教育を考える/知育 2018.8.22

“自然の法則” を知れる、“空間認識力” が育つ! 「積木遊び」のすごい効果

中村桃子
“自然の法則” を知れる、“空間認識力” が育つ! 「積木遊び」のすごい効果

こんにちは、日本知育玩具協会認定講師の中村桃子です。今回は、「幼児期を過ぎてからもっと楽しくなる “積木遊び」について詳しく取り上げます。

積木遊びのルーツを探る。積木遊びに求められたこととは?

はじめに、「そもそも積木遊びとは?」というところからお話ししましょう。

皆さん、じつは積木って「発明品」だったこと、ご存じでしたか? では、いったい誰が発明したのでしょう。それは、世界で初めて幼稚園をつくった “幼児教育の祖” フレーベルです(第8回『“本物を与える” ことの大切さ。20年後30年後にも生きる「流行りに左右されない遊び」とは?』で取り上げた「構成遊び」を生み出したのも、このフレーベルでしたね)。

では、積木遊びを通して、フレーベルは子どもたちに何を身につけさせたかったのでしょうか? それは「自然の法則」です。

例えば、同じ大きさの積木を積む場合、1個の上に2個を乗せるのは難しいですよね。当然、重心がずれたら崩れてしまいます。このように、本来は目に見えないはずの重力や重心を “目に見えるものにする” 力が、積木にはあるのです。この、目には見えない自然の法則を感じてほしいというのが、フレーベルの願いだったんですね。

だから、「うちの子、小さい頃から積木で上手に遊べなくて……」という親御さんは、心配する必要なんてありません。積木遊びの本質は、上で述べたようにシンプルなものなのですから。

「積木遊び」のすごい効果2

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積木遊びは「実験遊び」

私は、知育玩具の専門家になるべく、日本知育玩具協会代表理事の藤田篤先生から直接指導を受けました。そのなかで非常に印象に残っている言葉があります。

それは、「いいですか? 積木遊びは実験遊びなのです」——これを聞いたとき、私はとても驚いたのをよく覚えています。なぜならば、大学の4年間を工学部で学んだ私にとって、実験はあくまでも「実験」であり、「実験遊び」だなんて考えたこともなかったから。ましてや、「積木」と「実験」というワードがくっつくなどという発想も、私にはまったくありませんでした(いま思えば、それぐらいの余裕を持って研究をしていれば、何かおもしろい発見ができたのかもしれませんが……)。

さて、話を戻しましょう。積木遊びが実験遊びであるということは、「実際に試してみること(=実験)によって、その結果がどうであるかを体験的に知る」という部分に重要性がひそんでいます。実際にやってみないとわからない “正解がない遊び” なので、当然マルやバツがつくこともありませんよね。こういった積木遊びのなかで、子どもたちは実験と検証を繰り返し、幼児期後半から学童期にかけて育てておきたい “根拠のない自信” がすくすくと育っていくのです。

積木遊びで鍛えられる「脳」の能力

次に、脳のお話をしましょう。

積木は、立体や空間的な構造を理解する「空間認識力」を育てる遊びです。空間認識力とは、物体の位置や方向、大きさ、形状、間隔などが三次元空間に占めている状態や関係を正確に把握する力のことをいいます。

私たちは、「目」を通して二次元でとらえた情報を、頭の中で三次元へと再構築しています。例えば、紙に書かれた地図を見て、そこが実際にどのような地形なのかを推測する場面、ありますよね。私たちが生活している世界が三次元であることを考えると、生きていくために大切な力であることは大いに納得いただけるでしょう。

そして、この空間認識力を伸ばしていくために最適なのが、まさに積木遊びなのですね。いろいろな遊びに夢中になれる幼児期だからこそ、ぜひ積木遊びを通して空間認識力を伸ばしてあげたいものです。

「積木遊び」のすごい効果3

積木は子どもにとって “欠かせない道具”

手先や体の育ち以外にも、2、3歳の頃と、4、5歳から学童期の頃とを比べてみると、圧倒的に違う部分があります。それは「生活の視野がうんと広がっている」ということ。

生活の視野が広がると、子どもたちは、生活の中で見たものや、絵本の中で出合った情景などを、表現・再現しようとするようになります。そして、その表現のために必要なのが、積木。つまり、積木は「子どもがあらゆることをとらえ表現するために欠かせない道具」なのです。

子どもたちは積木を使って、見たものや想像したものを形にします。おままごとや汽車遊びの中でも、積木を何かに見立てて、その遊びを発展させることもできます。そして、積木でできたものから、さらに想像力を膨らませていくのです。

また、積木遊びは “成長する遊び” です。子どもたちは手先が器用になり、表現力も豊かになると、より高度なものを作りたいと思うようになります。そして次第に、「〇〇ちゃん、このあいだ先生に読んでもらった絵本に出てきたおうちを一緒に作ろうよ」という、「お友だちとイメージを共有して一緒に何かを作る」という遊びに発展していきます。

そのときにぴったりな積木としてご紹介したいのが、デュシマ社(ドイツ)のウールレンガ積木すべての積木が “同じサイズ・同じ形” で揃えられているため、イメージを共有して一緒に作品を作り上げるのに便利です。また、お子さまの想像力・創造力・集中力がいくら育っていても、精度の低い積木では、思ったとおりの表現・再現ができません。能力を存分に発揮させてあげられるという点でも、このデュシマ社(ドイツ)の積木の特徴である精度の高さは大いに役立つでしょう。

下の写真は、ある絵本のあるページを、このウールレンガ積木をメインに用いて再現したものです。何の絵本か、皆さんわかりますか? じつは『ちいさいおうち』(岩波書店)なんです。ちなみに、この作品を夢中になって作ったのは、写真に写る大人たち。このように、良い積木は大人が遊んでも楽しいものなんですよ。

「積木遊び」のすごい効果4

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いよいよ次が最終回です。テーマは「幼児期・学童期にこそ出合わせたい “能力を育てるアナログ遊び”」について。楽しみにしていてくださいね。

監修:(社)日本知育玩具協会