子どもの「でも」「だって」を聞くたびに、「ああ、また言い訳しようとしてる」と落ち込んだりイライラしたりしていませんか? 少し前までは注意をしたら素直に答えてくれたのに、大きくなるにつれてどんどん口が達者になり、言い訳をする頻度も増えてきたと感じている人も多いかもしれませんね。
でも、子どもの言い訳にはちゃんと理由があります。そして、親の言葉かけ次第では、言い訳を減らすことだって可能なのです。
親子ゲンカのきっかけは「子どもの言い訳」
あんなに素直だったのに、言い訳をするようになるなんて……。わが子の成長は嬉しいものの、「でも」「だって」と口答えばかりする姿を見ると、少し複雑な気持ちになりますよね。
そして、言い訳をされるとカッとなり、とっさに「言い訳するんじゃないの!」「すぐそうやって人のせいにして!」「じゃあ、○○すればよかったでしょう?」などと言い返して、火に油を注いでしまったこともあるのではないでしょうか。
親「なんで夕飯前に宿題をしておかなかったの!」
子「だって、宿題をしようと思ったら、急にお友だちが来てできなかったんだもん」
親「お友だちのせいにしないの!」
親「お片づけするって約束したのに、どうしてまだ散らかっているの!」
子「だって、片づけようとしたら弟が遊んでほしそうにしてたからできなかったんだもん」
親「どうしていつも人のせいにするの!」
どこの家庭でも、このような会話は日常茶飯事ですよね。そして最終的には、お互いに嫌な気持ちを抱えたまま、解決せずにやり過ごしてしまうことも多いものです。
言い訳ばかりする子に対して、「本当はもっと穏やかに接したいのに」「できれば子どもを責めたくないのに」と悩んでいるのなら、まずは子どもが “言い訳をする心理” を理解し、効果的な対処法を試してみましょう。
子どもが言い訳するのはどうして?
もちろん、言い訳をするのは子どもだけではありませんよね。みなさんも、自分の正当性を主張するため、あるいはその場の雰囲気に合わせるために深く考えず言い訳をしたこともあるはず。
では、子どもが親に対して言い訳をするのは、いったいどのような心理状況が影響しているのでしょうか。
■自分の身を守るため
以前正直な気持ちを話したとき、親に怒られた経験があれば、それを回避するために言い訳するようになります。
たとえば「どうして片づけないの?」と聞かれたとき、素直に「面倒だから」と答えて怒られた経験がある子どもは、とっさに「妹がまだ遊びたいって言ってるから」などと言い訳するのです。
さらに、知恵がついている子どもであれば、「自分が悪い割合を軽くしようという狙い」もあるそうです。チャイルドコーチングアドバイザーの倉岡明広さんによると、「悪いことはしたけれど、それは “誰か” あるいは “何か” のせいでもある。自分だけが悪いのではない」ということにしたい心理もはたらくようになるとのこと。
言い訳をする根底には、人間の本能的な心理があります。いわば、自分を守るための自己防衛です。それは大人も子どもも同じなのですね。
■人からの評価を気にしすぎているため
親や先生、周りの友だちからどのように思われているかを常に気にする子どもがいます。『こどもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(中経出版)の著者で、講演や幼児教室を中心に活動中の田宮由美さんによると、そういった子たちも「人のせい」にすることがあるそう。
日ごろから周囲の大人に「いい子」と褒められている子どもは、「いい子でなければ、親や先生に認められない」といった不安を抱えています。そのため、叱られたり注意されたりする状況に直面すると、とっさに人のせいにしてしまうのです。
■責任感が過度に強いから
第一子であることや学級委員長などの立場に、過度な責任を感じていることも原因のひとつとして考えられます。「私はお姉ちゃんだから」「学級委員長だから」と、自分の立場にプライドや責任を感じている子は、自分の非を認められずに人のせいにすることも。
普段から「お姉ちゃんらしく」「学級委員長らしく」振る舞うことを周りに期待されていたり、また自分でも「そうするべき」と思い込んでいたりすると、責任を果たすために言い訳する場合もあるのです。
■自分の可能性を残しておきたいから
コーチングを取り入れた子育ての講座を開催しているやまだともこさんは、子どもが言い訳するとき「状況を限定的にすることで『本当はできる』という可能性を残しておきたいという側面も考えられる」と指摘します。
たとえば、「時間がなかったからできなかった」は「時間があればできたのに」という可能性を、「忘れてたんだもん」は「忘れるまではやる気でいたのに」という可能性を含んでいるというのです。
親にがっかりされないように、自分への期待を持ち続けてもらえるように、子どもなりに考えた答えが「言い訳」として表れているのでしょう。
■聞かれているから
拍子抜けしてしまいそうですが、やまださんによると「じつはこれが子どもが言い訳をする一番の理由」だそう。
