教育を考える 2019.8.7

賢い子の親は「知的好奇心」が旺盛!? “脳医学者”と“心理学者”の答え

編集部
賢い子の親は「知的好奇心」が旺盛!? “脳医学者”と“心理学者”の答え

物事に興味を持ち、「もっと深く知りたい!」と思う気持ちを「知的好奇心」といいます。知的好奇心は、大人になるにつれ失われがちなもののひとつです。「子どもの頃は知的好奇心旺盛だったけど、大人になって変わった」という方も少なくないはず。

しかし、そんな自分の状態が、子どもに悪影響を及ぼしているかもしれないのです。なぜならば、親の知的好奇心の有無は、子どもの知的好奇心のみならず学力にまで関係してくるから。

今回は、親子にとって知的好奇心がいかに大切かを知り、知的好奇心を育むためにできることは何かを考えてみます。

知的好奇心旺盛な子は学力が高い!

勉強ができる子や、成績のよい子には、知的好奇心旺盛な子が多いと言われています。教育関連著書を多く世に送り出している脳医学者の瀧靖之さんは、「賢い子」の条件を問われた際、「自分から『知りたい』と思える、知的好奇心が旺盛な子ども」と答えています。

動物や植物、運動、どんなことでも良いのですが、興味を持った対象に自分からおもしろがって調べたり取り組んだりすることができる子だと思います。勉強にしても、テストの点数を取るのが目的ではなく、そもそもおもしろいからやっている。だから努力とも思わず夢中になることができる、そんな子どもですね。学ぶことが楽しくて仕方ないから、自然と学力が伸びていく。その土台となるものが、「もっと知りたい!」という学びへの意欲、すなわち知的好奇心なのです。

(引用元:ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?

例えば、ある外国の歌手の音楽に興味を持ったとしましょう。その音楽についてもっとよく知りたいという思いから、曲の歌詞に出てくる英単語を調べるようになることが考えられます。好きな曲の歌詞が理解できると、その喜びから、英単語を調べること自体が楽しく感じられるようにもなるかもしれません。そうすれば、自然と英語を勉強するようになるでしょう。知的好奇心は、こうして学びの土台を築いていくのです。

実際、学力の高い人たちの多くが、知的好奇心を育むことの大切さを実感しています。東京大学新聞社の調査によると、東大生の95%が、小学生時代の学習姿勢として「知的好奇心を育むこと」が「大切」(とても大切だと思う・まあ大切だと思う)と答えたそうです。これは、「柔軟に考える力をつけること」(92%)や「塾や学習教室に通うこと」(23%)より多い回答でした。

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子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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親の知的好奇心が子どもに影響する

では、子どもの知的好奇心を育てるには、どうすればいいのでしょうか。

文部科学省が実施している全国学力・学習状況調査から、親が子どもを図書館や劇場、科学館などの文化施設によく連れていく家庭で育った子どもは、そうでない子どもより学力が高いことがわかっています。このことにより、親に頻繁に文化施設に連れていってもらった子どもは、それぞれの場所で知的好奇心を刺激され、その経験がのちの学習習慣につながったと考えられます。

また、同調査では、家にある本の数が多い家庭で育った子どもの学力が高いことも明らかになっています。しかし、だからといって、急に子どもに大量の本を買い与えたり、「本をたくさん読みなさい」と言い聞かせたりしても、効果がないことは誰でも予測できるでしょう。MP人間科学研究所代表であり、心理学者の榎本博明さんは、親自身の知的好奇心が子どもの知的好奇心、ひいては学力の高さにつながっていると指摘します。

つまり、蔵書数の多い家庭は、親自身が知的好奇心が強く本をよく読むため、その結果として家庭の蔵書数が多くなる。さらに、子どもと一緒に美術館・劇場や博物館・科学館、図書館といった文化施設に行こうと思う。そのような親の心理傾向が子どもにとって知的刺激に満ちた環境を生み出すのである。

