からだを動かす/スポーツ 2018.11.10

持久走大会でもっと速く走る! 効果的なトレーニング方法

編集部
持久走大会でもっと速く走る! 効果的なトレーニング方法

肌寒くなるこの季節。持久走大会が開催される小学校も多いですよね。しかし、持久走といえばつらくて苦しくて、できれば走りたくない……と、大半の人がネガティブなイメージを抱いているのではないでしょうか。

今回は、走ることが苦手なお子さんでも楽しみながら速く走れるようになる「とっておきのトレーニング方法」をお教えします。

小学校低学年に向いているトレーニング方法

今も昔も、「持久走が好き!」という子より、「苦手だな……」と感じている子のほうが圧倒的に多いですよね。大会に向けてトレーニングをする前に、まずは持久走への抵抗感や苦手意識を払拭することが大切です。

1. スロージョギング

大人が趣味や健康のために行うランニングやジョギングは、楽しみながら自分のペースでできますよね。一方、小学生が体育の授業の一環として持久走を行う場合、たとえ「無理のないペースで」と指示されても、周囲に遅れをとらないようにと、つい速く走ってしまうもの。そのため、すぐに息を切らし、「しんどい、つらい」といったネガティブなイメージにつながってしまうのです。

そこで取り入れたいのが「スロージョギング」。隣の人と会話ができるくらいの運動の強さで行うジョギングを意味します。小学生を対象に、岡山大学がこのスロージョギングを取り入れた研究を行ったところ、子どもたちの持久走に対する意識の変化が見られました。

方法

低学年でも余裕を持って歩くことができる速度である時速4kmで、8分間スロージョギングの持久走を行う。ゆっくりだけど歩かず続けて同じペースで走るように指示。

工夫

できるだけ単調にならないようにBGMを流す、走行中にすれ違うことができるコースを設定し、ハイタッチなど児童たちがコミュニケーションを図りながら楽しく走ることができるようにした。

結果

すべての学年においてスロージョギングの授業の前に比べ、持久走に対する意識が「楽しい」「気持ちいい」といった肯定的なものに変化した。

無理のないゆっくりとしたペースで、まずは「走るって楽しい!」というイメージづけから始めてみるといいですね。

2. 5分間走

日本陸上競技連盟が承認している「小学生の長距離・持久走についてのガイドライン」で示した10項目の中には、
持久的体力向上の運動処方として「5分間走」が勧められる
という項目が含まれています。その理由として、「心肺への負担(苦しい時間)が短いことと同時に、フォームが崩れない時間(距離)であること」が挙げられています。

箱根駅伝王者・青山学院大学陸上部の原晋監督も、著書『1日10分走る青トレ』(ゴルフダイジェスト社)で、大人向けとして「10分・1,500m」走ることを推奨しています。これもやはり、フォームが崩れない時間・距離を目安としています。5分や10分と聞くと短いように感じますが、負担を減らして合理的に走ることが結果に結びつくのなら、ぜひ試してみたいですね。

3. 正しい走り方

持久走も徒競走も同じ「走る運動」。でもそれぞれ速く走るためのフォームや注意点は違います。持久走では長い距離をラクに走るために適した走り方があるのです。

<持久走の正しいフォームと大切なポイント>

    1. 姿勢を良くして走る!

姿勢が悪いと呼吸をしにくくなったり、疲れやすくなったりする。しっかりと背中を伸ばして走ろう。

    1. 苦しくなったら息を大きく吐き出す

夢中で走っていると呼吸がおろそかになってしまいがち。息を大きく吐くことでたくさん吸うことができるので、呼吸がラクになる。

    1. 腕は力を抜いて軽く振る

徒競走の時のように大きく速く振るとすぐに疲れてしまう。力を抜き、足のリズムに合わせて軽く振るのが◎。

正しい知識をもとにした効果的なトレーニングは必ず結果に結びつきます。速く、ラクに走れるようになることで、つらくて苦しい持久走を少しでも楽しめるようになるのではないでしょうか。

持久走大会でもっと速く走る! 効果的なトレーニング方法2

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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「外遊び」で体力アップ! おすすめは鬼ごっこ!?

