毎日学校から出される宿題。入学したてのころは親御さんが管理をしてあげていたかもしれませんが、学校生活に慣れてくると次第に子ども任せになってしまいがちです。すると気づけば「そういえば今どんな内容の勉強をしているんだっけ?」と、お子さんの学習の進行状況が把握できなくなっていた……といった事態に!
宿題を通して子どもの苦手に気づいてあげること、そしてたくさん褒めて伸ばしてあげることができれば、親子のコミュニケーションを深めることにもつながります。
今回は「子どもの宿題との関わり方」について詳しく見ていきましょう。
子どもの宿題、“ながらチェック” していませんか?
プレジデントファミリー編集部が2018年に全国の小学生の子どもを持つ母親505人にアンケート調査を実施したところ、子どもの学習習慣の悩み第1位は「言われないと勉強しない」(46%)でした。また「どのくらい子どもの勉強を見ている?」という質問に対して、41%が「10分未満」、19%が「まったく見ていない」と、半数以上が子どもまかせにしている様子がわかります。
教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこさんは、このアンケート結果を受け、自身の子育てを振り返りながら次のように述べています。
子供が家にいる時間帯は、食事の準備や後片付けで忙しくて、落ち着いて勉強を見られなかったことを思い出しました。毎日、皿洗いをしながら宿題の音読を聞き流して、『聞きました』のスタンプだけを押していた。そうやって見てこなかったツケが中学校受験で回ってきて、私が思っていた以上にできないわが子にがくぜんとしたのが小学校高学年でした。
(引用元:プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018秋 東大生192人 頭のいい子の本棚』, プレジデント社.)
低学年のうちは、宿題は音読や簡単なプリントだけという学校も多いはず。そのため、親もついつい聞いているフリや確認したフリをしてしまいがちですよね。しかしそれでは、子どもが本当に学習内容を理解しているのかがわからないだけではなく、「ちゃんとやっても適当にやっても、親はたいして見てくれない。宿題って意味があるのかな」と、家庭学習そのものの意義すらも見失ってしまうでしょう。
だからこそ、低学年のうちから親がきちんと子どもの宿題に向き合い、一緒に考えてあげる余裕を持つことが大切なのです。
宿題をしない子にイライラするのは無意味
とはいえ、親だって人間です。余裕があるときは優しく諭すことができても、忙しくて視野が狭くなってしまうこともあるはず。そんなとき、子どもが約束通りに行動しない、一度注意しただけでは態度が改善しないとなったら、つい感情的になって「宿題しないならゲームは捨てるよ!」「毎日同じこと言わせないで!」と怒鳴りつけてしまうこともあるでしょう。
『「つい怒ってしまう」がなくなる 子育てのアンガーマネジメント』(青春出版社)の著者で、日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久美さんは、「怒り」の感情について次のように述べています。
怒りというのは、自分の中にある「こうあってほしい」「こうあるべき」という思いが、その通りにならないときに生まれます。
(中略)
「べき」にはその人が大事にしている価値観が表れます。親の場合、自分の考えこそが常識だと考え、子供に「べき」と思う価値観を押し付けてしまいやすいのです。
(引用元:プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018冬 算数が大得意になる』, プレジデント社.)
