StudyHackerこどもまなび☆ラボでは、これまで多くの専門家の意見を参考に、多角的な視点で、効果的かつ実践的な教育法を提案し、子どもたちにとって、また保護者の方々にとって有益な情報を発信してきました。なかでも人気が高いテーマは、「科学的なデータに基づいた効果的な教育法」です。じつは今、個々の経験をベースにした教育法や学習法よりも、さまざまな分析によって導き出された科学的根拠に基づく教育法が注目されています。
教育経済学を専門にしている慶應義塾大学の中室牧子教授は、「個人的な経験に基づく主観的な議論を展開しがちな教育界だが、活躍している人と同じことをすればその人のような成果をおさめられるわけではない」と断言しています。その理由は、「人間の成功にはあまりにも多くの要因が影響しているため、一般化することはとても難しい」から。だからこそ中室教授は、データに基づいた分析によって、成功へと導く教育法を科学的に明らかにする必要性を説いているのです。
今回は、これまでご紹介してきた「科学的なデータに基づいた教育法」にまつわる記事のなかで、とくに人気の高かった6本をまとめました。どれも納得できる内容ばかりなので、ぜひ参考にしてください。
「科学的に正しい教育」おすすめ記事1
■科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった!
いま注目を集める「ビッグデータ」。なかでも私たちが気になるのは、子どもの学習にまつわる「教育ビッグデータ」です。この記事では、教育ビッグデータをもとにした最新の「効果のある早期教育」「効果のない早期教育」について、詳しく解説。精神論ではなく、“科学的に正しい”とされているデータばかりを集めています。
「Society 5.0 時代」という新社会が到来するなかで、人々に必要になっていくのは適応していく能力です。適応力のある大人に成長するには、子どもが自分で考え、判断し、行動しながら学んでいけるような環境をつくり、思い切りあそばせることが大切とのこと。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった!)
さまざまな調査から導き出される教育ビッグデータの結果を紹介しているこの記事。たとえば、「習い事をしている子どもは語彙力が高い」という調査結果をさらに深堀りすると、その習い事は学習系であってもスポーツ系であっても、さほど関係ないということがわかっているそう。
またほかにも、「運動する時間をたくさん詰め込んでいる子どもほど、むしろ運動能力が低くなる」など、衝撃の結果が次々と明かされます。私たちが当たり前だと信じて疑わなかった教育法は、じつはそれほど強い根拠に基づいていなかった、ということがわかるでしょう。
さらに、有識者が口をそろえて否定していて、かつ大規模な調査などでも否定された“効果のない早期教育”は、ずばり「詰め込み型の早期教育」。子どもたちが遊ぶ時間をなくしてしまうほどの早期教育は逆効果であり、可能性を奪うことにもつながります。就学前の子どもにとって一番いいのは、自由な時間をたくさん過ごすこと。これは、教育ビッグデータの結果を見ても明らかです。
「科学的に正しい教育」おすすめ記事2
■非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?
この記事では、今注目の「非認知能力」の伸ばし方を、あるデータをもとに詳しく解説しています。子ども教育のエキスパートである増田修治先生によると、世帯年収120万円ほどの相対的貧困層の子どもは、見た目は普通であっても、教育におけるさまざまな機会を奪われているそう。しかし、そういった環境で育ちながら学力が高い子どもは確実に存在します。彼らの共通点は、「非認知能力が高い」こと。
これがなにを表しているかというと、「非認知能力が認知能力を発達させる」ということです。2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームズ・ヘックマンらは、40年にわたる長期追跡調査の分析により、「非認知能力がその後の認知能力の発達を促し、その逆は確認できない」と結論づけました。非認知能力が高い子どもはテストの点数もあがるが、テストの点数がいいからといってその子どもの非認知能力が伸びるわけではないのです。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?)
