教育を考える 2021.9.10

「新聞はいらない」って本当? 理由を深堀りしてみた

「新聞はいらない」って本当? 理由を深堀りしてみた

「私は新聞を読んでないし、子どもにもいらないよね」と思っていませんか? でも、インターネットのニュースが無料で読める時代に、あえて新聞を購読している人もいます。

本当に新聞は不要なのでしょうか? 新聞が「いらない」理由を、筆者が深掘りしてみました。

「新聞はいらない」が主流?

「新聞なんていらない」と考える人は増えているようです。「新聞の発行部数と世帯数の推移」(新聞協会経営業務部調べ)によると、世帯当たりの部数は2008年に「1」を下回り、2020年には「0.61」と減り続けています。この20年で、発行部数が約2,000万部も減少しているんです。

2000年~2020年の新聞発行部数

12歳以下の子どもがいる保護者を対象にした「新聞に関するアンケート」(子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」調べ、2018年)でも、新聞を定期購読していない保護者は62%、定期購読している保護者は37%と大きく差がつきました。定期購読していない保護者の半数以上は、「いままで新聞を定期購読したことがない」と回答したそうです。

新聞を定期購読している保護者の割合

小学生以下の子どもがいる世代なら、若い頃からインターネットに親しんでいるはず。そのため新聞を読む習慣がなく、「新聞なんていらないや」と考える人が多いようです。

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教育での根強い新聞人気

「新聞はいらないよね」と考える人は多いものの、じつは教育熱心な保護者のあいだだと、新聞人気が根強いんです。その理由は、学校教育で新聞が使われていること。2020年から実施されている新学習指導要領には、新聞の活用が明記されており、新聞を使った授業が推進されています。

中学受験に役立つのも、新聞人気の秘密です。朝日小学生新聞が外部に依頼した調査(2013~2015年)によると、「難関校」として知られる灘・筑波大学付属駒場・女子学院に合格した子の4割以上が朝日小学生新聞の読者だったそう。

先述の「新聞に関するアンケート」では、回答者の68%が「子どもに新聞を読んでほしい」と考えていました。理由として最多だったのは「読解力・語彙力・漢字の学習に役立つから」。「新聞はいらない」と思う人が多い一方で、教育のために新聞の必要性を感じている保護者もいるのですね。

「子どもに新聞を読んでほしい理由」のアンケート結果

新聞がいらない理由1:ネットの情報で充分だから

いよいよ、新聞が「いらない」理由を探っていきます。「新聞に関するアンケート」だと、新聞を定期購読していない理由で一番多いのは「ニュースアプリの情報で充分だから」でした。スマートフォンがあれば、スキマ時間にニュースをチェックできますからね。

しかし、インターネットは非常に便利ですが、根拠の定かでない情報も混じっています。せっかくなら、信頼性の高い情報源を選びたいものです。

13歳~69歳の1,500人を対象にした、総務省による「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2020年)によると、「全部信頼できる」「大部分信頼できる」との答えが最も多かったメディアは、テレビやインターネットを抑えて新聞でした。速報性ではインターネットに負けるものの、「新聞なら信頼できそう!」と考える人は多いようです。

総務省による「メディアとしての信頼度」のアンケート結果

ニュースを知るだけなら新聞はいらないかもしれませんが、「情報の信頼性が高い」という独自のメリットがあるんですね。

新聞がいらない理由2:お金がかかるから

インターネットで無料の情報が手に入るなら、新聞はいらないと感じるのも無理はありません。上述の「新聞に関するアンケート」では、購読をやめた人の53%が理由として「お金がかかる」と回答していました。

新聞を購読したことのある人が新聞を読まない理由

子育て中は出費がかさみますし、節約したいですよね。その一方、あえて新聞にお金を払う人も。

不動産情報サイト「E-LIFE」による30~50代の既婚者を対象とした調査(有効回答数100、2017年)では、4割の家庭が新聞を購読していました。購読中の回答者からは、「自分が興味のある情報以外も幅広く知ることができる」「テレビを見るより新聞を読むほうが時間にとらわれない」などの意見が。