持久走に必要なものは“体力”です。しかし、体力をつけるために毎日トレーニングをすることは、子どもだけではなく親にとっても大きな負担になります。だからこそ、普段の遊びの中で自然に体力がついてくれたらいいですよね。

オリンピック選手にも指導しているゆめおり陸上クラブの松原薫コーチによると「小学生の持久走の練習では、「無理をしないこと」が一番のポイント」とのこと。だからこそ、遊びの中でたくさん身体を動かして、徐々に体力をつけていくことがおすすめなのです。公園を走り回るお友だちと鬼ごっこをする、それだけでも体力アップにつながります。

StudyHackerこどもまなび☆ラボでも、たびたび「外遊び」の重要性についてお伝えしてきました。
体力の向上だけではない外遊びのメリット! 子どもが外遊びで伸ばせる力5つ
一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす! 幼児期に重要な3つの外遊び』

外遊びをする機会がめっきり減った現代の子どもたち。しかし、外遊びをすることで得られるメリットは計り知れません。

1. 鬼ごっこ

  • 基礎体力がつく
  • 体を動かすことの楽しさと意欲を生む
  • 瞬間的な判断力、先を読む力が養われる
  • 素早く動きを切り替える瞬発力

「走る、歩く、よける」などが含まれる鬼ごっこは、子どもが楽しく体を動かせる遊びのひとつ。思いきり走って逃げてもよし、緩急をつけながら逃げるのもよし。短時間でもかなりの運動量になりますね。

2. ボール投げ

  • 体のバランス感覚が養える
  • 手足を巧みに動かす「巧緻性(こうちせい)」が身につく
  • 「空間認知能力」の習得
  • スピードに対する認知力

どのタイミングでどのように手足を使えば相手にボールが届くのかなど、体全体の動作コントロールが身につきます。大きさの違うボールをいくつか用意して遊ぶほうが効果が高いそうですよ。

3. 砂場遊び

  • 「立つ」「座る」という動作を繰り返すのでいい運動になる
  • 「運ぶ」「積む」「持つ」「掘る」ことで体のバランス感覚が養える

砂を詰めたバケツを運ぶ、そのバケツを逆さにして、そーっと中身を出す。山を崩さないようにトンネルを掘るなど、微妙な力の加減が必要となってくる砂場遊び。運動能力ではありませんが、社交性や想像力の向上にもつながりますよ。

(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす! 幼児期に重要な3つの外遊び。

走る・跳ぶ・ボールを投げて受ける・ぶら下がる・つかむといった動きは、神経機能の発達を促して運動能力を向上させます。また、走る・歩く・よけるといった瞬発力が必要とされる鬼ごっこは、体力向上にもってこい! そしてなにより、日頃から身体を動かしていることで持久力がアップして、長い距離を走り抜く力を養うことができます。

持久走大会でもっと速く走る! 効果的なトレーニング方法3

子どもが自信を手に入れる「魔法の言葉」とは?

最後に、私たち親が気をつけておきたいことをお伝えします。ポジティブな思考を育む励ましの言葉や、持久走大会当日の朝食メニュー体力をつける生活習慣についてです。また、「速く走れる!」と評判のシューズもご紹介します。

1. 「〇〇君ならできるよ!」

普段から子どもを褒めていますか? 多くの日本人は我が子を褒めることが照れ臭く、他人から褒められても謙遜しがちだといいます。しかし、子どものやる気を削ぐのも、やる気を育てて実力以上の力が出せるようになるのも、実は親の声かけが大きく関係しているのです。

教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこ氏は、中学生100人を対象に「親に言われてうれしかった言葉」を調査しました。それにより導き出した『子どもに繰り返し言ったほうがいい言葉』の中に、「オマエならやれる!」という言葉があります。

心配のあまりつい「大丈夫?」「本当にできる?」「難しいんじゃない?」といった言葉をかけてしまいがちですが、本来ならば、子どもを信じて励まし、背中を押してあげるのが親の役目です。もし子どもが「ちゃんと最後まで走れるかな……」と不安がっていたら、ぜひ「〇〇君ならできるよ!」と声をかけてあげましょう。それだけで子どもは自己肯定感と自信を手に入れて、本来持っている力をさらに伸ばすことができるのです。

2. 朝食メニューは炭水化物+炭水化物

持久走大会当日の朝。緊張のあまり食欲がなかったとしても、最後まで走りきる体力を維持するためにはきちんと食べさせましょう。逆にあまりたくさんの量を食べてしまうと苦しくて走れなくなってしまうので、適量を食べさせる工夫が必要です。

プロアスリートも取り入れているスポーツ栄養学をもとにしたメニューでは、試合当日の朝ごはんは集中力を高め、身体を動かすためのエネルギーを補給することを重視しています。