非認知能力には、生活習慣や学習習慣、コミュニケーション能力といったものも含まれるため、これからは家庭でも「非認知能力を伸ばす教育」を意識する必要があります。増田先生によれば、子どもの非認知能力を高めるヒントは、親子のコミュニケーションに隠されているとのこと。
まず大事なのは、「子どもの話をきちんど聞く」こと。教育熱心な親ほど、“子どものために” と勉強や習い事を押しつける傾向が見られますが、先に「なにかやりたいことある?」と子どもに聞いてから一緒に考えるほうが効果的だそう。
増田先生は、「子どもに選択権をわたすことで、子ども自身の自発性や意欲、責任感を養うことにつながる」といいます。多くの保護者は、ついその過程を省きがちですが、親と子がお互いに納得できる「一致点」をつくるコミュニケーションを意識すると、子どもの非認知能力がぐんぐん育まれますよ。
「科学的に正しい教育」おすすめ記事3
■遺伝子か環境か。子どもの “学力と運動能力” はどちらで決まる?――「行動遺伝学」の答え
子どもの能力や身体的特徴などは、親からの遺伝でどのぐらいの影響があり、育った環境はどのくらいの割合で影響するものなのか、気にならない親御さんはいないはず。この記事では、子どもの学力や運動能力、芸術的センス、性格、体格といったあらゆる能力と遺伝の関係、また周りの環境からの影響について、詳しく解説しています。
安藤先生によると、知的能力を図るIQは17~18歳ごろに向かってだんだんと遺伝の影響が大きくなっていき、ひとりで行動する時間が増えていくにつれて遺伝的な個人差が現れてくると言います。
一方で、0~6歳ごろまでは遺伝の影響はまだそれほど見られず、家庭環境の影響が大きいと言えるそう。このように、学力の場合は年齢によって、遺伝の影響が大きい時期と、環境の影響が大きい時期が異なるようです。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|遺伝子か環境か。子どもの “学力と運動能力” はどちらで決まる?――「行動遺伝学」の答え)
では、そのほかの能力に関してはどうでしょうか? 「運動能力」の場合、“66%は遺伝要因で決まる”といわれるほど、ほかの要素に比べて遺伝の影響が大きいそう。「芸術的センス」については、科学的な判定は難しいとしながらも、リズム感や絶対音感にいたっては“50%程度の影響がある”といわれています。
さらに「性格」に関しては、遺伝的要因は30~40%程度、環境の影響は60~70%ともいわれ、環境的要因のほうが大きいことがわかります。このように、あらゆる能力は遺伝と環境が複雑に絡み合い、それぞれ重要な役割を果たしていることがわかるのではないでしょうか。
記事では最後に、「良い環境を整えるためのコツ」をご紹介。早寝早起きといった規則正しい生活はもちろん、ワークショップや自然体験を積極的にさせることや、好奇心を育む本や図鑑をリビングに置いて、いつでも手に取れるようにするなど、子どもの能力を引き出すアドバイスが満載です。
「科学的に正しい教育」おすすめ記事4
■「勉強しろ」は逆効果! 統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと
この記事では、子どもに対してつい言ってしまいがちな言葉を、心理学的根拠をもとに分析し、さまざまな統計をもとに確実に効果がある親の対処法を紹介しています。ある調査によると、子どもに「勉強しなさい」と言うのはじつはあまり効果的ではなく、むしろ逆効果な場合もあるそう。それには、ある心理的な要因が深く関わっているといいます。
心理的リアクタンスとは、「個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される、自由回復を志向した同期的状態」。つまり、人間は「○○しなさい」「○○してはいけません」のような命令・指示を受け、自由に行動できる権利を制限されたと感じると、自分には自由があるのだと確認するために反対の行動をとる傾向があるのです。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果! 統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと)
これが、「勉強しろ」と言われると反発したくなるメカニズムです。では「勉強しろ」と言わずとも、子どものやる気を引き出して、自発的に学習に向かわせるには、どうしたらいいのでしょう。そのヒントは、統計のなかにあるといいます。
