子どもが言葉を覚えて会話ができるようになると、やがて「なんで?」「どうして?」と質問ばかりする時期がやってきます。そんなとき、「毎回同じ質問ばかりされてうんざりしてしまう」「突拍子もない質問ばかりしてきて、どう答えていいのかわからない」と感じてしまう親御さんも少なくないはず。
今回は、子どもが質問ばかりする理由や、子どもの質問への対処法についてご紹介します。
なんで質問ばかりするの?
2~6歳頃の子どもは、「なぜ○○なの?」「どうして□□は△△になるの?」などと、事あるごとに質問をするようになります。
この時期は、心理学で「質問期」と呼ばれています。「子どもの知的好奇心が最も伸びるタイミング」だと言われているのだそう。神戸常盤大学こども教育学科准教授の小﨑恭弘氏は、子どもが質問ばかりする理由について、次のように述べています。
1歳頃の歩き始めたばかりの子どもが、歩くこと自体が楽しくてずっと歩いているように、2~3歳の子どもでは「なんで?」という「言葉を使えること」が楽しいんです。
言葉が使える楽しさを満たしてあげるといいと思います。
(引用元:NHKエデュケーショナル|どう答える?子どもからの質問「なんで?なんで?」)
ところで、発明王エジソンが、人一倍好奇心の強い子どもだったというのは有名な話ですよね。幼少期の彼は、疑問が生まれるたびに「なぜ?」「どうして?」と誰彼かまわず質問責めにしていたため、彼の顔を見ると大人たちが逃げ出すほどだったとか。そんななか、彼を尊重し、寄り添っていたのは、彼の母親でした。母親が彼の好奇心に磨きをかけ、のちの発明王を育てあげたといっても過言ではないでしょう。
子どもは質問期を終えると、一気に質問をしなくなります。質問期は、子どもの知的好奇心を育む大切な時期なのです。この時期に、上手に応じてあげることで、知的好奇心や学習意欲をグングン伸ばすことができますよ。
子どもの質問には完璧に答えなくてもいい!
しかし、質問期の子どもが毎日のように「なんで?」「どうして?」と聞いてくることに対して、「正しい答えがわからない」「同じような質問ばかりされてついイライラしてしまう」とストレスを感じてしまう親御さんも多いことでしょう。家事や仕事に追われるなか、何度も質問責めにされてしまうと、「あとにして!」と言いたくなってしまうかもしれません。そんなときに大切なのは、「子どもの質問に対して正しい答えを教える必要はない」と意識すること。
前述した小﨑恭弘氏によると、子どもたちの「なんで?」は、常に答えを聞きたいというわけではないのだそう。子どもは、「なんで?」と質問したときに「答えてくれる」というやり取りを楽しんでいると、小﨑氏は言います。大切なのは、質問に答えることではなく、「関わりを丁寧にする」ことなのだそう。
子どもの質問は、「正しい答えを教えられるかどうか」よりも、「親子のコミュニケーションとして楽しめているか」が重要なのです。
子どもの質問への回答
子どもが質問期に入ったら、以下のポイントに注意しましょう。
子どもがわかりやすい表現をする
子どもが質問をしたときには、無理に正確な答えを教える必要はありません。子どもにとって納得がいく答えを提示してあげることのほうが大切です。
白梅学園大学学長の汐見稔幸氏は、次のように例を挙げています。
例えば、「どうして雨はふるの?」と質問された場合、
「さっき草を見たら、あまり雨がふらないから、水がもらえなくて元気がなかったんだよ。それを神様が知って、なんとか水を飲ませたいと思って雨をふらせてくれているんじゃないかな?」
など、「想像力がかき立てられるような答え方」をするとそれなりに納得することがあります。
(引用元:NHKエデュケーショナル|どう答える?子どもからの質問「雨はどうしてふるの?」などの素朴な質問)
年齢や発達の度合いによっても変わってきますが、幼い子どもは、科学的な原理を知りたいわけではありません。雨が降る仕組みを説明しようとしても、子どもにとっては余計に疑問が増えてしまいます。たとえば、「雨が降るのは草にお水を飲ませてあげるため」「アリさんが行列を作るのはお行儀がいいから」「お空の色が変わるのはお着替えしたから」と、ファンタジックな世界を連想できる答えを与えたほうが、子どもは納得ができるのです。
子どもが成長して、そのような答え方では納得しなくなってきたら、「じゃあ一緒に調べてみよう」と一緒に本やインターネットを使って調べてみても良いですね。
質問の答えを待ってもらえる関係性を作る
東京家政大学ナースリールーム主任保育士の井桁容子氏は、子どもの質問に対してすぐに答えられないときに「ちょっとあとにしてくれる?」と言っても待ってもらえるよう、普段から信頼関係を築いておくことが大切だと述べています。いつも「ちょっと待って」だと、待てない子どもになってしまうのだそう。「いずれ答えてくれるから待とう」と子どもに思ってもらえるよう、忙しくないときには誠実に答え、忙しいときには、あとで忘れずに質問に答えてあげることが大切です。
質問の答えを体験させながら説明する
質問の内容にもよりますが、実際に体験させることで子どもの理解が深まることもあります。たとえば、「どうしてお花は咲くの?」と聞かれたら、親子で花を育ててみたりするのもよいでしょう。
また、博物館や体験施設などで、質問の答えを見たり、体験したりするのもおすすめです。親子の思い出にもなりますし、子どもの探求心を育てることにもつながります。
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子どもの質問は、親の対応次第で、知的好奇心を伸ばす大きなきっかけになりえます。正確に答えようと頑張る必要はありません。子どもの「なぜ?」「どうして?」を大切にして、一緒に考えたり、答えを導くためのサポートをしてあげたりすることが重要です。
文/田口 るい
(参考)
All About|同じ質問を繰り返す子供にイライラ、その理由と対処法
All About|なぜ?どうして?がエジソンを発明王にした
たまひよ|【4歳の質問期】こそ、考える力を伸ばす絶好のチャンス!
すくコムNHKエデュケーショナル|どう答える?子どもからの質問「雨はどうしてふるの?」などの素朴な質問
すくコムNHKエデュケーショナル|どう答える?子どもからの質問「なんで?なんで?」
日経デュアル|頭のいい子に育てたいなら、幼少期はとことん遊ばせて
PHPファミリー|子どもの 「なぜ?」にどう答えるべき?