たとえば「おもち」と「雑炊」、「うどん」と「おにぎり」など、普段の朝ごはんとは少し違う組み合わせになりますが、即効でエネルギーに変わる炭水化物の量を増やすことが効果的です。

また前出の松原コーチによると、胃腸内の炭酸ガスを抑えるヨーグルトもおすすめとのこと。特別なものを作る必要はありませんが、普段の朝ごはんにちょっと変化をつけることを心がけましょう。

3. 規則正しい生活

健康を維持して体力をつけるには、規則正しい生活を送ることが一番です。しかしその習慣は簡単に身につくものではありません。朝すっきり目覚めるには、前日から生活リズムを整えておく必要があります。

文部科学省が推奨している『早寝早起き朝ごはん』運動は、たくさんの自治体や企業が賛同して大きな活動へと広がりを見せています。生活習慣の乱れは学習意欲、体力、気力の低下の要因のひとつとして指摘されており、社会全体の問題として考えなければなりません。

まずは家庭でできることとして、生活環境を整えてあげましょう。夜更かしせずに、早く寝るためにはどうしたらいいか? 朝なかなか起きられないのなら何を改善したらいいか? 今抱えている問題点を親子で一緒に考えてみましょう。「元気な1日」を毎日過ごしていれば、それが習慣になります。すると、持久走大会のような「ここぞ!」の時にも力を存分に発揮できますよ。

以前のコラム(学力低下を招く「睡眠不足」を改善しよう! 子どもがスッキリ起きられるポイント7つ)でご紹介した「気持ちのいい朝を迎えるためのポイント」をおさらいします。

  1. 寝る時間・起きる時間を親子で決める
  2. 朝日を浴びる
  3. 寝る前の環境を整える
  4. 昼寝の時間を見直す
  5. 前日の夜に準備をする
  6. 正しい姿勢で寝る
  7. 家族みんなで(同じ時間に)寝る

 
持久走大会を楽しむためには、日々の暮らしを見直して生活リズムを整え、しっかりと最後まで走り抜く体力をつけることが大切です。本番当日までにできることを積極的に取り入れたいですね。

4. 走りやすい靴

子どもの足は成長途中なので、日々変化しています。ですから、走り方も大人とは違ってくるのです。株式会社アシックスのジュニア向けシューズ「レーザービーム」の開発者である大澤喬史氏は、子どもの走り方と靴の関係について以下のように言っています。

靴に限定すると、走るときに関連するのが踵部分と考えています。大人に比べると着地が不安定な子どもの足は、着地時にどちらに行くのか?が安定していません。速く走るためには、着地をした際のかかとのブレを抑えてあげる必要があると考えています。

(引用元:ASICS|かけっこ教室で教わった速く走るコツと、運動靴選びのポイント

大澤氏が開発した「レーザービーム」は、かかと部分に固い板状の「樹脂カウンター」が内蔵されているので、走るときにかかとが安定するのだそう。これが速く走れる秘密なのですね。

実際に小学2年生の娘にレーザービームをはかせてみたところ、50メートル走のタイムが約1秒も速くなりました。そして肝心の持久走はというと……まさかの1位。もちろん、靴だけの力ではなく、「週に1回は必ずジョギングをする」という本人の努力の結果でもあります。とはいえ、前にはいていた靴に比べると、走っているときの靴の音がまったく違いました。「ドン、ドン」という音から、「トン、トン」という軽い音に変わったのです。また、本人にはき心地を聞いてみると「すごく軽い!」とのこと。速く走るには、靴選びもかなり重要だと言えるでしょう。

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持久走大会に向けてトレーニングすることは、体力や運動能力のほかに、「最後までやり抜く力」も養います。走っているときは苦しくても、ゴールした後に得られる達成感や清々しさは何ものに代え難いでしょう。きっと将来、困難な状況に打ち勝つ強さにもつながるはずです。

(参考)
一般社団法人日本スロージョギング協会|スロージョギングとは
岡山大学大学院教育学研究科研究集録|小学生を対象にしたスロージョギング持久走についての実践的研究
小学生長距離・持久走検討プロジェクト|日本陸上競技連盟「小学生長距離検討会議(プロジェクト)」が示した「小学生の長距離・持久走についてのガイドライン」
原晋著(2017),『1日10分走る青トレ』, ゴルフダイジェスト社
学研 親子のための運動・遊び方情報誌 ソトイコ!2018年度秋号|千葉真子さんの走り方教室 正しいフォームはこれだ!!
ベネッセ教育情報サイト|【小学生のマラソン大会】どんな練習をするといい? 本番に勝つための戦略は?
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