「子育て生活基本調査」によってわかったことは、親子が将来について話すことと、子どもの勉強時間の関連性です。「子どもと将来や進路について話す」母親と、将来について話をしない母親の子どもを比べると、平均勉強時間に17分もの差が生まれたそう。この結果から、将来について親子で話をすることで、子どもは自分の進路に対して具体的なイメージを抱き、勉強への意欲が増していることがうかがえます。
またほかにも、「一緒に勉強の計画を立てる」「夢中になれる体験をさせる」など、今すぐにでも取り入れられる“子どもをやる気にさせる”コツが紹介されています。どれも「勉強しろ」の一言よりも、確実に効果を発揮しますよ。
「科学的に正しい教育」おすすめ記事5
いまや私たちの生活に欠かせないアイテムとなった「スマートフォン」。小さい子どもたちにとっても例外ではありません。この記事では、科学的根拠をもとに、スマートフォンとの上手な付き合い方について解説しています。
また、驚くべきことに「2時間以上勉強していながらスマホを4時間以上使っている子」の平均点が「30分未満しか勉強していないけれどスマホを使わない子」の平均点よりも低いという結果も出ています。せっかく勉強しても、スマホを使う時間が長ければ、勉強した時間がムダになってしまうといっても過言ではありません。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「スマホが学力を破壊」は本当? 脳に良くない根本理由)
学習状況とスマホの利用状況の関連性を調査したところ、少なからず影響を及ぼしていることがわかりました。その最も大きな要因として、「睡眠不足」が深く関わっていることが指摘されています。
動画やゲームの時間が長くなると、どうしても睡眠時間が削られてしまいますよね。その結果、学習への意欲低下や集中力の欠如、また記憶にも支障が出るという弊害も。スマホ使用が引き起こす学力低下は、さまざまな要因が絡み合った結果だといえるでしょう。
また、子どもの脳の発達や学力向上は、スマホの使用時間の長さよりも、「人とのやりとりがあるかどうか」が大きく関係しているとの意見もあります。やむを得ずスマホを利用する場合も、使い方さえ注意すれば影響を最小限に抑えることができるそうなので、気になる方はぜひ参考にしてください。
「科学的に正しい教育」おすすめ記事6
■文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係
読書が子どもの学力に与える影響を、文部科学省の調査や海外の研究結果から解き明かしているこの記事。「本を読むのはいいこと」だとはわかっているけど、実際に子どもの学力に結びついているのだろうか? と疑問を感じている保護者の方におすすめです。たとえば記事のなかでは、イギリスの調査結果を例に次のような結論を出しています。
楽しいから読書をするという本好きな子どもは、そうでない子どもよりも、知能の発達、語彙力、スペリング力、数学の能力すべてにおいて優れていることが明らかになりました。
(中略)
親の学歴・収入や、遺伝として受け継ぐIQに関わらず、子どもの学力を高める秘密兵器。それが「読書習慣」なのです。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係)
さらに、アメリカ合衆国教育省の調査でも、「余暇に自分の楽しみのために本を読む子どもは、読解問題でより高い点数を取る」「家で多くの本を読む子どもは、英語・数学のテストでより高い点数を取る」ことがわかったそう。
日本でも同様に、文部科学省の調査で「読書好きは国語と算数のテストの得点が高い」と報告されています。なぜこれほどまでに、読書が学力の高さに結びついているのでしょうか。教育コンサルタントの松永暢史氏によると、本を読むことで得られる「日本語了解能力=国語力」が大きなカギを握っているとのこと。
松永氏は、「国語力がない子は、算数の文章問題が解けないし、社会・理科の授業や総合的な学習において自分の考えをまとめて発表するこができない」と指摘します。このように、学力の基盤となる「国語力」を身につけるには、読書が最も効果的だというわけです。
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科学的根拠に基づいた教育法は、どれも納得するものばかりですね。これらの記事を読んで、「勉強しなさい、とガミガミ言わないようにしよう」「習い事を詰め込みすぎないようにしよう」と、お子さんへの接し方を見つめ直すきっかけになりますように。
(参考)
リクルートマネジメントソリューションズ|日本の教育には科学的根拠が必要