教育を考える 2021.7.14

子どもの直感力を鍛える3つの方法。頭がいい子の「超高速意思決定プロセス」とは?

長野真弓
子どもの直感力を鍛える3つの方法。頭がいい子の「超高速意思決定プロセス」とは?

お子さまは「直感力」を使いこなしていますか? 「直感」というと、スピリチュアルで曖昧なものに感じられますが、じつは、きちんと脳科学に裏づけされたものなのです。そして直感力は、人が生きていくなかでとても重要な役割を果たします。

教育評論家の石田勝紀氏によると、「頭のいい子はみな『直感力』を鍛えている」のだそう。そして「理屈より感覚で物事をとらえることのできる子こそが、頭のいい子だ」と断言。またメンタリストDaiGo氏は、直感力を使いこなしている人の特徴として以下を挙げています。

  • 意思決定が速い
  • 自分自身を信じられる
  • 判断を間違えたとしても後悔しない

 
今回は直感力にフォーカスし、その鍛え方についてもご紹介します。

「直感力」ってどんな力?

そもそも直感力とは、どういう能力なのでしょうか。

メンタリストDaiGo氏の著書『直観力』によると、直感とは、「脳がこれまでインプットしてきた経験や学習のデータベースから、無意識に手がかりやヒントを見つけてそっと教えてくれる、超高速の意思決定プロセス」なのだそう。

この「脳の意思決定プロセス」について、脳には物事を判断する機構(システム)がふたつあると説明しているのは、脳科学者の中野信子氏です。

【Xシステム】迅速に判断を下す
【Cシステム】論理や理性に基づいて、ゆっくりと慎重に決断を下す

脳の超高速判断である直感は「Xシステム」とのこと。また中野氏は「直感による判断を繰り返すことで、人類は生き延びてきた」とも分析しています。人生における数々の判断を、速やかに、かつ、適切に行なうために、直感は必要不可欠な能力なのです。なぜならば、最初の直感は「90%の確率で当たる」から。その理由を次項で説明しましょう。

直感力を鍛える2

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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「直感は90%正しい」は本当!?

「Aがいい!」と、ピンときたけれど、「ちょっと待てよ。よく考えたらBかもしれない。やっぱりBにしよう」と、少し考えてからBにした、なんてこと、ありませんか。これは理性が直感を制御している状態です。では、AとB、結局どちらが正解だったのでしょう。状況にもよりますが、もしかしたら、直感で選んだAが正解だったかもしれませんよ?

イスラエルのテルアビブ大学で行なわれたマリウス・アッシャー氏らの研究では、「直感は90%正しい可能性がある」ということがわかっています。また、「5秒で考えた手と、30分かけて考えた手は、86%が同じ」という、「ファーストチェス理論」もあるようです。このファーストチェス理論は、常に重大な決断を下さなければならない立場である孫正義氏(ソフトバンクグループ会長兼社長)も支持している理論。

とはいえ、「90%なんてありえない! 私の直感はよく外れる」という人もいるでしょう。しかしメンタリストDaiGo氏は、「直感は誰でももっている」としたうえで、直感がよく当たる人と当たらない人の違いについて、直感が鋭い人は「自分の直感に従って行動できる」けれど、直感が当たらない人は「直感を感じても理由をつけて行動に移さない」と述べています。

であれば、わが子には「自分の直感に従って行動できる人間」になってもらいたいですよね。では、直感力を鍛えるにはどうしたらいいのでしょう?

直感力を鍛える1

子どもの直感力を鍛える「親の心がけ3つ」

最後に、子どもの直感力を鍛えるために親が心がけたいことを紹介します。

【新しいことにどんどんチャレンジさせる】

直感力を使いこなすには、まず脳に経験や学習を記憶させる必要があります。ですから、直感力を鍛えるためには、いろいろなことにチャレンジして経験を増やすことが大切です。ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビール氏の調査からは、「好き、楽しいという気持ちでなにかをしているとき、直感が働きやすくなる」ということがわかっています。

ですから、 “親がやらせたいこと” ではなく、 “子どもがやりたいこと” や “子どもが楽しめること” を選びましょう。そしてできれば、スポーツ、動物、星、料理、読書など、チャレンジのジャンルが偏らないほうがよいそうです。幅広い経験と学習を、子どもの脳にインプットさせましょう!

【子どもの自己肯定感を高める声かけをする】

将棋棋士の羽生善治氏は著書『直感力』のなかで、「直感力とは自分を信じる力」と記しています。せっかく「ピンときた」のに、自分を信じられなければ、その「ピンときた」判断自体がなかったことに。そこで、直感力を高めるために、まず子どもの自己肯定感を高めてあげましょう。

自己肯定感とは「自分が自分であって大丈夫」という感覚のこと。自己肯定感が高ければ、自分に自信がもてるため、自分の「ピンときた」判断を信じられます。精神科医の明橋大二氏、学びのイノベーター・本山勝寛氏からの声かけアドバイスは以下です。

子どもの自己肯定感を高める声かけ
  • 「ありがとう」という言葉をたくさん伝える。子どもの自己評価、自己肯定感がめきめき高まります。
  • 「早く食べて!」→「トマトを食べようね」など、命令口調ではなく具体的な声かけを心がける。
  • 「走らないで!」→「ゆっくり歩こうか」と、否定語を使わず、正しい行動を伝える。
  • 「たくさん練習しているね。頑張っているね」など、才能や結果ではなく、努力や過程をほめる。

【子どもがリラックスできる時間をつくる】

羽生氏はまた、「余白がなければ直感は生まれない」「直感は、リラックスした状態で集中してこそ生まれる」とも述べています。もしお子さまが塾や習い事でフルスケジュールの日々を送っているとしたら、それはまさに “余白がない状態” かもしれません。

小児科医の成田奈緒子氏も「脳を効率的に働かせるには、必要のないときは休ませるという切り替えが大事」と話しているように、子どもにはのんびり、リラックスする時間も必要なのです。「親子でなにげないおしゃべりをする」「勉強や習い事以外に、好きなことをする時間を毎日確保する」などして、 “心の余白” をつくってあげましょう。

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なにかを判断するとき、「直感を優先したほうが後悔が少ない」と、中野氏は言います。そしてメンタリストDaiGo氏も同じように、「迷ったときは直感に従う。悩んで後悔するくらいなら、最初から自分の直感を頼りにするほうが後悔しない」と述べています。お子さまが直感でなにかを選んだ結果、もし失敗してしまったとしても、それはきっと「直感力を磨くための経験」なのです。もちろん、大人だって同じこと。親子で直感力を磨いていけるといいですね。

※メンタリストDaiGo氏は著書『直観力』のなかで「『ちょっかん』には『直観』と『直感』の両方の表記がありますが、意味合いはどちらも変わりません」と説明しています。本記事では「直感」で統一しています。

(参考)
羽生善治(2012),『直感力』, PHP研究所.
伊丹敬之(2020),『経営の知的思考 直感で発想 論理で検証 哲学で跳躍』, 東洋経済新報社.
メンタリストDaiGo(2017),『直観力』,リベラル社.
洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』, 洋泉社.
東洋経済オンライン|頭のいい子はみな「直感力」を鍛えている
VOGUE|中野信子に聞く、直感力の正体
経済界ウェブ|優れた経営者に学ぶ意思決定の秘密:「直感」と「分析的思考」はどちらが正しい?
明橋大二|ウェブ講演会
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|自己肯定感がぐんぐん高まる最高の褒め方。「やればできる」のマインドはこう育てる!
Science Daily|Going with yoru gut feeling: Intuition alone can guide right choice, study suggests