教育を考える 2019.3.10

「7歳の時の金銭感覚」は一生続く!? マネー教育にお小遣い帳が必須なワケ

長野真弓
「7歳の時の金銭感覚」は一生続く!? マネー教育にお小遣い帳が必須なワケ

2008年の金融危機リーマンショック以降、世界で金融改革が行なわれ、マネー教育の重要性も高まっています。

著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、「子どもたちは、金融知識や実践能力を、読み書き同様早い段階で身につけるべきだ」と言っています。また、イギリスでは「7歳の時の金銭感覚が一生続く」と言われているそうです。

日本では、“お金の話” は触れにくいトピックで、家族間でも敬遠されがちな傾向がありますよね。海外でも、人にむやみにお金の話を持ち出すのはもちろんNGですが、家庭内では健全なマネー教育が早くから行なわれているようです。

しっかりとした金銭感覚を持った賢い大人になるために、今後は早めのマネー教育が必要だと、日本でも認知され始めてきています。今回はマネー教育のポイントをご紹介しましょう。

家の貯金は1万円!? 日本のマネー教育の現状

■家庭でのマネー教育

日本の家庭でのマネー教育は、お小遣い制を中心に行なわれているようです。小学校入学時に始める家庭が多く、知るぽると・金融広報中央委員会(2015年度調査)によると、7割強の小学生がお小遣いをもらっています。低学年の約6割の家庭が「時々」親が必要と判断したときにあげ、中学年以降は月1回など定期的お小遣い制に移行、そのほかにもお手伝い制やお年玉も子どもがお金を手にする機会となっています。

親はお小遣いの使い方で金銭感覚を身につけてほしいと願っていますが、お小遣い帳をつけている子どもは少なく、3割にも届きません。せっかくのマネー教育の機会なのに、お金の使い方や価値を十分に伝えきれていない印象です。

また、あるテレビ番組での「家の貯金はいくらあると思いますか?」という子どもたちへのインタビューの答えは――「1万円?」「1億円!!」など。戸惑いながら答える子も多く、金銭感覚がなかなか育まれていない現状が垣間見えました。

■学校でのマネー教育

学校での現状はどうでしょうか。「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」(日本証券業協会・金融経済教育を推進する研究会調査2014年調べ)によると、中学1~2年で金融教育の時間が全く取れていないと回答した学校が6~7割に達しています。教員は金融教育の必要性を認識していながら、時間不足と教員自身の知識不足を問題点としてあげています

日本証券業協会が中学生以上向け教材として「株式学習ゲーム」を提供するなど、意識は徐々に高まっていますが、学校での教育もまだまだこれからといったところのようです。

また2008年の金融広報中央委員会調査では、「金融・経済の仕組みに十分知識があると思う」人はわずか6.7%しかいませんでした。日本のマネー教育不足は明確な問題として浮かび上がっているのです。

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マネー教育大国では小学校低学年から「お金」を学ぶ

海外はどうなのでしょうか? マネー教育大国と言われているイギリスとアメリカの例を見てみましょう。

【イギリスのマネー教育】

イギリスでは、1990年前後の年金改革や個人年金がらみの問題で国の財政を圧迫した経験があり、それ以降金融教育に力を入れてきました。2014年から「数学」と「市民教育」の科目として金融商品、マネー管理、税金などを含む「金融教育」がカリキュラム化され、小学校低学年から学び始めます。知識のベースができる14~16歳には金融システムを学ぶ経済が必修科目となっています。

また、子どもの将来のための資産形成を目的とする「ジュニアISA」では、16歳から子ども自らの運用が認められているのです。学んできたことが実践できる仕組みはとても有効ですね。

【アメリカのマネー教育】

アメリカの青少年への金融教育の始まりと言えるのは、1997年ジャンプスタート連盟(NPO団体)が公表した「K-12対象のパーソナルファイナンス教育の全国基準」と、全国経済教育協議会発表の「経済教育における任意の全国基準」でした。さらに、2001年の教育改革により、金融経済教育が特別推奨分野のひとつに指定されたことで、取り組みが広がります。

全米共通のカリキュラムはないながらも、その重要性を訴える提言が何度か政府になされており、学校、NPO単位で積極的なパーソナルファイナンス教育が行なわれています。家庭でも、投資について教えることが珍しくなく、早くから実践として株の運用を始める子どもも少なくありません。バフェット氏が関わる子ども向け金融教育アニメや金融アメフトゲームなどのツールも充実していて、楽しく学べる土壌が育っています。

