こんにちは。文章力養成コーチの松嶋有香です。
この全8回の読書感想文の書き方レッスンでは、感想文が書けるようになるためのコツを詳しく解説しています。ぜひじっくり読んでくださいね。
さて、前回、第4回の復習です。「質問シートを作る。答える。」という行程でしたね。コツとして重要なポイントがありました。
「問い詰めないこと」
時々、スーパーマーケットなどで、子どもに、しんどい詰問をしているママを見かけます。
「あなたは、どうしていっつも時間を守れないの?」
「あなたは、どうしていっつも注意してもきかないの?」
「あなたは、どうしていっつもそうなの?」
これがどれほどキツい質問か、自分のことに置き換えてみれば分かると思います。
「あなたは、どうしていっつも同じ時間に夕飯を作れないの?」
「あなたは、どうしていっつも痩せるって言っても甘いものを食べちゃうの?」
「あなたは、どうしていっつもそうなの?」
特に「食」の権利を握っている母親がこの詰問をすると、子どもとしては、多少の抵抗を試みるか、謝るかしかありません。そして子どもの抵抗はことごとく、つぶされます。子どもが勝ったシーンを、私は未だかつて見たことがありません。
どうせ会話をするなら、楽しくした方がいいじゃないですか。そして、それをコントロールできる力は、お子さんより親にあるのです。
さて、今回は、第5回。まずは、全体の位置を確認します。
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0. 計画を立てる
1. 本を選ぶ
2. 心が動いた文やシーンがあるページに付箋を貼る
3. 質問シートを作る。答える。
4. 近い内容をまとめて文にする
5. 4を組み立てる
6. 書いてみる
7. 時間を置いて、見直す
8. 書き直す
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3まで終わっていますので、今日は4です。
移動できる紙に書くこと
この作業ですが、原稿用紙にではなく、用意した大きめの付箋紙、またはメモ帳、コピー用紙など、移動できるものに書いてください。
あとで、何を先に書くのか、順番を決める時に、移動できるようにするためです。子どもはどうしても時系列に書きたがります。遠足や運動会だったら朝から、読書感想文だったら物語に沿ってです。しかし、どんな作文でも、時系列に書くというきまりはありません。むしろ、大きな結論から先に書く、一番避けていた部分から書くなど、ダイナミックな変化がある方が目をひきますし、読んでいて面白いです。このあたりの並び替えについては、後日解説します。
作者の期待に応えなくていい
第3回の時に「作者の意図に乗っからなくてOK」としましたが、ここでも同じです。文を組み立てていくあいだ、どうも、子どもたちは「正解」を探すような感じなのです。でも、果たして読書感想文に正解などあるのでしょうか。
例えば桃太郎を読んでキジに感情移入した子は、キジについて考えるのをやめ、桃太郎について書いたら正解なのでしょうか? 違いますよね。桃太郎は作者不詳ですが、もし作者が「桃太郎」に感情移入することを期待していたとしても、自分がそう感じなかったらそれは感想文としてはOKなのです。もちろん、桃太郎を選んだとしても、それはそれで良いわけです。
このあたりが、学校や塾で展開される「読解問題」とは異なりますので、親も頭の切り替えが必要になってきます。親が試されていると言っても良いかも知れませんね。
4. 近い内容をまとめて文にする
用意するものは、大きめの付箋紙、またはメモ、コピー用紙など。
質問シートができて、文字だらけの紙が数枚できたと思います。そこには、思いついて出てきた言葉がたくさん書いてあるはずです。そして「○○だったからびっくりした」というように、メモ書きの状態で、まだ、文になっていない言葉だと思います。それらの言葉のうち、何度も発せられている言葉は、キーワードになります。特別な印をつけておきましょう。もし、そういう言葉がなくても大丈夫です。似通った言葉、フレーズがあるはずです。その言葉を忘れないように印をつけましょう。添削の際、印のついた言葉は捨てないように気をつけるためです。
続いて、それらの問いと答えをセットにして、文にします。
ここでは、桃太郎に出てきたキジが気になった男の子の例で説明します。そう、この男の子、桃太郎ではなく、キジに感情移入していたのです。
「『心配』ってことだったよね。どうしてキジが心配だったの?」
「ずっと役に立たないからいらいらした」
