を増やすために最も効果が期待できるのは、運動です。さらにものを覚えたり認知能力を高めるために必要な神経結合を増やしたり、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった思考や感情にかかわる神経伝達物資の分泌を促す効果も、運動にはあります」
(引用元:PRESIDENT Online|脳細胞が増える運動「3つの条件」)
またいくつかの研究では、有酸素運動トレーニングを行うことで、記憶をつかさどる海馬が大きくなることや、継続的な運動が脳の認知能力を強化するということが明らかにされている。
かけっこやボール遊びで脳が活性化する
では具体的に、子どもにどんな運動をさせたら脳に良い影響があるのでしょう?
レイティ博士によると、脳を活性化させるには、一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動がおすすめだと言います。
- 早歩きでのウォーキング、ランニング
- かけっこ、ボール遊び、ダンスや体操など、本人が楽しいと感じる運動
- ヨガのポーズや空手の形などの、自らの動きを意識するような運動
しかし、サッカーやバスケットボールなどのチームスポーツは避けたほうが良いのだそう。その理由は、チームスポーツは、運動に苦手意識を持っている子にとって体を動かしにくいので、(頭を良くする運動の観点からは)競争や勝負を排除したほうが良いからです。
走り回る子どもに、ついついイラっとしてしまうことが多いですが、体を動かすことで、脳が活性化してくれるならば……と、今日から少し多めに見てあげられるかもしれませんね。
運動後は思考力や集中力が急激にアップ!
とはいえ、運動をしたからといって、急に成績が上がるわけではなく、運動はあくまで、脳が学習するための準備なのです。しかし、運動後すぐに学習することで、その効果を得ることができます。
大阪教育大学教育学部の宍戸隆之准教授は、マラソンやなわとびなどの運動をしたあとの子どもたちに算数のテストを毎日行いました。すると、運動せずにテストを受けた場合よりも、運動したあとのテストの方が計算スピードと正答率が上がったそうです。また、運動中の心拍数が高い(よく体を動かした)子どもの成績が、より高くなるという結果がでました。
これは、運動を終えたときに脳の血流が増し、思考力や集中力が急激に高まるからと言われています。そしてもうひとつ、朝に体を動かすことでより効果があるそう。ぜひ、毎朝親子でランニングやヨガをしたあとに、心拍数を上げてから勉強をしてみましょう。
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レイティ博士は、「脳を最高の状態に保つには、体を精一杯働かせなければならない」と言っています。子どもだけでなく、私たち大人も「脳を最高の状態」で保っていたいものですね。
(参考)
PRESIDENT Online|脳細胞が増える運動「3つの条件」
学研キッズネット|第6回 スポーツができる子は勉強もできる!?
大阪教育大学|スポーツすると頭がよくなるってホント?
PRESIDENT Online|なぜ頭のいい人は「運動」が好きなのか