このように、国の経済状況などによってベースに違いはあるものの、両国ともマネー教育に積極的ですね。日本も学ぶべき点は多いのではないでしょうか。

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家庭でのマネー教育には「5つのポイント」がある

雇用や年金問題などを抱えるなか、日本でもマネー教育の必然性は確実に高まっています。早い段階で子どもの金銭感覚を養うために家庭でもできることを、プロのアドバイスからご紹介しましょう。

(1)始めるタイミング

小学生低学年~中学年のお小遣い制に切り替えるタイミングが多いようです。もしくは、子どもがお金に興味を持って質問をしてきたときもチャンス。例えばファイナンシャルプランナーの竹谷希美子氏の場合、消費者ローンのテレビCMを見て「お金を借りる」ことについて興味を持ったお子さんに、ローンの仕組みを説明、住宅ローンについても話し、家にたくさんのお金がかかることを知ってびっくりしていたそうです。子どもの興味を逃さないこともポイントですね。

(2)マネー教育のステップ

竹谷氏のお子さんは中学生の時から投資を始めたそうですが、そうなるまでには学ぶ順番が大事とおっしゃっています。つまり、お小遣いの管理(=義務教育)から始め、投資(=高等教育)に進むこと。限られたお小遣いをやりくりすることで、忍耐力とマネージメント力が培われお金の管理に自信がつきます。投資はそれからです。

(3)お小遣いシステムの決め方

子どもの性格によって、あげ方を変えることも考えましょう。竹谷氏の場合、コツコツタイプのお子さんは月額制に、行き当たりばったりタイプのお子さんには年棒制にして必要なときに現金を渡し、残高が減っていくシステムにして計画性と忍耐力を育む工夫をしたそうです。画一的な方法ではなく、親が見極めて最適な方法を見出してあげることはとても重要ですね。

(4)お小遣い制のルールを決める

ポイントは3つ。「あげっぱなしにしない」「お小遣いで買うものの範囲を決める」「使い方は子どもに任せる」
お小遣い帳をつける習慣をつけ、定期的にお金に関する相談に乗るようにしましょう。また、「お菓子はお小遣いから買う」、「勉強に必要な筆記用具は親が買う」など、用途の線引きをはっきりさせておきましょう。範囲内の使い方に口出しはNG。もし計画通りにいかず困るようなら問題点を話し合うことは大切です。

(5)お金の使い方を学ぶ

お金の管理に慣れてきたら、使い方にフォーカスしてみましょう。アメリカの投資教育では貯金箱に4つの口があるそうです。「SAVE(貯める)」「EXPEND(欲しいものに使う)」「INVEST(投資)」「DONATE(寄付)」。使い方の違いでお金の活かし方が変わり、それにより社会貢献もできることに気づかせる目的があります。

これはさすがに難しいとしても、お金を使う際にそれが「必要」なのか、ただ「欲しい」だけなのかを、意識させることが重要なのだそう。

購入後しばらくたって、お小遣い帳に記された “モノ” を改めてみて、親が「あれ、使ってる?」と聞くなどして、それは本当に必要だったのか、それとも単に欲しかっただけだったのかの確認を繰り返すことで、needとwantの違いがわかるようになります。そうなると、お金の使い方にも変化が現れるでしょう。

子どもに手ほどきすることで、大人もとても勉強になりそうですね。

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経済評論家の川口一晃氏は、「子どもたちに知ってほしいのは、“貯め方や殖やし方” よりも “使い方”」とおっしゃいます。「夢を実現するためにはお金が必要。どうやって貯めようか?」この流れがとても大切。

お金は “よく生きるための手段” なのだという意識が、お金に縛られない生き方へと誘います。こう考えると、“お金のことを話すのはタブー” という意識も自然となくなるのかもしれません。お金に対して偏見を持ってしまう前に、早めのマネー教育が肝心のようですね。

(参考)
EL BORDE(野村證券)|あなたは子どもに「お金教育ができる?」知っておきたいマネー教育5つのポイント
プレジデントオンライン|「一生、お金で苦労しない子が育つ」家庭のマネー教育
Woman Excite|「お小遣い」でお金の教育 子どもの年齢別・金融教育法
Woman Excite|英国では3歳から!子どものお金の教育のために、ママにできること
ベネッセ教育情報サイト|子供に金銭感覚を身につけさせる教育方法とは?
日本証券業協会|株式学習ゲーム
日本証券業協会|「海外における金融経済教育の調査・研究」報告書
Forbes|ビジネス|日本の子供に金融教育が必要な理由
REUTERS|金融知識は「子供時代に身に着けよ」=バフェット氏
国立社会保障・人口問題研究所|【特集:各国における所得保障の動向】イギリス年金制度の歴史的展開と近年の改革の流れ 斉藤美彦氏
知るぽると|「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回)2015年度調査
知るぽると|「金融に関する消費者アンケート調査」(第3回)の結果
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