この会話が前回、3の「質問シートを作る。答える。」で出ていたとします。この2つの文をセットにして、文にしてみます。
「ぼくは、キジが心配だった。ずっと役に立たないので、いらいらした。」
補足する部分があれば、これに言葉を足しましょう。
「ぼくは、キジがずっと心配だった。ちっともみんなの役に立てないので、ちょっといらいらして見てた。」
次の会話はどうでしょう。
「犬は強いでしょ? 猿は頭が良いでしょ? でもキジは何もできなかった」
この部分は、具体的に書くことで文になりますね。
「犬は、大きな声でワンワン吠えて、鬼をやっつけると思ったし、猿は頭が良くて手先が器用だから、すごく活躍すると思った。でも、キジは何もできないと思った。ぼくは、桃太郎がなぜキジをお供に選んだのか、ちょっと分からなかったくらいだ。」
もちろん、最初から、このような完成に近いような文は作れません。あせらず、少しずつ文章を肉付けしていきましょう。本格的な推敲は後ほどしますので、ここでは、質問シートに書いてあるばらばらの言葉が文になればOKです。特に、低学年の場合は、こんな文は書けないと思います。易しい文で大丈夫です。
単語の山を文にするときの工夫
- 「ワンワン」「ドンドン」などの擬音語を入れる。
- 「ひやひや」「ゆったり」などの擬態語を入れる。
- 「聞いた」を「耳を傾けた」というような大人びた言い方に変える。
- 「うれしかった」「おもしろかった」のような単純な言葉を工夫する。
3については、学年により、またその子の読書量により、語彙の量に個人差があります。大人もそうですが、知らない言葉は口からは出てきません。その場合は「他にどんな言い方があるかな?」と一緒に考えてみるのもよいでしょう。
4についてですが、一回禁止にしてみると面白いですよ。私の講座では「うれしかった」を禁止ワードにしています。子どもたちは「えーっ!」と言いながら、色々工夫をします。
うれしかったことを伝えるためには、相手が、イメージできる、想像できるように書かなくてはいけません。もっと、はっきりと、何がどうなったのかということを書くと、どんな様子なのかが目に浮かび、きちんと「うれしさ」を伝えることができるでしょう。
- なみだがぽろぽろと流れてきました。
- 「やったー」とさけんで、ガッツポーズをとりました。
この1と2のうれしさは違いますよね? 「うれしい」という言葉では、「うれしいのだ」という事実しか伝わりません。「どれほどうれしいのか」は、工夫した言葉を足して表現しましょう。おうちの方が質問するといいでしょう。
「例えば何の時みたいにうれしかったのか」「どんなふうに体が変化したの?」といった質問をして、言葉を増やしていきます。質問をすれば答えが出ますよね。その答えを書けば良いのです。「うれしくて涙が出た」「鳥肌が立つくらいうれしかった」など、自分の体の変化を書くといいでしょう。
この、文を組み立てていく過程でも、思いついたこと、気がついたことがあれば、文として残しましょう。
自分も同じ体験がある場合は、特に重要
その体験について、いつ、どこで、起きたことなのか、どのような点が同じ体験だったのかについて、文にしましょう。書くうちに、どうしてそのシーンに感動したのかも分かってきます。新しい気づきがあれば、それも文にしておきましょう。
感動したシーンには意味があります。解決できない問題が潜んでいる場合もあります。先送りにした感情、蓋をした気持ちなどがある場合が多いことがあります。時間をかけて、言葉を生み出しましょう。
調子に乗るほど褒める
うまく文をつなげられたり、新しい表現に書きかえられたりしたら、うんとうんと褒めましょう。大人はうっかり「これくらいは普通の子でもできるんじゃない?」と辛口の評価をしがちですが、そんなふうに思ってはいけません。挑戦したことのないことに挑戦しているのです。少しでもできたら、それはものすごく素晴らしいことなのです。
「すごい!書けたね!すごいぞ、すごいぞ!」
そんなふうに褒めてくれたら、どん何か誇らしい気持ちになるでしょう。
「がんばって書いて良かったな!」「次もがんばってみようかな!」と思えますし、そう思うエネルギーは奇跡のように人間に働きかけるものです。前向きの言葉には力があります。お子さんの「書く」力を応援して、褒めて、伸ばしてあげられるのは、近くにいるお父さん・お母さんです。
お子さんの味方、応援団になって、励まして、褒めて、お子さんの力を伸ばしてあげてくださいね。
次回予告
第6回『やっと国語教師の出番です』
・構成について-最高の順番を考える