あたまを使う/英語 2019.11.5

集中力アップの秘訣は○○? 英語を学ぶ子どもたちのためのグレーデッド・リーダー

吉野亜矢子
集中力アップの秘訣は○○? 英語を学ぶ子どもたちのためのグレーデッド・リーダー

イギリスの小学校には、検定教科書がありません。そんななか、約80%以上の小学校で「国語」の副読本として採用されているリーディング教材「オックスフォードリーディグツリー」について以前お話ししました。前回の記事でもご紹介しましたが、繰り返し幅広く読むことが、母語での読書の能力を上げていくうえで重要なのでしたね。

今日は、外国語として英語を学ぶ子どもたちのためのグレーデッド・リーダーをご紹介したいと思います。

グレーデッド・リーダーが英語学習に効果的な理由

日本の大学で英語を教えていた頃、グレーデッド・リーダーを強く推奨していました。英語を速く、正確に読めるようにするためには、ある程度の読書量が必要だからです。けれども、読み始めてすぐにあまりにもわからない単語が多くてはやる気が削がれます。単語や文法の難易度を読み手のレベルに合わせて調整してあるグレーデッド・リーダーは、手っ取り早く英語の読解力を上げるには最適です。

大学に入った時点で学生さんたちは「英語は読める」と思っていることが多いのですが、じつは受験英語は土台ができているかを見るものであって、ペーパーバックや英字新聞をスラスラと読める学生はそう多くはありません。このままではペーパーバックを1冊読むのに1ヶ月はかかりそうだな、というような読解レベルの学生さんたちにとって、グレーデッド・リーダーは比較的ストレスなく読解力を上げていくのに適しています

試験のために読むのではなく、好奇心に惹かれて読み、その過程で言葉や表現を覚えていくのが望ましいのは、その過程で「外国語を読む」という感覚から単純に「読むことを楽しむ」感覚へとシフトしていくからです。

こうしたグレーデッド・リーダーの多くは大人の学習者をターゲットに作られていますが、もちろん年齢の低い子どもたちを対象にしたシリーズも出されています。

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ネイティブの子ども向けとも異なる! 英語学習中の子どものための本

英語学習者向けの教材が、ネイティブの子どもたちが学校で使っている教材といったいどのように違うのか、という疑問が湧くかもしれませんね。

じつは、ネイティブの子どもが読むことを学ぶうえで直面する難しさと、外国語として英語を学ぶ子どもたちが読むことを学ぶうえで出会う難しさは、ちょっと違うのです。たとえば、イギリスで育つ子どもたちは、日常的にずっと英語にさらされています。使える語彙の量は少ないかもしれませんが、それでも日本の子どもとは段違いです。

我が家の下の子どもが3歳ぐらいの頃、ふと「あ、今この子、仮定法過去完了を使っている」と思ったことがあります。特に複雑な文ではありませんでしたが、日常の会話の中で自然に出てきていたように思います。仮定法は日本の子供たちが高校で習う文法項目です。

複雑な文法や大量の単語に日々さらされている英語圏の子どもたちとは異なり、日本で育つ子どもたちは、日常のほとんどを英語を耳にすることのない環境で育ちます。「英語を読めない」のは同じであるにしても、すでに身についている英語力には大きな差があるのですね。そんな子どもたちに「わからない」「つまらない」といった感情を持たせないようにするためには、いっそうの工夫が必要です。

ですから、同じ子ども向けでも、ネイティブの子どもを対象にしたものとは別に、外国語として英語を学ぶ子ども向けの教材が作られているのです。

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音声を聞きながら本を読むことで意欲・集中力がアップ!?

外国語としての英語を学ぶ子どもたちのためのグレーデッド・リーダーは複数あります。小学校で英語を教えている国も珍しくありませんから、需要もあります。実際に小学校で使った際の成果なども、研究としてまとめられています。

子ども向けのグレーデッド・リーダーは絵が多く、たとえば隠し絵のような言葉がわからなくても興味を引くようなしかけがあることも多いですし、音声ファイルが提供されていることも多いのです。

実際に2018年にスペインの小学生(10歳)を対象に行われた英語のグレーデッド・リーダー活用例では、「音声を聞きながら本を読んだ」子どもたちのほうが意欲が高く、より集中して読んでいた、という結果が出ています。

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おすすめグレーデッド・リーダー3選

子ども向けのグレーデッド・リーダーは豊富なので、迷ってしまう方もいるかもしれません。今回は、特に有名なシリーズをいくつかご紹介しましょう。

Reading Stars(オックスフォード大学出版局)

まずは、オックスフォード大学出版局のReading Stars。対象年齢が3歳からと低いのが特徴です。英語圏の子どもたちには馴染みのあるテレビのキャラクターを用いて、シンプルなストーリーを追っていくことになります。

全てのシリーズに音声ファイルがあり、本の裏表紙にダウンロードするための情報が載っています。また、自宅で使う場合は両親のための、教室で使う場合には先生のためのアドバイスが載っているのも特徴です。

じつは教材は、教材そのものが優れていることも大切ですが、「どのように使うか」も同様に大切なのです。教材の使い方のサポートは、特に小さな子どもの英語教育ではとても重要ですから、これはとてもありがたい特徴です。

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Macmillan Children’s Readers(マクミラン)

同じく、英語教材の分野でも定評のあるマクミランから。先ほどご紹介した研究で使われたシリーズでもあります。6歳から12歳までとやや年齢は高くなりますが、こちらも音声が用意されています。

特にレベルが上がっていくにつれて、事実を元にしたトピックの本(Macmillan Factual Readers)も多く揃えています。自然科学など、子どもの興味が必ずしも物語に向いていない場合には、非常に良いチョイスかもしれません。

前述の調査では、学校で取り扱っている科学のトピックと連動させて、このシリーズから事実ベースの書籍を選んでいました。

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Pearson English Kids/Story Readers(ピアソン)

子ども向け語学教育では定評のあるPearsonも、ノンフィクションとフィクションにまたがる子ども向けのリーダーを出しています。Kids ReadersStory Readersのシリーズがあり、音声のダウンロードもできます。こちらも対象年齢は6歳から12歳です。

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英語を学ぶ子ども向けのグレーデッド・リーダーは、数多くあります。オーディオブックについては前にご紹介しましたが、短いので比較的とっつきやすい、オーディオ付きグレーデッド・リーダー。耳から音を聞きながら、英語を読んでいくことに慣れるのには、非常に手軽な入り口なのかもしれません。

(参考)
Elsa Tragant, Anna Vallbona, “Reading while listening to learn: young EFL learners’ perceptions”, ELT Journal, Volume 72, Issue 4, October 2018, pp. 395–404.