親が発する「なんで○○なの!」という言葉は、いわゆる “質問” です。「なんで」と聞かれているから、「だって(その理由は)……」と答える。子どもは単純に理由を述べているに過ぎないのです。問題は、それを大人が言い訳と捉えているパターンが非常に多いということ。
親「なんでケンカしてるの!」
子「だって、弟が先に叩いてきたんだもん」
親「なんでやっておかなかったの?」
子「だって、知らなかったんだもん」
上のような会話は、落ち着いた状況であれば違和感はありません。しかし、聞いている親の感情がたかぶっていたり、「どうせ素直に答えないだろう」という前提で聞いていたりしたら、結局は自己弁護の言い訳にしか聞こえないのではないでしょうか。
子どもの言い訳のきっかけをつくっているのは、親の感情的な質問の仕方かもしれません。
子どもの言い訳への対処法
では、「すぐ言い訳する」「人のせいにする」子どもに対してどのように接するとよいのでしょうか。
■言い訳を最後まで聞く
一般社団法人 子どものこころのコーチング協会代表理事・和久田ミカさんは、「言い訳の言葉に “子どもの不安や本心” が隠されていることもあるので、『だって……』のあとの発言を遮らないように、最後まで耳を傾けることが大切」だと述べています。
「だって、○○なんだもん」
この○○に当てはまる言葉は、口から出まかせではなく、本心であることも多いのです。その不安や不満をまずは受け止めて、どうしたら解消されるかを考えてあげましょう。
■「人のせい」にしたことに深く触れない
明らかに嘘を言っていても、白黒はっきりさせることが問題解決につながるわけではないと覚えておいてください。目的はあくまでも、子どもが「人のせい」にするのをやめさせること。子ども自身も自分が人のせいにしていることはわかっているのです。
たとえば、おもちゃを片づけなかったことを指摘したとき、
「弟がもっと遊びたそうだったからおもちゃを出しておいた」
と言い返されたとします。この場合、まずは「そうなのね」と受け止めてから、
「夜ごはんの時間になったらおもちゃを片づけることを弟にも教えてあげてね」
と、弟を指導する立場になるような声かけをするといいでしょう。
■正論で責めない
日本キッズコーチング協会理事長で幼児教育家の竹内エリカさんは、「親が正論で責めれば責めるほど、子どもは逃れるために言い訳を考える」と指摘します。
たとえば、運動会のリレー競走で、わが子が前の子の服を引っ張っているのを見てしまったとき、あとでどのような言葉をかけますか? うちの子がそんなことをするなんて……というショックから、
「なんで前を走っているお友だちの服を引っ張ったの!」
と強く責めてしまうかもしれませんね。
すると子どもも「だってぶつかりそうになったんだもん!」と言い訳するでしょう。さらにヒートアップすると、
親「言い訳しないの!」
子「私だって練習のときに引っ張られたんだから!」
と言い訳が続くかもしれません。
こうなってしまうとあとには引けず、子どもは自分が頑張って走ったことも認められないまま、険悪な雰囲気で終わってしまいます。ここで大事なのは、親が大人としての正論を押しつけることではありません。子どもが自分で答えを見つける手助けをしてあげることが大事なのです。
まずは「よく頑張って走ったね」と頑張りを認めてあげましょう。そして次に「お友だちを引っ張っていたけど、どうしたのかな?」と尋ねてみてください。最後に「お友だちを引っ張ると危ないと思うけど、あなたはどう思う?」と親の気持ちを伝えてから、子ども自身に考えさせましょう。
子どもの言い訳は、親子のコミュニケーションをより深めるきっかけにもなります。頭ごなしに「もう、言い訳ばかりして!」と叱るのではなく、「どんな言い訳をしてくるかな?」と楽しむ余裕を持つことができれば、きっと親御さんのストレスや不安も解消されるはずです。
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あまり言い訳をしない子は自己肯定感が高い、ともいわれています。なぜなら、「ありのままの自分を受け入れられる=失敗した自分や間違えた自分もそのまま受け止めることができる」から。一方、自己肯定感が低い子どもは、自分に自信がないため逃げ道を求めて言い訳ばかりしてしまうのです。自己肯定感を高めることで、言い訳する必要がなくなるのですね。
(参考)
All Anout|言い訳をする子供の心理と、素直な気持ちを育むコツ
ベネッセ教育情報サイト|お子さまを「言い訳名人」にしない!大切なのは自己肯定感を高める声かけ!
SHINGA FARM|自分の過ちや失敗を「人のせい」にする子どもの心理と対応法
Joyful Life Design|子育てママ必見!コーチングの質問を使うと子どもの言い訳がなくなります
d menu ニュース|言い訳ができる子どもは「乗り越える力」が育つ
mamagirl|子どもを言い訳名人にさせない方法。お母さんの対応が道を開く
聖学院大学総合研究所Newsletter|田澤薫_金谷京子氏報告「子どもの言い訳にあらわれるもの」_総合研究所Newsletter-Vol.21-No.2.pdf