教育を考える 2019.9.22

「ハグ」で学力が上がります。幸せホルモン「オキシトシン」の効果がスゴかった

編集部
「ハグ」で学力が上がります。幸せホルモン「オキシトシン」の効果がスゴかった

かつては、泣いている赤ちゃんや子どもをすぐに抱こうとすると、「抱きぐせがつく」という考え方が一般的でした。しかし、最近では、「たくさん抱っこしてあげましょう」という風潮に変わってきています。

こうした変化のきっかけのひとつとなったのは、抱っこなどのスキンシップにより学力が上がることが知られてきたこと。ある調査では、親からのスキンシップが多かった子どもほど学力が高いという結果が出ているのです。

その秘密は、親子のスキンシップなどにより分泌されるホルモン「オキシトシン」にあります。じつは、オキシトシンに期待できる効果は学力アップだけではありません。今回は、オキシトシンが子どもにもたらす効果と、オキシトシンを分泌させる方法をご紹介しましょう。

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出産や授乳を助ける「オキシトシン」

■そもそも、ホルモンって何?

「ホルモン」とは何か知っていますか? 「産後はホルモンバランスが崩れる」「更年期は女性ホルモンが減少する」などと日常的に使われている言葉ですが、意味をきちんと理解している人は少ないかもしれません。

ホルモンとは、体の働きを常に一定の状態に保つための化学物質です。体の内外の環境変化に応じ、内分泌腺でつくられ、血液に入って全身を巡ります。そうして、脳から各器官への指令を伝える、いわゆるメッセンジャーのような存在です。

なお、ホルモンには複数の種類があり、つくられる内分泌腺も役割も異なります。たとえば「インスリン」というホルモンがありますが、それがつくられるのは「すい臓」という内分泌腺で、役割は「糖分の量を下げるよう関係器官に指令を送ること」です。

■ホルモンのひとつ「オキシトシン」とは?

では、「オキシトシン」とはどんなホルモンなのでしょうか。オキシトシンがつくられるのは「脳下垂体」という内分泌腺で、役割は「分娩を促すために子宮を収縮させたり、母乳を出させるために乳腺の筋肉を収縮させたりすること」。ギリシャ語で、「早く生まれる」を意味する言葉が語源となっています。

しかし、オキシトシンが分泌されるのは、分娩や授乳のときだけではありません。じつは、親子がスキンシップを図ると、親と子の双方にオキシトシンが分泌されます。なんと、それが子どもの成長によい影響を与えてくれることがわかっているのです。

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オキシトシンが心と体に与える影響

では、オキシトシンが分泌されると、子どもにどんなよい影響があるのでしょうか。その一部を、心への影響と体への影響とに分けてご紹介します。

心への影響
  • 幸せな気分になる
  • 不安な気持ちが解消される
  • 人に対してやさしくなる
  • 共感力が高まる
  • 人への信頼感が増す

 
オキシトシンは、別名「幸せホルモン」「絆ホルモン」と呼ばれることもあるように、幸せを感じたり、人との絆を深めたりする作用があることで知られています。親子がスキンシップを図れば、双方にオキシトシンが分泌され、親子一緒に幸せを感じながら、信頼関係を深められるのです。また、他者に対してもやさしい気持ちになったり、共感したりすることができるので、良好な人間関係を築けるようになれます。

さらに、冒頭でご紹介したとおり、学力アップにも期待できます。なぜなら、オキシトシンが分泌されると、不安な気持ちが解消され、リラックスした状態を保てるため、勉強に集中でき、記憶力が高まるからです。桜美林大学・リベラルアーツ学群の山口創教授の研究によると、小学生に自画像を描かせ、分析したところ、家族とよくスキンシップをとっている子どものほうが、知能指数も自尊心も高いことがわかったのだとか。

 

体への影響
  • ストレスに強くなる
  • 自律神経が調整される
  • 胃腸が丈夫になる
  • 免疫力がアップする
  • 睡眠の質がよくなる
  • ほかのホルモンの分泌を促す

 
オキシトシンは、さまざまな不調につながると言われる「ストレス」をやわらげたり、自律神経を整えたりするなど、体にも作用します。親子でスキンシップを図ることは、子どもの健康づくりにも一役買うというわけです。

また、睡眠の質が良くなり、子どもの成長を助けてくれる効果も。健康な体づくりや良質な睡眠は、子どもが楽しい学校生活を送ったり、将来社会で活躍したりするのには欠かせないものですよね。

 

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親子でオキシトシンを分泌させよう!

オキシトシンは、親子のさまざまなスキンシップにより分泌させることができます。冒頭で紹介した「抱っこ」はそのひとつです。しかしながら、子どもが赤ちゃんのころは嫌というほどしていた抱っこが、大きくなってからはなかなかできなくなった……という方も多いのではないでしょうか。

そんな親御さんのために、前出の桜美林大学の山口創教授は、1回につき5分程度の「ちょい抱き」を推奨されています。

1時間のうちの5~10分くらいでいいので、その時はお子さんと目を合わせ、集中して抱っこしたり、ほほずりしたり、頭をなでたりしてあげてください。
というのも、“幸せホルモン”や“愛情ホルモン”とも呼ばれる「オキシトシン」は、触れてから5~10分程度で分泌量がピークになり、そのあと1時間程度は、触れていなくても高い状態を維持できるのです。
ちょい抱きの時間には、見つめ合い声をかけ、抱っこしてあげる。そしてまた1時間くらいしたらちょい抱きをするという方法を、ぜひ実践していただけたらと思います。

(引用元:たまひよ|5分の「ちょい抱き」で愛情は伝わる!幸せになれるスキンシップの秘密

また、体に触れる遊びや、なでたり、さすったりといった抱っこ以外のスキンシップでもオキシトシンは分泌されます。例えば、ほめるときに頭をなでたり、励ますときに背中を叩いたりというのもそのひとつ。髪の毛を結んであげたり、耳かきをしてあげたりするのも良いでしょう。

なかでも、山口教授のおすすめは、体に触れる遊びのひとつ、「こちょこちょ遊び」だそう。くすぐると大笑いして喜ぶお子さんは多いことでしょう。山口教授いわく、こちょこちょ遊びのようなお互い笑顔になれる楽しいスキンシップをすると、親子ともにオキシトシンがたくさん分泌されるのだとか。

一方で、何らかの事情により、「スキンシップ自体が難しい」というご家庭もあるかもしれませんが、ご心配なく。オキシトシン研究の第一人者と言われるウィスコンシン医科大学の高橋徳教授によれば、親子で見つめ合うだけでも、オキシトシンが分泌されるのだそう。例えば、食事の時間に、目と目を合わせて会話を楽しむだけでもいいのです。

ご家庭の状況に合わせて、できることから習慣づけてみましょう。

***
オキシトシンは、親子のコミュニケーションにより分泌量を増やすことができるホルモンです。また、その影響は、お子さんだけでなく親御さんにも与えられます。

「忙しくて、なかなかコミュニケーションが取れない」という親御さんも、少しだけギュッと抱きしめたり、見つめ合ったりするだけならできるのではないでしょうか。その時間、親御さん自身も幸せな気分になれるはずですよ!

(参考)
中外製薬|ホルモン
日刊ゲンダイヘルスケア|「スキンシップが多い子供ほど学力が高い」のはなぜだ?
PHPファミリー|親子のスキンシップが、かしこい脳をつくる!
あそびのもりONLINE|スキンシップは子育ての基本。肌の触れ合いは親も癒します
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