からだを動かす/スポーツ 2018.2.28

スポーツの習い事は1つに絞らない方がいい! という新常識

編集部
スポーツの習い事は1つに絞らない方がいい! という新常識

もし、野球を習っている子どもに「バスケットもやってみたい!」と言われたとき、どうしますか?

「そんなこと言わずに、キャッチボールの練習でもしてなさい」なんて答えるのではないでしょうか。ひとつのことをやり遂げる、ということは大切です。

しかし、スポーツ、とくに球技においては、ひとつの競技に絞らない方がよいのだそうです。

一流選手は幼少期にいくつもの習い事をしていた?

意外かもしれませんが、トップアスリートと呼ばれるような選手たちは、小さなころから特定のスポーツだけをひたすら続けていたわけではないのだそう。

たとえば、元メジャーリーガーの松井秀喜さんは、中学に進学するまで野球と柔道を両立していましたし、阪神タイガースで活躍中の藤浪晋太郎選手も、2歳から中学3年まで続けた水泳で泳力検定1級を取得してます。

また、小さいころから英才教育を受けている選手が多いテニスにおいても、錦織圭選手は少し違っています。テニスを始めたのは5歳のときですが、2、3歳のころから水泳やサッカー、小学校では野球も経験しています。これは錦織家の「子供には好きなことをやらせる」という方針から。スポーツではありませんが、お母様からピアノのレッスンも受けていたとのこと。

ほかにも、2006年トリノオリンピック女子シングルで金メダルを獲得した、プロフィギュアスケーターの荒川静香さんも、スケートを始めた5歳のころは同時に水泳、バレエ、エレクトーンなど多くの習い事をしていました。このことについて荒川さんは、「両親は、習い事を始めるのもやめるのも全て私に決めさせました」と語っています。

同じく、複数の習い事をしながら最終的に1つの習い事に絞ったという、元サッカー女子日本代表の澤穂希さん。3歳から12歳まで水泳を習っていたそうですが、結果的にサッカー1本に絞りました。

澤:だけどやっぱり11歳、12歳のときに自分で考えて、親に「もう水泳はやめたい」って言って。皆で何かをわいわい楽しくやっているのが好きだから、もう水泳はやめてサッカー一本に絞りたいって子どもながらに決断して、それで今に至るんです。

(引用元:VOGUE|特別編!女子サッカー日本代表、澤穂希。「栄光の、その先にあるもの」。

このように一流選手たちは、幼少期に複数の習い事をしていたのです。

スポーツの習い事に関する新常識2

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早期の専門教育には問題点がある

各競技で10代の選手への期待が高まっている昨今。前述した事例があるにもかかわらず、エリート教育ともいうべき、スポーツの早期専門教育を信じている方も多いかもしれません。

このことに対して、早稲田大学スポーツ科学学術院の広瀬統一教授は警鐘を鳴らしています。

子どもの将来のスポーツの可能性の見極めや、専門的なトレーニングの導入時期について、「早ければ早いほどいい」と絶対視することは、科学的な根拠に欠けている

(引用元:早稲田大学 スポーツ科学部|幼児期から始めれば、スポーツの才能は開花するか

その理由のひとつは、北京オリンピック出場選手へのアンケート調査です。全身を使った芸術性の高い種目である「水泳」「体操」「フィギュアスケート」は超早期から強化を行っている傾向があるそうですが、「射撃」「ボート」「バレーボール」に関しては、12~15 歳くらいで競技を絞り込んでいるとのこと。

また国際連合広報センターも、「とりわけ子どもの労働、暴力、ドーピング、早期の専門化、過剰なトレーニング、搾取的な形態をとる商品化など」の、目に見えにくい脅威や損失を心配しているとホームページ上で公開しています。

いろいろなスポーツを試した方がいい

元メジャーリーグ日本担当スカウトであり、現在はジュニア育成のための活動に力を入れている小島圭市さんも、複数のスポーツを通じていろいろな動きを身につけることが重要であると主張するひとりです。

15歳前後で運動神経の発達が終わりますので、その前までに様々なことをやらなくてはけないのです。飛ぶ、跳ねる、転がる、投げる、打つ。これらの行為を遊びの中で覚えればいいのです。そして、13、4歳から体幹トレーニングを少しずつ入れ、15歳くらいから専門的にしていき細分化していく。17、8歳で、競技を一つに絞る。それまでは、バスケットボールでも、野球でも、サッカーでも、水泳でも、器械体操でも、ゴルフでも、武道でも、なんでもいい。私は競技が多ければ多いほど、いいと思っています

(引用元:ベースボールチャンネル|「ボール投げ」の能力低下は必然――大谷翔平選手から考える、ジュニア年代に求められる〝アスリート教育〟【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】

なぜならば、競技によっては基本的な動作が似ている場合があるのです。

たとえば、水泳のクロールと野球のピッチング。クロールをすることで肩の関節がしっかり回り、肩周りや背中の筋肉が鍛えられるのです。メジャーリーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手や埼玉西武ライオンズの菊池雄星選手も、小学生から水泳を習っていたと言います。そう聞くと、なんだか説得力が増しますよね。

それに、子どもの運動能力は体格や体力に影響するので、成長期が早い子と遅い子では持っている能力を生かせる時期が違いますし、特定の競技ではその能力を十分に生かしきれない場合があります。いろいろな競技経験をすることで、子ども自身が自らの適性を見つけられる可能性が高くなるでしょう。

(参考)
ベースボールチャンネル|「ボール投げ」の能力低下は必然――大谷翔平選手から考える、ジュニア年代に求められる〝アスリート教育〟【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】
早稲田大学 スポーツ科学部|幼児期から始めれば、スポーツの才能は開花するか
AERA dot.|錦織圭の育て方 カギはいち早く世界を見据えた父?
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VOGUE|特別編!女子サッカー日本代表、澤穂希。「栄光の、その先にあるもの」。
Wikipedia|藤浪晋太郎
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