教育を考える/食育 2018.9.2

インタビュー:おやつが育む身体と心について【食のまなび探検隊「カルビー(株)」その3】

編集部
インタビュー:おやつが育む身体と心について【食のまなび探検隊「カルビー(株)」その3】

スナックスクールを実施した小学校から移動して、東京・丸の内にあるカルビー(株)本社にやってきました。

今回スナックスクールで講師を務められたカルビー食育チームの森田孝枝さんと山田繁男さん、さらにCS推進部スナックスクールチームの金子利行さんにも加わっていただき、カルビー(株)の食育に対する想いから15年続くスナックスクールの裏話まで、たっぷりとお話をうかがってきました!

【食のまなび探検隊「カルビー(株)」その3】2

【食のまなび探検隊「カルビー(株)」その3】3

生活に密着した学びが子どもを輝かせる

ーーよろしくお願いいたします。本日見学させていただいたカルビー・スナックスクールですが、子どもたちだけではなく私たち大人も夢中になるくらい、とても充実した内容でした。

金子さん:
ありがとうございます。90分間は長く感じませんでしたか?

ーー全体的にとてもテンポがよく、ゲームやDVD鑑賞の時間などを盛り込んでいたので、思っていた以上に短く感じました。子どもたちもダレることなく集中して取り組んでいましたね。

金子さん:
15年前に開始した当時から、基本的な授業内容は変わっていません。おやつの食べ方やパッケージ表示の見方を学んでもらい、「自分でおやつを選ぶ力を身につけてほしい」という想いが伝わるように工夫した内容になっています。

森田さん:
何年続けていても子どもたちの反応は同じです。「おやつって“食べ方”があるんだ」「好きな時間に食べちゃダメだったんだ」「これからパッケージ表示見ようかな」とか。これだけ情報があふれている時代ですが、不思議と子どもたちにとってははじめて知ることばかりなんですよね。

ーー確かに今日も新鮮な反応が多く見られましたね。事あるごとに「おお~~!」とか「え~~!?」とか、子どもらしい素直なリアクションが自然と引き出される構成になっていたように感じます。

森田さん:
そうですね。今回もそうですが、スナックスクールの後にすぐ給食があると、さっそく牛乳の裏の表示を見てくれているみたいです(笑)。おやつだけではなく、身近な食品の表示を意識するようになることで、食に対する考え方にも変化が出てくるのではないでしょうか。

ーースナックスクールのコンセプトでもある「自己管理能力」=「食を選ぶ力(食選力)」を培う、ということにもつながりますね。

金子さん:
小学生にもなると、ひとりでお留守番をしたりお小遣いでおやつを買ったりすることもあるでしょう。自分で時間を決めて、自分でどのくらいの量を食べるかを決めなきゃいけない。そんなとき、スナックスクールで学んだ知識を活かしてほしいと思っています。

【食のまなび探検隊「カルビー(株)」その3】4CS推進部スナックスクールチームの金子利行さん(左)・カルビー食育チームの森田孝枝さん(右)

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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親子で受けたいカルビー・スナックスクール

ーー今日の授業は2クラス合同で行っていましたが、いつもだいたいこのくらいの規模で実施しているのですか?

金子さん:
いえ、今日は少ない方ですね。

山田さん:
5クラス合同とかありますよ。

金子さん:
保護者も入れて何百人、体育館で、とかね。

山田さん:
レジャーシートを敷いて(笑)。年に何回か300人超え、というのがあるんですよ。一大イベントですね。

ーーとても楽しそうですが、そんなに大人数をまとめるのは難しいのでは?

森田さん:
意外と平気です。先生方もたくさんいらっしゃいますし、お手伝いの保護者の方もいらっしゃいますから。もちろん事前にしっかりと打ち合わせをして授業の流れを確認しますが、子どもたちが集中して聞いてくれるように、学校側も配慮してくれるんです。あと、グループの中にしっかり者の子がひとりいてくれると、きちんとまとめてくれます(笑)。

金子さん:
毎年たくさんの小学校を訪れますが、その学校の雰囲気や生徒たちのキャラクターもそれぞれ個性があって面白いですよ。去年一年間だと保護者と児童含めて約5万5千人、15年間でのべ60万人が参加してくれました。

ーー子どもだけではなく、ぜひ親御さんも一緒に参加してほしい内容ですよね。

森田さん:
先生方は「おうちの方にも聞いてもらいたい話だった」とおっしゃってくれますね。「おやつの量はこれくらいがちょうどいいんだ」とわかれば、日頃子どもに与えるおやつについて悩んでいる親御さんも安心しますよね。

山田さん:
親子で共通の話題にしてほしいんです。ここから家族のコミュニケーションにもつなげていけたらいいな、と思っています。

森田さん:
あとたまに、同居しているおじいちゃんやおばあちゃんにも聞いてほしい、という声もあります。ほら、孫が可愛いくてついついおやつをあげすぎちゃうから(笑)。

【食のまなび探検隊「カルビー(株)」その3】5カルビー食育チームの山田繁男さん

さまざまな味覚に触れることの重要性

ーーおやつに限らず食事や生活習慣など正しい知識と自己管理能力を身につけていれば、健やかな人生を送る基盤となるはずです。親が子に伝えることも大切ですが、世代を超えてあらゆる人が一緒に学べるといいですよね。

金子さん:
世代という話で言うと、以前このようなことがありました。スナックスクールの講師として一緒に組んでいた社員の方が、おじいちゃん世代だったんですが、最近の子どもは「渋い」という味がわからない、と。「昔は渋柿とかをかじって『渋い!』なんて言って自然と覚えたもんだ」と言うわけです。

森田さん:
渋い食べ物って、今の時代は食卓に出てこないですもんね。

金子さん:
そう。だから「渋い」っていう表現がわからないんですよね。以前スナックスクールの授業で、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の5味について教えたことがありましたが、「酸っぱい」と「しょっぱい」の違いがわからない、という子もいましたね。それから「(うま味の)うまい」という表現が理解できなかったり……。

ーー実際に舐めてみると「これが酸っぱいっていう味覚なんだ」と理解はできますが、言葉だけで説明するのは難しいですよね。

金子さん:
授業として行ったのは数年前ですが、その当時でも「苦い味」をあまり経験したことがない子が多かったです。

森田さん:
「苦い味」をしっかりと感じることも大切。人間ってちゃんと反応できるようになっていて、苦味は「毒かもしれない」と危険を察知することに直結するんです。だから苦い味も舌で感じて、理解できるようにならないといけませんね。

ーー苦みや渋みなどを排除することで、現代は口当たりが良く食べやすい味の食べ物ばかりになってしまったように感じます。その結果、今の子どもたちは味覚の幅が狭くなってきているのかもしれませんね。

森田さん:
渋いものを食べてもどうやって表現していいかわからないようです。

金子さん:
「まずい」の一言で終わっちゃう。

森田さん:
そう。「おいしい」か「まずい」。あと「好き」か「嫌い」か。

金子さん:
そう考えると少しもったいない気がしますね。あと何十年経ったらきっと「渋い」なんて忘れられてしまうかもしれない。

森田さん:
本当はもっと余裕があれば、そういったことも子どもたちに教えてあげたいんですけど、実際はなかなか難しいですね。

***
試行錯誤しながらも、子どもたちに大切なことを教え続けていきたい、という熱意が伝わってきました。楽しくおいしいおやつの時間を過ごすために、私たち親ができることはまだまだあるはずです。インタビュー後半では、スナックスクールの裏話や、おやつが大好きな子どもとその親に伝えたいことをお聞きします。