親世代が子どもだった頃と、いまを生きる子どもたちとでは、求められている力が変わってきていることを知っていますか? 現代の子どもたちに求められているのは、「思考力」「判断力」「表現力」です。今回は、この3つの力はどんなものなのか、そして伸ばすためにはどうすればいいのかについてご紹介しましょう。
親世代と子ども世代で変わった「求められる力」
親世代が子どもだった20~30年前と現代の子どもたちでは、求められる力が以下のように変わってきています。
【20~30年前の子ども】
- 詰め込み教育によって、先生の説明を聞いてとにかく覚えるための暗記力が求められた
- 男性が働き、女性は家事や育児をするという性別による役割分担が浸透しており、男性は偏差値が高い大学に進むことを求められていたものの、女性が進学することや働くことに対しては理解が乏しかった
【現代の子ども】
- 2020年度から大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」に変わり、これまでの知識・技能だけでなく、思考力・判断力・表現力が評価されることになった
- インターネットや人工知能の発達により、機械化・自動化できる仕事が増えていくことが予想されるため、今後はコンピューターにはできない五感を使った情報処理能力や表現力、状況に合わせた判断力が求められる
いま求められる「思考力」「判断力」「表現力」とは?
いまの子どもたちに求められている「思考力」「判断力」「表現力」とは、具体的にどのような力なのでしょうか?
思考力とは物事について考える力のことです。一般社団法人教育デザインラボ代表理事で都留文科大学特任教授の石田勝紀氏によると、人は「自分の言葉で語れること」「疑問に思うこと」「手段や方法を思いつくこと」のいずれかをしているときに「考えている」という状態になるといいます。
考えることによって、知識のみでは得られない応用力を養うことにもつながるため、授業で問題を解く際にはもちろん、何か新しいことにチャレンジしたり、自分の思いを相手に伝えたりする際にも活用できます。
判断力とは、文字通り判断をする力ですが、この力がないと、すぐに他人の意見に流されたり、善悪の判断がつかずに不本意な事態に巻き込まれてしまったりすることもあります。
特にインターネットが普及して情報があふれている現代では、どの情報が正しいのかを的確に判断する力が必要です。子どもの心を育む家庭教育の専門家・田宮由美氏は、決断力について次のようにおっしゃっています。
「自分で決める、決断する」という力は、自分の人生を自主的に歩むためには、大切な力のひとつです。 親がいつも指示を出し、子供をコントロールしてると、「自分で考え、決断する」という学習場面がありません。ですので更に決める力が低下し、親はまた指示を出してしまうという悪循環が続きます。
(引用元:All About|優柔不断な子供の決断力を高める!親の言葉のかけ方)
判断力は子どもの頃から伸ばすことが必要な力のひとつです。
精神科医で受験指導の権威としても知られている和田秀樹先生は、表現力について「自分の考えを筋道立ててわかりやすく説明する力」と話しています。この力は、プレゼンテーション力とも言い換えることができるでしょう。
たとえば子どもが何かを欲しがっているとき、「どうしても欲しいから買って!」と言われても、親はなかなか納得できませんよね。しかし、子どもがなぜそれが欲しいのか、それを手に入れることでどんなメリットがあるのかなどを説明し、それに納得できたら「じゃあ買ってもいいかな」と思うのではないでしょうか。
表現力があれば、自分の希望に賛同してくれる人や協力してくれる人を得ることができるのです。そうした力は、将来仕事をする際はもちろん、何らかの交渉をする際に必ず役立つでしょう。
「思考力」「判断力」「表現力」をつけるためのポイント
子どもに「思考力」「判断力」「表現力」をつけるために、家庭では以下を意識してみましょう。
子どもが何か質問をしてきたら「あなたはどう思う?」と質問返しをしましょう。そうすることで、子どもは「自分はどう思っているのだろう?」と考えるようになり、思考力が高まります。
この際、「どう思う?」という質問返しに子どもが答えられなかったとしても、問題はありません。前出の石田氏いわく、答えられなくても質問されることで自動的に頭が考え出すため、無理に答えを求める必要はないそうです。
その日に着る洋服や食事のメニューなど、何でもいいので子どもに「どっちがいい?」と聞く習慣をつけましょう。選択を繰り返すことで、徐々に決断力が養われていきます。ポジティブ育児研究所・代表の佐藤めぐみ氏によると、子どもの意見を聞く際は「なるほど!」と興味を持って受け入れてあげることが大切だそう。
佐藤氏いわく、意見を受け入れながら、子どもに「人それぞれ意見が違っていて当たり前」「違っているからこそおもしろい」という感覚を伝えることが判断力につながっていくといいます。
前出の和田先生は、表現力を伸ばす方法として、小学校で習う漢字すべてを4年生までに習得することをすすめています。たくさんの漢字を覚えることで、ボキャブラリーが増えていき、言葉で表現することがスムーズになっていくのだそう。
また、何かをテーマにして子どもに簡単な説明文を書かせ、より具体的な記述になるように保護者が添削してあげることも表現力アップに有効だと言います。
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思考力、決断力、表現力は、子どもとの普段のやりとりを少し工夫するだけでも伸ばすことが可能です。3つの力を伸ばすためのポイントを押さえて、子どもがたくましく生きていくためのサポートをしましょう。
文/田口 るい
(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの思考力が確実にアップする! “考える癖”をつける、3つの方法
Z会|2021年度以降の新しい大学入試で問われる「思考力・判断力・表現力」とは?_2016.1
All About|優柔不断な子供の決断力を高める!親の言葉のかけ方
All About|判断力、決断力がある子って何が違う?
ダイヤモンドオンライン|子どもの発想力・自立心の鍛え方(6)「お手伝い」させる~「係」として任せ不便を忍ぶ
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