毎日10紙以上の新聞に目を通しているというジャーナリストの池上彰氏も、新聞のメリットを次のように語っています。

いくつかの問題点はあるものの、短時間で世の中の動き全体を俯瞰できる「一覧性」、そして記者が現場を取材して書いている記事の「正確性」は、他のメディアに比べてまだまだ新聞が圧倒的に強く、優れている点です。

(引用元:東洋経済オンライン|佐藤優も唸る!池上彰のスゴい新聞の読み方 太字による強調は編集部が施した)

新聞なら、自分の視野を広げてくれ、しかも信頼性の高い情報を、まとめて得られるのです。インターネットで得た情報のソースを確かめたり、そこまで関心のないジャンルの情報を探したりする時間と手間を節約できると思えば、新聞のコストパフォーマンスは悪くないのではないでしょうか。

「自分用にはいらないけれど、子どもには読ませたいな」という方には、一般の新聞より安価な「子ども新聞がおすすめです。

新聞がいらない理由3:読む時間がないから

「読む時間がとれないし、新聞はいらないよね」という意見もあります。株式会社ネオマーケティングによる20~50代の500名を対象にした調査(2013年)では、新聞の定期購読をやめた理由として「料金が高い」「必要ない」に次いで「読む時間がない」が挙げられました。

「新聞の定期購読をやめた理由」のアンケート結果

前出の池上氏によると、朝刊の文字数は約20万字。新書2冊分もの情報量なのだとか。すみずみまで読もうとすれば時間をかなりとられてしまいます。忙しくて無理だと感じるのも自然です。

しかし、時間をかけず要領よく新聞を読み続けている人もいます。新聞通信調査会による「メディアに関する全国世論調査」(2020年)によると、新聞との「接触時間」は1日当たり平均25.1分でした。

1日分の新聞を25分で読みきるなんて、とても不可能です。つまり、一部だけ読んでいる人が多いと考えられます。

新聞を購読しても、記事を全部読む必要はありません。一部だけで充分なので、新聞に毎日触れることが大事なんです。国語講師でタレントの林修氏も、毎日少しずつ読むことをすすめています。

新聞を読む習慣がない人に、新聞を楽しむきっかけとしておすすめするのは「ちょい読み」です。
「ちょい読み」とは、1日1記事から、1日数分から気軽に楽しく新聞を読む方法。
毎日5分でも新聞に触れることができれば、年間30時間、5年間だと約150時間の積み重ねになりますね。

(引用元:朝日新聞|ちょい読みとは? 太字による強調は編集部が施した)

朝日小学生新聞」を毎朝読むという東京理科大学の元学長・藤嶋昭氏も、「必要なところだけ読めばいい」と話しています。忙しいという理由で「新聞はいらない」と考えていた方も、これなら続けられるのではないでしょうか?

***
「新聞がいらない理由」と、購読している人が感じるメリットを掘り下げました。簡単にまとめると、以下のようになります。

新聞を不要だと感じている人
インターネットがあれば新鮮な情報を無料で入手できる
読むのに時間がかかる」新聞を定期購読している人
子どもの教育に役立つ
情報の信頼性が高い
興味の範囲が広がる

新聞がいらないかどうか、あなたもぜひ考えてみてください。

文/上川万葉

(参考)
池上彰(2019),『新聞の読み方ー考える力と情報力が身につく』, 祥伝社.
日本新聞協会|新聞の発行部数と世帯数の推移
NIE 教育に新聞を|学習指導要領とNIE
朝日学生新聞社|朝日小学生新聞:中学受験に役立つ
柏崎秀子(2013),「新聞活用教育(NIE)の力を育成する 大学の教員養成課程での授業実践」, 実践女子大学文学部紀要, 55巻, pp.56-65.
PR TIMES|3分の2、新聞購読せず「ニュースアプリで充分」、「お金がかかる」から
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総務省|「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」調査結果概要
マイナビニュース|新聞購読をやめた理由1位は「料金が高いから」。妥当だと思う購読料は●円
東洋経済オンライン|佐藤優も唸る!池上彰のスゴい新聞の読み方
朝日新聞|1日1分からの新聞活用術
朝日新聞|ちょい読みとは?
公益財団法人新聞通信調査会|メディアに関する全国世論調査(第13回)報告書
朝日学生新聞社|朝日小学生新聞:おすすめポイント
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