(引用元:Business Journal|学力の高い子ども、親の習慣や家庭環境に「共通の傾向」…文科省調査で判明

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また、一般社団法人教育デザインラボ代表理事であり、教育専門家の石田勝紀さんも、同様の意見を持つひとりです。石田さんは、「親の持つ “好奇心” そのものが子どもに伝播する」と明言しています。親が物事に興味を持ち、それについて楽しそうに学ぶ姿を日常的に見せていれば、それが子どもにも伝わっていくというのです。

「親が、日々ワクワクした気持ちで『もっと知りたい!』と自ら学習していくような人間であればいい」

(引用元:東洋経済オンライン|伸びる子の親は日々「好奇心」で生きている

つまり、子どもの知的好奇心を育てるには、まずは親自身が知的好奇心を育まなくてはならないのです。

子どもと一緒に大人が無理なく知的好奇心を育むには……

しかしながら、大人が日々仕事や家事、育児で忙しいなか、新しいことを始めたり、物事を深く探究したりすることは簡単なことではありません。「重い腰が上がらない」という方も多いでしょう。そんななかでも、子どもと一緒ならできることがあるはずです。好奇心を育むために、親子で無理なく始められることをご紹介します。

声に出して言い聞かせる

第一歩として、物事に興味を持つことが大切です。とはいえ、実際には日常生活のなかに心惹かれる物事が見当たらない、という方がほとんどでしょう。しかし、本当に心惹かれる物事は存在しないのでしょうか? そう感じるのは、自分自身が物事に対する興味の “アンテナ” を張っていないからかもしれません。

先ほどご紹介した石田さんは、自らの「好奇心」という原動力を動かすために、日常的に「日々、楽しんでしまおう」「一見つまらなくみえるものを、おもしろくしてしまおう」と、口癖のように声に出しているそうです。声に出すと、意識が高まります。つまり、物事に対する興味の “アンテナ” を張っているのです。そうすると、小さな変化に気づいたり、ワクワクすることに出会えたりと、物事に興味を持ちやすくなります。

まずは、毎朝1回、あるいは思いついたときにでも、「何かおもしろいことはないかな?」「今日も楽しく1日を過ごそう」と、子どもに語りかけてみましょう。子どもに言いながら、自分に言い聞かせるのです。そうして、子どもと一緒に、物事に対する興味の “アンテナ” を張ってみてください。

 

同じ習い事をしてみる

子どもの習い事について「練習しなさい」と一方的に言っていませんか? 親がお尻を叩くだけでは、子どもの好奇心はそこで止まってしまいます。

前出の脳医学者・瀧先生は、息子さんと “一緒に楽しみながら” ピアノを習っているそうで、「子どもに何かをさせるなら、まず親がやること」がとにかく大事だと力説しています。「子どもの好奇心を思いっきり育てるためには、親自身も子どもと一緒に楽しむ経験が大切」なのです。

幼少期に親子一緒に本気で知的好奇心を高めることで、子どもは親を模倣し、中学生・高校生になってからもその知的好奇心で生きていけるのだそう。親子で同じ習い事――うまくいけば、親子共通の趣味ができるかもしれませんよ!

 
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親が知的好奇心を育むことで、子どもの知的好奇心や学力にもよい影響を及ぼすという好循環が生まれます。また、その過程で、親自身が幅広い知識を身につけたり、自分の新たな一面を発見したりと、これまでにない経験ができるはずです。

このコラムを読んで、「よし、何か見つけてみるか!」――そう感じた方ならば、すでに一歩、いや十歩以上、知的好奇心の世界に向かって歩き出しているのではないでしょうか。

子どもは親の姿を見て育ちます。いつまでも新しいことに挑戦する精神を忘れず、生き生きと輝く姿を見せていけたらよいですね!

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?
Business Journal|学力の高い子ども、親の習慣や家庭環境に「共通の傾向」…文科省調査で判明
東洋経済オンライン|伸びる子の親は日々「好奇心」で生きている
東大新聞オンライン|東大生の4割超が利用した、小学生時代の通信教育とは? 「達成感を求めて楽しく勉強できる」
生活百科|好奇心を失わないための10個の方法
ベネッセ教育情報サイト|脳医学者も実践!子どもの「知的好奇心」を伸ばす“たった1つの秘訣”