つまり、親御さん自身が無意識のうちに「言われなくても宿題をやるべき」「言われたらすぐに宿題をするべき」といった感情にとらわれていることにより、その通りに行動しないわが子に対して必要以上に怒りを覚えてしまうのです。
そんな「べき」にがんじがらめにならないためには、どうしたらいいのでしょうか。戸田さんは「怒る・怒らないの境界線を明確にすること。また、子どもが最終的に約束を守ったなら“まあいいか”とすること」が重要だと説きます。
昨日は許されたのに今日は怒られた、お母さんは許してくれるのにお父さんには怒られる、というように曖昧な基準で怒ってしまうと、子どもには「自分の行動によってではなく、親の機嫌で怒られる」という印象しか残りません。
まずは、勉強やゲームの時間について家族みんなで話し合って「境界線」を明確にすることが大切です。
「ゲームは1日30分まで。続けてやっていいのは15分間。宿題をした後に15分、夕食後に15分、と決めたらその時間を守ろうね」
「一度声をかけて行動したら怒らないよ。ただし、2回声をかけてもすぐにやらなければ、お父さんもお母さんも怒るからね」
このように、一度親子間での認識を確認し合いましょう。
母親だけに宿題のプレッシャーを背負わせない
続いて、宿題をするのに適した時間帯について考えていきます。
筑波大学付属小学校国語科教諭の青木信生先生は「基本的には夕食前が効率的」としながらも、「家庭学習で大事なのは、時間帯よりも必ず親が関わり、子どもまかせにしないこと」だと述べています。なぜなら学習習慣のついていない子は、親がそばにいたほうが集中して問題に取り組むことができるからです。
そうなると、最適な時間帯は “親が家にいられる時間” ということになりますね。一般的に、母親の方が子どもと接する時間が多くなってしまうので、宿題を見てあげる役割になりがちですが、父親も宿題の点検係として意識的に生活のリズムを見直しているご家庭も多いようです。
父親が子供と顔を合わせることができる時間帯ということで、出勤前の朝の時間を活用している家庭も多い。それはその家庭ごとのサイクルでいいと思います。
(引用元:プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.)
各家庭によってさまざまな事情があり、生活のパターンもそれぞれ違います。大切なのは、ご両親のどちらかでも宿題を通して子どもの変化や成長を注意深く見てあげることです。そうすることで、子どもは安心して毎日の宿題に取り組むことができます。すると、高学年になってもっと難しい宿題が出されるようになっても、すぐに諦めたりごまかしたりせずに、真剣に向き合って一生懸命取り組めるようになるでしょう。
まずは「褒める部分を見つける」ことから
「子どもに勉強を教えるときのコツは、子どものプライドを大事にすること」と述べるのは、東京大学名誉教授で教育学者の汐見稔幸先生です。つい「こんなこともわかってなかったの?」と呆れた反応を見せてしまっていませんか? そうすると、子どもは小さいながらも親御さんの期待に応えられない自分を責めたり、恥ずかしいと感じたりします。
こんなときは「ああ、そうそう、こういうことってみんなよく間違えるよね」と優しく言ってあげましょう。できないことやわからないことは恥ずかしいことじゃない。そう伝えてあげるだけで、子どもの学びへの意欲は失われずにすむのです。
また、教育評論家の親野智可等先生は「宿題をやると褒められる」パターンを作ることが効果的だと述べます。親野先生によると、多くの親はほめるどころか逆に「もっとていねいに字を書きなさい」「間違いだらけじゃないの」などと叱りがちだといいます。
そこで、つい注意したくなる気持ちをぐっと抑えて、雑に書かれた字の中でも綺麗な字を見つけて部分的にでも褒めてあげましょう。大事なのは、宿題への取りかかりをスムーズにするために「宿題をやると褒められる」という意識を強く持たせることなのです。
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お母さんがせっかちで優しく教えるのが苦手なら、お父さんにバトンタッチしてもいいでしょう。それでもつい感情的になるようだったら、おばあちゃんやおじいちゃんにも協力してもらいます。見守る人のスタンスによって宿題をプレッシャーに感じたり、褒められることでやる気がわいたりするので、お母さんが一人で抱え込んでしまうのではなく、周囲の大人がみんなで見守ってあげることが大切です。
(参考)
プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018秋 東大生192人 頭のいい子の本棚』, プレジデント社.
プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018冬 算数が大得意になる』, プレジデント社.
プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.
汐見稔幸(2008年),『汐見先生の素敵な子育て「子どもの学力の基本は好奇心です」』,旬報社.
洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.
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