あたまを使う/英語 2018.6.1

【田浦教授インタビュー 第5回】子ども向けオンライン英会話の学習効果――英語学習を成功に導くための活用術――

編集部
【田浦教授インタビュー 第5回】子ども向けオンライン英会話の学習効果――英語学習を成功に導くための活用術――

立命館大学大学院 言語教育情報研究科教授の田浦秀幸さんに、バイリンガリズムや日本の子どもに最適な英語学習についてお話をうかがうシリーズの第5回目をお届けします。

第4回では、子ども向け英語DVDの学習効果と家庭での活用方法について、お話しいただきました。言語の習得にはコミュニケーションが重要とのことでしたが、テレビ画面を通して他者とやりとりをするオンライン英会話は、子どもの英語学習に効果的なツールとなり得るのでしょうか?

今回は、オンライン英会話の学習効果と活用方法を探ります。

子ども向けオンライン英会話の学習効果

——前回、言語の習得には人とのやりとりが必要であり、普段コミュニケーションツールとして英語を使っていないお子さんが英語DVDをただ見るだけでは、学習効果は得られないとうかがいました。オンライン英会話では、画面を通して人と話すことになりますが、これもインタラクションになるのでしょうか?——

田浦先生:
子どもが面白いと感じて、「お母さん、またあの人と話したい」ってなったらいいですよね。「この間話せなかったことを、今度は伝えたい」と思って、勉強しようと思うはずですから。あるいは、「あの人面白いから、もっと話を聞きたい」とかね。

それまで英語にどれだけふれてきたか、その経験の度合いによって、効果は変わってくると思います。まだ全然英語ができないのに、オンライン英会話を始めても、ちんぷんかんぷんになってしまいますから、しばらくは興味を持ったとしても、だんだん面白くないと感じてしまうでしょうね。いくら安いとは言え、ゼロから英語を始めるお子さんにとっては、意味がないと思います。

一方、ある程度、英会話教室などで英語を学んできた子どもが、補強のような形でオンライン英会話をやるのであれば、いいかもしれません。同じような興味を持つ子を相手に「実際にこうやって英語を使う子がいるんだよ、話してみる?」というように、画面を通して英語で会話することができるなら、成り立つと思います。

例えば、電車が好きな男の子だったら、同じように電車が好きなドイツ人の男の子と、英語で電車の話をする、というのがもしあればね。相手はドイツ人なんだけれども「ドイツではこんな電車が走っているよ」と英語で話す。そして、日本人の子どもが「日本ではこんな新幹線が走っているよ」と英語で教えてあげる。こんな形だったら、自分の興味に合った話ができるでしょう。

小学生に一番大事なのは動機付けです。全然興味が違う子ども同士で、一緒に何かしなさいと言われても、やるわけがありません。日本でも同じですよね。「ままごとしよう」っていう女の子と「鬼ごっこしよう」っていう男の子は、一緒に遊びませんよね。

小さいお子さんに対しては特に、周りがうまく動機づけをしてあげることが重要です。その中で興味がぴったり合う人と話せることはなかなか少ないと思うんですけれども、もしそれができるのであれば、オンライン英会話は使えるのかなと思います。

バイリンガリズムと英語学習第5回2

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子ども向けオンライン英会話の活用術

でも、幼い子どもがまとまった時間、画面に向かって話す姿を、僕は正直ちょっと想像できないですね(笑)。例えば小学1年生のお子さんが、椅子に座ってSkypeで誰かと英語を話すというのは、飽きずにずっと座っていられるのかと疑問に思ってしまいます。

ただね、やっぱり先生次第だと思うんですよね。良い先生がいて、うまく誘導してあげれば、活用できるのかなと思います。例えば、英語のクラスの中で「さあ、歌ってみよう!」「次は、体操してみよう!」「今日は、アメリカの人たちと話してみよう!」というように、様々な活動の中に、オンライン英会話の時間が組み込まれているならば、飽きずにできるでしょうね。

だから、幼稚園や小学校の英語活動の中でうまく使うには、いいかもしれません。特に学校のような環境で、1人につき1つのタブレットを用意して、オンライン英会話をうまく使うと、「隣の子はちゃんと話している、僕も頑張ろう」と子どもが思いますよね。ピアプレッシャー(同調圧力)を良い方向に引き出すことができて、学習効果を高められるかもしれませんね。

オンライン英会話に限ったことではないですが、「大人が子どもの英語学習をお膳立てしてあげる」ことが重要なんです。ただタブレットを与えるだけじゃだめなんですね。

クラス一斉ではなくテーラーメイドで、個別にそれぞれの子どものレベルに合わせた内容を提供できるのなら、理想的ですよね。反転学習や復習で使うのもいいと思います。明日の授業の予習として、10分だけタブレットを使って1対1でやってみるとかね。あるいは、すでにALTの先生とクラスで学んだことの復習をしたり、関連する学習内容をタブレットで個別に学んだりするのもいいでしょう。

そして学校の授業で英語が好きになったお子さんが、ご家庭でお母さんと一緒に「そしたら、オンライン英会話をやってみる?」という流れがあれば、家庭でも大いに活用できると思います。

1対1で、子どもの興味とレベルに合わせてくれるならば、学ぶ側もきっと楽しいはずです。今は各家庭でタブレットが普及し、学校でもワンセット用意できることも増えてきましたから、うまく使えたらいいですよね。

【プロフィール】
田浦秀幸(たうら・ひでゆき)
立命館大学大学院 言語教育情報研究科教授。シドニー・マッコリー大学で博士号(言語学)取得。大阪府立高校及び千里国際学園で英語教諭を務めた後、福井医科大学や大阪府立大学を経て、現職。伝統的な手法に加えて脳イメージング手法も併用することで、バイリンガルや日本人英語学習者対象に言語習得・喪失に関する基礎研究に従事。その研究成果を英語教育現場やバイリンガル教育に還元する応用研究も行っている。

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子ども向けのオンライン英会話も、工夫次第で大いに活用できるのですね。英語学習ツールをいきなり与えて、ただやらせるのではなく、動機付けに着目し、周りの大人がうまくお膳立てをしてあげる。この姿勢は、子どもの英語学習の成功を握る鍵といえそうです。次回は、じわじわ注目を集める「英語で子育て」論の是非について、お話をうかがいます。