教育を考える 2019.2.14

あと伸びにつながる「学習習慣」――自ら机に向かう子の親がしている5つのこと

あと伸びにつながる「学習習慣」――自ら机に向かう子の親がしている5つのこと

小学校に入学してすぐの頃は、学習内容を先取りしている子のほうが「賢い」と思われがちです。ですが、高学年になって学習の難易度が上がってきたとき、実際に伸びるのは「自ら机に向かう」ことができる子だそう。

机に向かって勉強する習慣がついている子は、机の上の教材に関心をもち、課題が終わるまで取り組む集中力が養われます。すると勉強がどんどん理解できるようになり、さらに勉強が好きになるという相乗効果を生むのだとか。

幼少期から生活の中に「机に向かう時間」をつくる

机に向かう習慣づけをするには、やはり幼いうちから親が土台づくりをしてあげるのがいいようです。

『最強の働き方』の著者であるムーギー・キム氏との共著に『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』がある、ファミリー・コラムニストのミセス・パンプキン氏は、「勉強嫌いな子でも幼少期に学習習慣を身につけてやることは、どの時期よりもたやすい」と言います。

歯を磨くのと同じように、机に向かう時間を生活リズムに組み入れることができれば、「その後は放っておいても、その学習習慣が子どもを導いてくれる」とも。

また、灘中学校・灘高等学校校長の和田孫博先生が推薦する『どこまでも伸びていく子どもに育てる』の中でも、「学習の習慣化」について以下のような記述があります。

生活のリズムにも気を配り、できるだけ無理のない形で机につけるようにする。そうすることで、机に向かうことへの気持ちの抵抗を小さくできます。また、机についたときに、スッと課題に向かえます。

(引用元:鶴田秀樹・坂元京子(2008),『どこまでも伸びていく子どもに育てる』,実務教育出版.)

では、その習慣をどのように身につけさせてあげればよいのでしょう。

この本の著者であり、京大医学部、京大法学部、東大理科一類に進学した3人兄弟を育て上げた坂元京子さんは、子どもが幼稚園年中の頃、週に1時間、同じ曜日の同じ時間に机の前に座ることから始めたそう。

またミセス・パンプキン氏は、息子たちが小学生の頃はいくら言っても自分だけでは勉強しなかったので、夕食前の1時間を母子一緒に勉強する時間と決めて、その時間はどんな都合が生じようとも勉強時間にしたのだとか。

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集中できる環境づくりと机に向かう習慣づけのポイント

とはいえ、机や床の上におもちゃが転がっていたり、目の前に賑やかなテレビ番組が写っているような状態では、大人でも集中することができません。

「家庭教師のトライ」を全国展開する(株)トライグループ取締役の森山真有さんは、勉強する場所について次のように話しています。

とにかく「マンガやゲームは勉強机以外の場所で」と徹底することです。勉強をはじめるときのパターンを決めることが、学習習慣を身につけさせます。ゲーム機やテレビなど、勉強の集中を妨げるものは部屋から出してしまいましょう。

(引用元:森山真有(2007),『伸びる子の法則 自ら学ぶ習慣が身につく学習法』,PHP研究所.)

そこで、勉強に集中できる環境をつくり、子ども自身に負担を感じさせずに机に向かう習慣をつけてもらうためのポイントをまとめてみました。

1. できれば小学校入学前から準備を

小学生になるとほぼ毎日宿題が出るので、家庭でも1日1回机に向かう力が求められてきます、しかし、幼稚園や保育園では遊んでばかりだった子に、いきなり毎日机に向かうように促しても無理があるため、入学前から習慣づけを心がけるとよりスムーズに。小学校で授業を受ける練習にもなります。

2. 机と椅子は子どもと選ぶ

子ども自身に「机でやりたい!」と思ってもらうには、その場所を気に入ってもらうことも大切。机とイスは大人が選んで買い与えるのではなく、できれば親子で一緒に選ぶようにしましょう。「自分だけの特等席」という意識が芽生え、ワクワクした気持ちで自ら机に向かうようになるはずです。

3. 生活パターンに無理なく組み込む

先述の坂元京子さんやミセス・パンプキン氏の例のように、子どもに合ったペースを見つけ、時間を決めて取り組むことが大切です。できる限り、後回しにしたりパスしたりすることなく、決めた時間には机に向かうにしましょう。

4. 机に向かう時間は数分からでOK

習慣づけのための取り組みを始めるのが小学校入学前〜低学年ならば、内容はいかにも勉強らしいものでなくてもOK。幼稚園生なら、簡単な線や丸などをなぞる程度のことを2~3分間取り組むことから始め、少しずつ時間や内容を増やしていくのがオススメです。

5. 整理整頓も大切に

机の周りのお片づけも大切なトレーニング。いつもキレイにしておくことで毎日気持ちよく机に向かえるほか、余計なものが目に入らないことで集中力もより高まります。また、算数で図形問題を理解する際に必要な空間認識力」も養われるそう。

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いちばんのお手本は「親が学んでいる姿」

子どもは身近な存在をまねて育つもの。いくら子どもに机に向かうことを勧めても、親がテレビを見ながらダラダラしていたり、スマホゲームに夢中になっているようでは、子どもだって納得がいきません。

わが子が自ら机に向かう習慣づくりのために、親が真っ先に行うべきは、親の側が自ら机(リビングテーブルなど)に向かう習慣、すなわち学んでいる姿勢を見せることです。学ぶことがたまらなく楽しい状態、学習を「楽習」と捉えることです。親が、その姿勢を背中で示しましょう。

(引用元:PRESIDENT Online|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣

このように、親の背中をしっかりと見せることが大切なようです。

また、子どもが机に向かっていれば問題なし、というわけではありません。宿題やワークをこなすことばかりにとらわれて、内容をきちんと理解せずに突き進んでしまっては、せっかくの勉強時間も有益ではありません。

宿題の丸つけの際は、「どこにつまずいているのか」をチェックしたり、「学んだ内容を理解しているのかどうか」をさりげなく質問したりといった対応が大切です。

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親が学ぶ姿を見せることで、子どもの学習習慣が身につくのなら、まさにウィン・ウィン。親の学びは、なにも勉学だけでなく、キャリアアップや趣味や、家庭経済のことなどでもよいのです。与えて導くだけではなく、親である自分自身も成長を望んでいければ、きっと子どももいい影響を受けてくれるはず。机に向かって学ぶ楽しさを、親子間で共有できるといいですね。

文/酒井絢子

(参考)
PRESIDENT Online|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣
All About|子供の勉強はいつからどうやって習慣化させる?幼児期編
ベネッセ教育情報サイト|1年生からの勉強はどうする? 家庭で机に向かう習慣を身につけるためのポイント
森山真有(2007),『伸びる子の法則 自ら学ぶ習慣が身につく学習法』,PHP研究所.
見尾三保子(2002),『お母さんは勉強を教えないで』,草思社.
鶴田秀樹・坂元京子(2008),『どこまでも伸びていく子どもに育てる』,実務教育出版.
ムーギー・キム、ミセス・パンプキン(2016),『一流の育て方 –ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』,ダイヤモンド社.